メジャーデビューから30年! 人気連載「働く私にMusik」のゲストはゴスペラーズ

▲右から、ゴスペラーズの安岡さん、黒沢さん、北山さん、村上さん、酒井さん、そしてナビゲーターのサッシャさん。
◆Guest Artist:ゴスペラーズ
北山陽一、黒沢 薫、酒井雄二、村上てつや、安岡 優からなるヴォーカルグループ。1994年にメジャーデビューし、『永遠(とわ)に』『ひとり』など多くのヒット曲を送り出す。他アーティストへの楽曲提供やソロ活動などでも活躍。
◆Navigator:サッシャ
1976年、ドイツ・フランクフルト生まれ。日本語・ドイツ語・英語のトライリンガル。J-WAVE『STEP ONE』ナビゲーター。『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にレギュラー出演するほか、モータースポーツをはじめとするスポーツ実況など多方面で活躍中。
ゴスペラーズの軌跡
1991年 早稲田大学のアカペラサークルで結成
1994年 メンバーチェンジを経て、シングル『Promise』でメジャーデビュー
2000年 シングル『永遠(とわ)に』がロングセールスを記録し、ブレイク
2001年 シングル『ひとり』がアカペラでは初の国内オリコントップ3入り
NHK紅白歌合戦に初出場。以降、6年連続での出場を果たす
2014年 メジャーデビュー20周年を記念した全都道府県ツアーを開催
2024年 メジャーデビュー30周年を迎え『ゴスペラーズ 30周年記念祭』を開催
【Oggi世代への助言】自分の限界を知っておくべし。30代はギアチェンジの時期
サッシャさん(以下、サ):人生経験豊かなみなさんから、人生の後輩であるOggi世代へぜひアドバイスをいただきたいです。30歳前後のころ、どんなことを考えていたか、何が未来につながっていったのか…。
黒沢さん(以下、黒):30歳くらいかぁ…ちょうどブレイクしたころだと思うので…僕は調子に乗ってました(笑)
サ:(笑)。
黒:ブレイク前からファンはついていたし、ツアーもできていたし、幸せでしたよ。幸せでしたけど、1990年代の音楽シーンとしてはメインストリームでの売れ方ではなかったんですよね。それで、もがいてもがいて、ちょうど僕と村上が30歳になるくらいかな? 『永遠(とわ)に』が大ヒットして。そうやってブレイクするまで、自分たちが嫌だと思う曲を一度も歌ったことがないというのはすごく幸せなことだったよね。
サ:それはすごい! 今に至るまでもそうなんですか?
黒:そうですね。
村上さん(以下、村):それがいちばん幸せだったんじゃないかな。
黒:もがきが形になったから、そのときは有頂天で、自信もありましたね。で、僕はその後すぐに歌いすぎで声が枯れて…やっぱり調子にのりすぎちゃいけないなと(苦笑)。先輩たちからは「30代になると体が変わるよ」と言われていたんですけど、それが割と早い段階で来てしまいました(苦笑)。
村:まぁ、急に忙しくなったしね。
サ:リーダーはいかがでした? 30歳になって、立ち位置や思考って変わりましたか?
村:「仕事も恋も…」なんてよく言うけど、20代後半から30代って、単純にすごく元気だから、いい意味で無理をしていた気がしますね。仕事に関しては本当にねぇ…、正直、「もういい」って言いたくなるようなこともありながら、曲もみんないっぱい書いてるんです。それはもちろん、オファーがくるからっていうのも理由なんだけど。
黒:いっぱいきてたねぇ。
村:「仕事は忙しい人に頼め」ってよく言うじゃないですか。僕たちも、求められて、せっつかれて、それに対して脊髄反射のように応えていて…。何がなんだかわからなかったような時期でもあるんだけど、あんなふうに燃えていられるって、やっぱりすごいパワーがあったんだな、と。いい意味で、目の前のことに集中できていたんじゃないかと思いますね。
サ:それほど忙しい中で、グループが空中分解するような危機は訪れなかったんですか?
