本日のテーマは「彗星(すいせい)」についてです。
彗星は厄災の前触れの汚れた雪ダルマ
彗星は大昔、その正体が全くの謎であったため、「疫病などの厄災の前触れ」と恐れられてきました(スピってる)。近代になり研究が進むと、彗星は厄災の前触れを表す恐ろしい光から、氷・ドライアイスなどに塵や小さな岩石が混じった塊と考えられるようになりました。
そして長い間、「汚れた雪ダルマ」と言われていたのですが、最近の高性能カメラ搭載の宇宙探査機の調査の結果、「ソレ全然ちゃうやんッ!」ということがわかってきました。
見てくださいこの写真を。
Credit: ESA/Rosetta/Philae/CIVA
こちらは、2014年にESA(ヨーロッパ宇宙機関) の探査機ロゼッタによって撮影された彗星の様子です。私は北国の出身で幼い頃から幾度となく汚れた雪ダルマを目にしてきましたが、こんな雪ダルマは見たことねーっぺよ。ええ、ええ、これは雪ダルマというか岩石に見えるっぺ。ちなみにこの彗星の名前は「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」。
「えッ? チュ、チュリュ、、…何だって?」
という感じですが、これがスラスラ言えるようになると、周囲から「アストロバイオロジーかじってる人」としてちょっと尊敬されたりするので、ぜひ暗唱できるようになってみてください。
長いものでは1億kmを超える長さの彗星も
ちょっと寄り道しましたが、あらためて彗星の基本的な説明をさせてください。彗星は太陽の回りを回る小さな天体のうち、尾を持つ「天体」のことを言います。核と呼ばれる頭、それを取り巻くガスのコマ、尾の3つから構成されております。核の大きさは、1~100km。全体の長さは長い物ではなんと1億kmもあるそうです。
1億kmと言われてもピンとこないと思いますが、もし1年かけてその距離を移動するとしたら、1日約27万4,000kmを移動せねばならぬ感じです。これでもピンとこないと思うのでもう一つ補足すると、日本列島の長さが約3,000kmですので、1日で日本列島を45往復する感じです。こうして比較すると凄さがわかりますね。
「彗星のごとく現れる」は、彗星が突然現れて光り輝く様子から
特定の分野で優れた能力を持つ人が、突然現れその分野で活躍するさまを「彗星のごとく現れる」なんて言ったりします。
ええ、ええ、野球選手の大谷翔平氏が米国でメジャーデビューを果たし、ホームラン打ちまくり~の三振取りまくり~のな様子がまさにそれです。(現地の新聞では、彗星ではなく「大谷翔平は宇宙人」と書かれていましたが…)
彗星は突然夜空に現れて光り輝くことから、そのように形容されることになったのです。昔は厄災や汚らしい雪ダルマ扱いだったのに、今では「活躍する人」を示す彗星。…次回の宇宙与太話も引き続き、彗星ネタをお届けします。
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授松井孝典監修(地湧社)
『彗星パンスペルミア 生命の源を宇宙に探す』チャンドラ・ウィクラマシンゲ著(恒星社厚生閣)
いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信(http://ikenori.com/)」の更新がライフワーク。
彗星は不吉な出来事を予兆する汚れた雪ダルマだった。