本日のテーマは「ビッグバン」の名づけ裏事情です。
宇宙はどうやってはじまったのか
小さい頃、夜空に広がる星々を見て、「この宇宙ってどうやって始まったんだろう…」なんておセンチな気持ちになった経験はおありですか? あ、はい、大人になって忙しい毎日を送っていると、そんなことはいつの間にか考えなくなるのですが、これまで名だたる科学者たちが童心の心を忘れずにこの謎を追求し続け、宇宙の始まりについての熱い論争が繰り広げられてきました。
ビッグバンという名は「バカにされた」結果付いた名前だった
今現在、最も有力で有名な宇宙誕生の説は、ロシア出身のアメリカの理論物理学者ジョージ・ガモフ博士(1904年3月4日-1968年8月19日)によって提唱されたビックバン説です。
ビッグバンとは宇宙誕生を引き起こした大爆発のことです。宇宙は初期の頃には大変な高温・高密度のちっちゃな状態であったものが、この大爆発から膨張していくにつれて次第に冷え、今のようになっていったと考えられています。これは当時、「火の玉理論」と言われていました。
対して、宇宙は大爆発などで始まったのではなく、宇宙の大きさは未来永劫ずーーっと不変であるとする「定常宇宙論」を唱える学者も多くいました。その論を唱えていたイギリスの天文学者フレッド・ホイル博士(1915年6月24日-2001年8月20日)は、ある日出演したBBCのラジオ番組の中で、
「宇宙の始まりには、どでかい爆発(ビッグバン)があったそうだ」
と「火の玉理論」と呼ばれていた説について若干揶揄した発言をし、それがそのまま定着して今に至っています。どこがどう揶揄なのかわかりますか?
ビッグバンの「バン」は爆発時の「バーンッ」という爆発音を意味するのですが、そもそも宇宙は真空であるので、そんな音はするわけがありません。ええ、ええ、ビックバンという名前は名が体を表していないのです。
ビッグバンに替わる名前を募集するコンテストまで開催
そして後日、敵であるサー・フレッド・ホイル博士が付けた名前なんて使いたくない! 前述のように、真空の宇宙では「バン」なんて爆発音もないしぃ~という火の玉理論派の研究者たちが、ビックバンに代わる名前を募集する名付けコンクールを開催し、14,000を超える応募があったそうなのですが、ビックバンを超える名前はなくそのまま定着してしまいました。
名前が実体を表していない…
この話を初めて聞いた時、私は納豆が実は「豆腐」で、豆腐が実は「納豆」である話がふと頭をよぎりました。皆さんはいかがでしょうか。(えッ? 全然よぎらない?)
というか、フレッド・ホイル博士、なんというネーミングセンスあふれる殿方なのでしょうか。パチパチ。敵の理論の名付け親になるなんて懐深過ぎませんか。ちなみに、韓国出身の人気アイドルグループ「BIGBANG」の名前の由来もビックバンからきているそうです。音楽業界に新たな大爆発を起こしたいという気持ちが込められているそうです…あ、つづりの最後の「G」を忘れるとかっこ悪いので、英語で書く時は気を付けてくださいね。…宇宙与太話、まだまだ続きます。
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授松井孝典監修(地湧社)
『彗星パンスペルミア 生命の源を宇宙に探す』チャンドラ・ウィクラマシンゲ著(恒星社厚生閣)
いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信(http://ikenori.com/)」の更新がライフワーク。
宇宙のはじまり「ビッグバン」の名前には致命的な誤りがある。