村:まったく無かったわけじゃないと思いますよ。特に売れたときっていうのはね。
北山さん(以下、北):いちばん危険な時期だよね。
黒:調子に乗らせてくれる人がまわりにいっぱいいるからね(笑)。自分の実力以上に褒められてしまったりとか。
安岡さん(以下、安):「あなたのグループの中で、あなたが一番いいと思いますよ」なんてことを悪気なく言う人がまわりに集まってくるわけだからね。
酒井さん(以下、酒):それで瓦解してしまったグループもいましたからね…。
北:僕なんかは、20代はゴスペラーズであることだけに集中して過ごして、他のことをあまり考えずに、がむしゃらにやっていて。でも、そのおかげで30代になって、社会に目を向けることができたというか。20代での頑張りが30代の土台になって、視野が広がった感覚がありました。就職した同級生も30代になると役職がついていて、彼らと連携をとることで、アカペラがどうやって社会と向き合うのか、いろいろと話して取り組むことができたりもして。
安:ブレイクしたことで、やってみたいことに挑戦する権利も得られたよね。僕はいちばん年下なんで、30歳になったときがちょうど10周年を迎えたタイミングだったんです。20代後半にひとつの荒波を乗り越えた。売れている喜びはありながらも、やらなくてはならない仕事量もすごかった。それをなんとか乗り越えたぞ! というタイミングで30歳になって、やらなきゃいけないことだけをやってたら、自分が枯れてしまうと思ったんです。何か新しいことに挑戦するなら今だ、と。
サ:ブレイクしてまわりに認められることで、自由にチャレンジする権利を手に入れたわけですね。
安:「やってみたい」と言えばやらせてもらえる。そういうチャンスを得ましたね。身になったもの、ならなかったもの、いろいろあるけれど、30代は自分で決めた塾に通っていたような、そんな感覚でした。
サ:30代ではこれをしておくべき…というようなアドバイスはありますか?
安:特に肉体面なんですけど、自分の限界値を見つけておくこと。30代中盤くらいのころ、ありがたいことにすごく忙しくて、ツアーをしながら徹夜で作詩をしないと締切に間に合わないペースで仕事が来ていたんです。そんなとき、年齢がひとまわり上の藤井フミヤさんと対談をさせていただく機会があって、「35歳なのに、まだ徹夜してるんです」と話したら「いい加減にそれをやめたほうがいい。どこかで必ず無理できなくなる。やめるなら、今。その生活を絶対に変えなさい」と。
サ:実際のところ、どうでした?
安:その数年後…30代後半にさしかかったところで、突然、全身に蕁麻疹が出て。「ここが俺の限界なんだ。俺はこれ以上頑張れない」と、徹夜で仕事するのを一切やめました。頑張ることは素晴らしいことだけど、自分の限界値は自分にしかわからないから、自分で決めてあげるしかない。
北:「××日までにこの仕事できますか?」と聞かれて、「…や、やれます…!」と答えても「あ、できますよ~」と答えても、どちらも相手にとっては同じだからね。無理を感じるなら、そこはちゃんと自分で締め切りを伸ばしてもらうとかね。
安:あと、限界を知った上で自分を訓練すると、肉体よりも脳が先に成長するようになるんですよ。
サ:マインドセットも大事なんですね。
北:そういう意味で言うと、30代はギアチェンジの時期なのかもしれませんね。すごく頑張った人はシフトダウンの方法を探ればいいし、無理のない範囲でエネルギーを使ってきた人は余力でシフトアップしてみてもいい。
黒:自分で采配ができるようになったりもして、仕事は楽しくなってくる時期だもんね。いろんな仕事ができるようになってくる時期だからこそ、そこでハイになりすぎない。ときに立ち止まったりもしながら、少しずつギアチェンジしていくのは大事だよね。
北:ギアをシフトアップすることはみんな考えてるかもしれないけど、ときにダウンすることも考えに入れてみたり。
酒:ここまでと違う観点でいうと…僕は、今の自分に縛られなくていいとも伝えたいですね。30代のころ、鈴木雅之さん、佐藤善雄さん、桑野信義さんと「ゴスペラッツ」というユニットを組んだんですが、そこでの自分とゴスペラーズでの自分は「人格が違う?」ってくらいまるで別人で…。
