この物語は「夫婦の再生」だと思いながら演じていました
──近年の岡田さんは、映画『ゴールド・ボーイ』のサイコパスキラーなど、クセの強いキャラクターが多い印象でしたが、今回の二也は「文具メーカー勤務のサラリーマン」という、かなり普通の役どころですね。
この役、普通ですか?
──はい、外に恋人がいたりはしますが、それも含めて(笑)。
本当ですか?よかった。いや、なんか最近、クセが多い役しかやってないって思われるのが、すごくイヤで。そんなはずはないんですけど、みんなが思っている普通と、僕が思っている普通がズレてるのかな?なんて考えてしまって。そっかそっか、よかった。ありがとうございます。
──ただ、結婚7年目のセックスレスの夫婦で、夫には妻公認の恋人がいるという、刺激的な設定でストーリーは始まりますが、岡田さんはこの作品を、どのようにとらえましたか?
今の時代ならではっていうのもちょっと変だけど、夫婦にはいろんなあり方があって、僕は、この夫婦が「再生していく物語」だと思いました。僕は漫画がすごく好きで、原作も本当に面白く読ませてもらいましたし、周りにもおすすめしたんですけど、「読み応えがすごかった」っていう感想が多かったので、より頑張らなきゃいけないなと思いましたね。
弱いところも含めて、二也の人間らしさを感じてほしい
──実際に二也という役を演じて、どんなことを思いましたか?
二也がしていることに関しては、もちろん許されないこともあって、誰かを傷つける行為をしてはいるのですが。でも僕は全体を通して、彼は一子(いちこ※妻の名前)ちゃんをいちばん大切にしている、愛しているととらえていました。そこが人間っぽいっていうか。誰だって過ちがあるし、誰だって毎日毎日、正しく生きているはずがないから、だからこそ二也の人間的な弱さも含めて、すごく魅力的に感じていて。観てくださる方々に、共感してほしい部分はもちろんあるけど、どちらかというと作品を通して「そうそう、こういう男はいるんだ。だってそれが人間じゃん」と感じてほしいと思って、演じましたね。いけないことをしているので、肯定しすぎるのも難しいですけど(笑)、割と好きなキャラクターです。でも、二也がすごく一子ちゃんを大切にしていることは、全編通して観ていただけたら、伝わるんじゃないかと思っています。
──夫婦の長い会話劇も、見どころのひとつですね。
今回の作品は、演じていて本当に楽しかったんです。夫婦の織りなす会話が、すごくリアルなんですけど、お互いの呼吸の合わせ方が、僕のブレスのタイミングとすごく似ていて、言いづらいセリフが、ほぼひとつもなかったのは、すごく珍しい経験でした。長回しの撮影があるのはわかっていたので、より準備はしていましたし、あとはそのとき感じたことを、より嘘がないようにお芝居をすることが、毎日毎日楽しいなと、充実した日々を過ごしていました。今でも後悔するシーンは、基本的にないというか。
──「後悔しない作品」って、珍しいんですか?
僕にとっては、珍しいかもしれません。基本的にどの作品の撮影も、毎日後悔しながら家に帰っているので(笑)。二也という役が好きだったこともありましたし、あと一子役の高畑充希さんとのセッションが、すごく楽しかったんです。高畑さんとは、今までご一緒したことがなかったのですが、クランクイン前に監督と3人でごはんを食べたりしながら、作品に対する考えを話し合って、距離を縮めた状態で撮影に入れたんです。クランクインって、緊張してしまうことが多い中、割とリラックスした状態でスタートを切れましたし、そこから撮影が終わる2か月くらいまで、毎日話し合いながら撮影ができたことは、すごくいい結果をもたらしているんじゃないかなと思います。
演じていて、初めて感情のコントロールが効かなかった
──ちなみに、演じていて辛かったシーンはありましたか?
最終話でもう撮影に入る前から、面白いぐらいに辛いシーンがありました(笑)。メイクしながら「あのシーン撮るんだ、やだな」って思っていましたね。ちょっと耐えられなかった。監督も引いてたんじゃないかな。え?って。
──すっかり二也に入り込んでいたんですね。
僕も、そこまでなるとは思ってなかったんですけど、なんだろう……演技をしていて、感情的になることが決して悪いとは思ってはいないんですが、絶対にコントロールしなくてはいけないのに、コントロールしたくてもできないときもあるんだなという、勉強にもなりましたね。……あと「剣山のシーン」もイヤでした!
──原作でも有名なシーンですね(笑)
いろんな実験を重ねながら、どういう形が、よりよく映るかということは、スタッフの皆さんがすごく考えてくださって。『1122 いいふうふ』が映像化されることがニュースになったときに、「剣山はどうなってるんだ」っていう声がネットに多く上がっていたのですが、皆さんの期待を裏切らない、剣山のシーンができているんじゃないかなと思います(笑)
作品づくりにあたり「原作への愛やリスペクトを感じた」とも語る岡田さん。後編では、岡田さんが思う夫婦像や、家族観について語っていただきます!
【Information】
『1122 いいふうふ』(全 7 話)
妻・ウェブデザイナーの相原一子(高畑充希)。夫・文具メーカー勤務の相原二也(岡田将生)。セックスレスで子どもがいなくても、友達のように仲がいいが、夫には妻公認の恋人がいる。「結婚」というハッピーエンドの続きにある30代夫婦の生活を描き出す、誰にとっても他人事でない、リアルな物語。2024年6月14日(金)Prime videoにて独占・世界配信 ※作品の視聴には会員登録が必要です。
原作/渡辺ペコ「1122」(講談社「モーニング・ツー」所載)
出演:高畑充希 岡田将生 ⻄野七瀬 高良健吾ほか
監督:今泉力哉 脚本:今泉かおり
企画・プロデュース : 佐藤順子
製作:murmur
制作プロダクション:Lat-Lon-©︎ 渡辺ペコ/講談社 ©︎murmur Co., Ltd.
公式サイト:1122-drama.com
公式X/公式Instagram:@1122_iFUFU
【Profile】
岡田将生
1989年8月15日生まれ、東京都出身。2006年俳優デビュー。近年の出演、主演作に映画『ドライブ・マイ・カー』(2021年)、『ゆとりですがなにか インターナショナル』(2023年)、『ゴールド・ボーイ』(2024年)など、話題作が多数。公開待機作に『ラストマイル』(2024年8月23日)、『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(2024年11月)がある。
衣装協力/ ザ・リラクス ☎️03-6432-9710
撮影/高木亜麗 スタイリスト/大石祐介 ヘア&メイク/小林麗子 構成/湯口かおり