本日のテーマは宇宙環境の過酷さについてです。
過酷な宇宙環境、生身の人間はもって1~2分
ご存知のように宇宙空間は普通の人間は生きていけない厳しい環境のため、宇宙飛行士は身を守ってくれるゴッツイ宇宙服を着て船外活動を行います。宇宙をテーマとした映画などでは宇宙空間に放り出されて、あの世にいってしまうようなことがたまに起こりますが、それでは宇宙環境というのはどんだけぇ~過酷なのでしょうか。簡単にまとめてみました。
空気:ない。
気温:マイナス270℃
気圧:0。真空に近い。
重力:ない。無重力状態。
太陽光線:超強力。日なたは121℃、日かげはマイナス121℃にもなる。
宇宙放射線:人体に重篤な影響も及ぼす高エネルギーのX線やガンマ線等の電磁波、陽子、中性子、電子、アルファ線、重粒子等の有害なものが飛び交う。
重篤な影響とは白血病やガン、代謝異常などです。書いているだけで恐ろしいですね。ちなみに、あのNASAの公式発表によると、誤って宇宙空間に投げ出されたとしても、30秒までなら後遺症が残ることもないものの、1~2分程で死んでしまうだろうとのことでした。
我々が今こうしていられるのは「ハビタブルゾーン」にいるから
私たちがこんな過酷過ぎる宇宙の中で生き延びられているのは、私たちの住む地球が「ハビタブルゾーン」と呼ばれる領域に属しているからにほかなりません。
ハビタブルゾーンとは、宇宙の中で生命が生きて存在できる領域のことを言います。日本語で書くと「生命居住可能領域」。生き物が生きていくための条件としては、ちょうどいい温度、気体の酸素と液体の水がある事が挙げられます。太陽系には「水金地火木土天海」のように、惑星が8つ存在しますが、ハビタブルゾーンに属し、これらを持つ惑星は地球だけです。
(※木星の衛星エウロパもハビタブルゾーンに含まれていることがわかっていますが、生き物は見つかっていません。)
我々はなんて恵まれた環境にいるのでしょうか。こうして普通に呼吸して、日本などはその辺の蛇口をひねれば、きれいな水が出放題です。この状況にもっと感謝感激雨アラレな気持ちでいてもいいのです。
もしこのページを読まれてる方の中に、今のご自身の人生に対し不平不満を抱えている方がいたら、普通に生きていける温度と豊富な空気と水があることにまずは感謝してみましょう。
宇宙服の価格は何と10億円!?
宇宙で人間を過酷な環境から守ってくれる宇宙服のお値段は、JAXAの公式ページの情報によると、なんと1体10億円くらいするそうです。ということは、あなたはここにこうしているだけで10億円分得しているのです(論理の飛躍がはなはだしい?)。
ブラック企業に勤めてても…
ちなみに筆者は10年程前、長時間労働(時には徹夜も)が当たり前、残業という概念すらないIT企業にお勤めしていたことがあるのですが、あまりの辛さから田舎の母親に、会社の仕事がシンドイと一度だけ愚痴ったことがあります。その時、母が私に言ったのは、
「屋根付きエアコン入りの快適なオフィスで仕事ができるだけいいじゃない」
でした。
当時、働き過ぎで脳みそも疲労困憊、思考停止してしまった自分は、その言葉を額面通りに受け取り、「確かにそれもそうだな…」などとすんなり納得してしまったのですが、ええ、ええ、宇宙のことについて詳しくなってきた今は、本当に心の底から納得することできます。そう、あれがもし宇宙環境下だったら仕事もできない。
いや、仕事どころか生きることすらできないのです。厳しい労働環境にいる皆さん、泣きそうになったら過酷な宇宙環境のことを考えましょう。…宇宙与太話まだまだ続きます。
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授 松井孝典監修(地湧社)
いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信(http://ikenori.com/)」の更新がライフワーク。
【知らなくても困らない。でも知ってるとちょっと楽しい宇宙の話】