黒:そうそう。ゴスペラーズの酒井はクリエイティブな感じなんですけど、ゴスペラッツの酒井はまた違うんですよ。すごく芸能人っぽいというか。僕、サインもらいに行きたいと思いましたもん(笑)。
サ:環境が変われば、立ち位置や自分らしさも変化しますよね。
酒:そうなんです。ゴスペラーズというチームにおける僕の守備位置と、ゴスペラッツでのそれは違う。〝私〟というものが、もうひとつあるような感覚で。だから、もし今に行き詰まりを感じている方は、悲観しなくていいと思うんです。
サ:違う場所に行けば、自分の在り方も輝きも変わるかもしれない。
酒:私のこういうところって、こんなに有用だったの?とか、新しい気づきを得られる局面もあるかと思いますし。
サ:まだまだ知らない自分の可能性があるんだよ、と。
酒:今の私は、それまでの私でしかない。だから、私というものに縛られないでいいと思います。

【一生、ゴスペラーズ】ゴスペラーズであり続けられればいい
サ:最後に、これからについてのお話も聞いておきたいなと思うんですが…この感じからして、全員がお墓に埋まるまでゴスペラーズをやり続けるんじゃないかなって。
北:最後に誰が残るかですね(笑)
村:ひとりでゴスペラーズを名乗ってるか、ひとりでゴスペラーズを解散するか(笑)
サ:最後のひとりになってもギャラを5等分しているんじゃないか? というくらい、ずっと変わらなさそうだなと感じました。
村:それぞれが夢を描くことも大事なんだけど、そのためにゴスペラーズであり続けられたらいいなと思いますね。そして、それってすごくシンプルで、繰り返していくことに意味があるんじゃないか、と。曲をつくり続けるのもそうだし、ツアーやコンサートを回り続けることもそう。頭も心も動かし続けている姿を見せることが、聴いてくださっている人のパワーになる、とコロナ禍を経てより強く実感しましたね。だから、それをしっかりとやり続けることが大事というか…いちばん楽しいことなんじゃないかと。
サ:続けることで見えてくるものがある。
村:たとえばツアーで地方に行ったとして、「名産品を食べたし、この街はもういいか」じゃなくて「今度はあれを食べようぜ」って〝次〟を考えることが楽しかったりする(笑)。こういう小さなことがずっと繰り返されていくことが幸せなんだと、コロナ禍を経てすごく思うわけですよ。
サ:何が大事なのか、改めて見えましたよね。
村:そうですね。歌にはやっぱり癒しの力があって、歌うことで解決できることっていっぱいある。現場をつくって守っていくことの意味を感じますね。
黒:いまさら解散する理由もないよね。話が合わなかったとしても、そこはそういうもんだからって思うし。
北:だれかのソロが300万枚とか売れたらどうする?(笑)
安:それはミーティングしよ!(笑) 。それはもう俺たちがどうとかじゃなくて、社会が何を求めてるかって話になるから(笑)
酒:300万枚はすごいねぇ。でもこの時代だから、基準は再生回数にしようよ。
サ:ゴスペラーズは、一生ゴスペラーズ。そうして進化していくんですね!
<Vol.3へ続きます>
【Information】
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公演詳細はこちら!
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最新シングル『will be fine feat. Anly』発売中!

メンバーの安岡 優が作詩、黒沢 薫が作曲を手がけた久しぶりの新曲は、TVアニメ『天久鷹央の推理カルテ』のエンディングテーマ。シンガーソングライター・Anlyをゲストヴォーカルに迎え、Yaffleがサウンドプロデュース。6人のハーモニーが響き合う、洗練されたバラードに。[通常盤]¥1,100(ソニー・ミュージックレーベルズ)
撮影/嶌原佑矢(UM) スタイリスト/久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/凜(ゴスペラーズ分)、新地琢磨(Sui/サッシャさん分) 構成/旧井菜月