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LIFESTYLE

2024.07.07

舞台をとことん楽しめる濃密なふたり芝居に挑む!【井之脇海さんインタビューvol.1】

幅広いフィールドで活躍中の俳優 井之脇海さんが登場。ダブルキャストのふたり芝居という意欲的な舞台作『ボクの穴、彼の穴。W』への出演について、お話をうかがいました。

松尾スズキさん初翻訳のフランス絵本を舞台化。
今注目の俳優たちの競演の話題作に登場する井之脇海さんが語る
『ボクの穴、彼の穴。W』の見どころとは?

ドラマや映画などの映像作品、舞台、はたまた声優やナレーションなど多様なジャンルで快進撃を続ける、井之脇海(いのわき・かい)さん。今回は、ふたり芝居を2組のキャストで上演する話題の舞台作品に挑みます。

フランスの童話作品を、大人計画主宰の松尾スズキさんが初めて翻訳した絵本『ボクの穴、彼の穴。』を舞台化したのが今回の作品。戦場の穴に残された敵対するふたりの若い兵士が、それぞれの穴の中で孤独と闘いながらさまざまな感情を巡らせ、「彼」を知ることで勇気を持って新しい世界(穴の外)へ歩み出す、という希望の物語。

戦争を背景にしつつ最後にふたりの兵士が一歩を踏み出すという、輝かしい未来を願う想いは普遍的なもので、人間の根源的な優しさもテーマになっています。

相手役との心の距離感の変化を感じ取りながらリアルな芝居を追求したい

ふたりの兵士がそれぞれの穴の中で、お互いの顔を見ることなく直接会話をするわけでもなく、でもなぜか感情を共有しながら進んでいくお話。普遍性のあるテーマを持つ作品だと感じましたが、井之脇さんが思うこの作品の魅力を教えてください。

井之脇さん(以下敬称略):戦争が舞台ですけれど、遠い世界の話ではないと僕は思っています。なぜかというと、スマホが普及しSNSが盛んな現代ではまったく知らない人と簡単にコンタクトを取ることができる。そんな中で「この人ってどんな人だっけ? 信じられる人かな?」とふと感じるときがありますよね。そういう経験と地続きになっている物語と受け取っていただけたら。

あとは、芝居を密に楽しめるところですね。どんな演出になるかわかりませんが、おそらくシンプルな見せ方になる気がしています。客席との距離が近い劇場で僕たちふたりきり(共演は上川周作さん)の芝居で進めていくため、お客さんにはその空間をどっぷりと楽しんでもらうことができるというのも魅力だと思います。

台本を拝読し、おふたりのセリフの量と長さに圧倒されました。そこに感情の揺れ動きをのせるというのは表現者として大変そうだなと思ったのですが。

井之脇:確かに大変さはあるのですが、同じだけ楽しみもあります。結果的にセリフが長くなる、というのは、モノローグで進んでいくからなんです。相手と会話のキャッチボールをするというより、「語り」で構成されていて、でもどこか繋がった会話になっているというところが難しいなと感じています。

心の声なのか、極限状態で漏れてしまっている声なのか、そこはこれから探っていきますけれども、リアルではそんなに大きな声で独り言を言わないじゃないですか。それをどう真実味を持たせていくか、というのは挑みがいがあるんじゃないかな。

セリフを覚えるのは大変ですが、それはやればできることなので。それよりも、相手との距離感の変化を感じ取りながらやれたらいいなと思っています。

おふたりのセリフのテンポ感や間などもお稽古で探っていく感じですか?

井之脇:そうですね。でもまず、それを意識する前にお互いに相手を感じ取っていく中で自然とテンポが生まれたらいいなと。(演出の)ノゾエさんが、DJのように「ここはもっと速く」とか調整してくれるのかなと。でもただそれを受け取るだけではなくて、「なんで速くなるんだろう、このセリフに引っかかったからなのかな」というようなことを繰り返したり。稽古ではそういった新しい発見を探していきたいです。

ひとつの作品をふたつのチームで上演。まったく違うものになると思うから、両方観てもらいたい

上川さんとのふたり芝居で、上川さんはA、井之脇さんはBという役。兵士として別々の穴にいるわけですが、それぞれの人格は理解しあっているのでしょうか?

井之脇:そうですね。基本的には役が違うので、僕は僕でBの人生を想像して埋めていきます。一方、僕と上川さんの共通認識なのですが、このふたりって鏡合わせなのか表裏一体なのか、決してまったくの別人格ではないところもあると思うんです。別人なんですけど、どこかふたりでひとつのようなところがある。なので、各々が作ってきたAとBがどこか自然とリンクする瞬間が見えると思うんですよ。

これから始まる稽古でその瞬間を発見できたら、もしかするとひとりひとりが演じる以上の人物を表現できるんじゃないかと。上川さんと「これは面白いね」って言っています。その瞬間を探るためにはちょっとした助け合いが必要なので、そこでは一緒に作っていけたらと思っています。

上川さんはどんな印象ですか?

井之脇:ユニークな方です。独自の感性を持たれていて、言葉の選び方も興味深いです。たぶんずっと面白いことを考えていて、楽しいことがお好きなんじゃないかな。見ているこっちも笑顔になれるような方です。

今回は、井之脇さんと上川さんの「ボクチーム」、窪塚愛流さんと篠原悠伸さんの「彼チーム」のダブルキャストという試みですよね。

井之脇:そうです。同じ作品でもまったく違うものになる気がしています。もちろん、どちらも正解で。両方を観てもらったらより楽しめるのではないかと思います。

井之脇さんが言われるように、本当に「芝居を楽しめる」作品。お稽古は8月から始まるそうですが、幕が上がるまでにどんどんブラッシュアップしていかれるのだろうと思いました。

次回は井之脇さんご自身についてお話をうかがいます。お楽しみに!

撮影/天日恵美子 スタイリスト/坂上真一(白山事務所) ヘア&メイク/大和田一美(APREA) 文/斉藤裕子

舞台モチロンプロデュース『ボクの穴、彼の穴。W』

【Story】
戦場に残された敵対する二人の若い兵士“ボク”と“彼”。二人は同じく穴の中で息をひそめて相手の出方を探っている。ボクが頼るものは戦場に向かう時に渡された1丁の銃と“戦争マニュアル”。そのマニュアルには、『彼は血も涙もない、本当のモンスターだ』と書かれている。二人は空腹に耐え、星空に癒され、家族を想いながら、もう随分長く独りぼっちだ。やがて限界が訪れ、ボクは相手の穴に向かう。「敵を殺さなければならない。でないと敵に殺されるからだ」。彼の穴に到着したボク。そこに彼の姿は無く、見つけたものは自分が持っているものと全く同じ“戦争マニュアル”。そこには“ボクがモンスターだ”と書かれている。衝撃を受けるボク。「ボクは人間だ!モンスターじゃない!ウソばかり書いてある!」そしてもう一つ見つけたものは、彼の家族写真。楽しい温かい家族写真だ。ボクは彼を想像する。こんな家族が待っている人間が、女や子供を殺す?ボクと彼は、同じウソをつかれているということだろうか…

【Cast&Staff】
翻案・脚本・演出:ノゾエ征爾
訳:松尾スズキ
原作:デビッド・カリ/セルジュ・ブロック
出演:<ボクチーム>井之脇海×上川周作/<彼チーム>窪塚愛流×篠原悠伸

【公演詳細】
<東京公演>
日程:2024年9月17日(火)〜9月29日(日)
会場:スパイラルホール

<大阪公演>
日程:2024年10月4日(金)〜10月6日(日)
会場:近鉄アート館

公式サイト

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