そもそも「ムクゲ」とは?
「ムクゲ」という植物を知っていますか? 名前は聞いたことがあるけれど、どんなビジュアルの植物なのか、イメージが沸かないという方もいるのでは? まずは「ムクゲ」の特徴と、名前の語源について紹介します。
語源
「ムクゲ」の語源は、中国名の「木槿(もくきん)」であるという説が一般的。一方、朝鮮では、夏から秋にかけて、長い期間花を咲かせ続けることから「ムクゲ」を「無窮花(ムングンファ)」と呼びます。この朝鮮語が語源という説もあるようです。
特徴
「ムクゲ」は、高さ2〜3mのアオイ科の植物。ハチスやキバチスとも呼ばれます。原産は中国。夏から秋にかけて、芙蓉やハイビスカスとよく似た、白やピンク、赤や紫の花を咲かせます。
花は早朝に咲き、夕方にはしぼんでしまうのが特徴。このような花を「1日花」と呼びますが、夏から秋にかけて次々と新しい花を咲かせます。つぼみは「木槿花(もくきんか)」と呼ばれ、下痢の薬として使われることも。
ムクゲの育て方
「ムクゲ」の植え付けや植え替えに適しているのは、12月〜3月。日当たりが良く水はけの良い場所に植えましょう。成長スピードが早いので、鉢植えではなく庭植えがおすすめ。水やりは基本的に必要ありませんが、夏に土がひどく乾いているときには水を与えましょう。
肥料は冬に与えます。花を咲かせる夏から秋にかけて、追加で肥料を与えると、花のつきがさらによくなりますよ。春に伸びた枝に蕾がつき、夏に花が咲きます。そのため、枝の剪定は冬のうちにしましょう。
「ムクゲ」の花言葉と由来とは?
「ムクゲ」という名前を聞いて、どんな植物かイメージできるようになりましたか? 1日花であることから、儚げなイメージもありますが、どのような花言葉を持っているのでしょう。次は、「ムクゲ」の意外な花言葉と、その由来について解説していきます。
花言葉
「ムクゲ」の花言葉は「信念」「新しい美」。1日花から想像していた儚げなイメージはなく、むしろ「信念」という力強い花言葉を持っていましたね。それぞれの花言葉の由来についても、見ていきましょう。
由来
「信念」の由来は、中世ヨーロッパの十字軍であるといわれています。十字軍とは、カトリック教徒たちが、イスラム教徒からエルサレムを奪還することを目的に結成した軍隊。その遠征の際に、シリアからヨーロッパへ「タチアオイ」の花が伝わったとされています。
実は、「ムクゲ」と「タチアオイ」は別の植物。タチアオイはヨーロッパ原産の植物です。しかし、「ムクゲ」の花がタチアオイに似ていたことから、かつて「ムクゲ」の学名は「低木のタチアオイ」という意味を持つ「Althaea frutex」でした。そこから、「ムクゲ」にも「信念」という花言葉がついたのです。
「新しい美」という花言葉の由来は、花は1日でしぼみ、次の日には新しくて美しい花が、次々と咲く様子からついたそう。1日で花がしぼんでしまう儚さよりも、次々とたくさんの新しい花を咲かせることの方が、当時の人々に感動を与えたことがわかりますね。
「ムクゲ」と日本
「ムクゲ」は奈良時代から栽培の記録があったり、平安時代の書物に名前の記録があるなど、古くから日本でも親しまれてきた植物です。実は、和歌の季語や、四字熟語にも使われているのをご存知でしょうか?
季語
「ムクゲ」は秋の季語。『野ざらし紀行』において、松尾芭蕉が呼んだ一句は有名です。「道のべの木槿は馬に食はれけり」。「木槿」が「ムクゲ」のこと。馬に乗っていた芭蕉の目の前には白い「ムクゲ」の花。芭蕉が花を眺めていたら、突然馬がその「ムクゲ」の花を食べてしまった、という様子を詠んだ句です。
このとき、芭蕉はどのような気持ちを感じたのでしょう。花が食べられてしまった「悲しみ」でしょうか、馬は「ムクゲ」を食べるのかという「驚き」でしょうか。長い時間を経ても、たった17音から想像が膨らむ楽しさがありますね。
四字熟語
「ムクゲ」にちなんだ四字熟語もあります。「槿花一朝(きんかいっちょう)」という言葉を聞いたことはありますか。「人の栄華は束の間。長く続かず儚い」という意味です。「ムクゲ」の花の、朝咲いて夕方にはしぼんでしまう様子から生まれた言葉であることがわかりますね。「槿花一朝の夢」という形で使われることが一般的です。
「ムクゲの花が咲きました」とは?
実はこの「ムクゲ」、韓国の国花であることを知っていましたか? 「無窮花(ムングンファ)」という名前からもわかるように、朝鮮では古くから「ムクゲ」を愛で、親しみを持っていたそう。そんな韓国には「ムクゲの花が咲きました」という遊びがあります。どんな遊びなのでしょうか?
遊びの内容
ルールは基本的に、日本の「だるまさんがころんだ」と同じ。鬼が背中を向けて「ムクゲの花が咲きました(ムグンファコッチピオッスミダ)」と言っている間に、他の人は鬼の背後から近づいていきます。言い終わると鬼が振り返りますが、鬼がこちらを見ているときは、他の人は動くことができません。
「ムクゲの花が咲きました」は、「だるまさんがころんだ」と音の数が違うこともありますが、歌うときのメロディーも少し違います。Netflixで配信中の人気韓国ドラマ「イカゲーム」の中でこのゲームが登場したことから、最近特に話題になっているようです。そのため、YouTubeなどで検索すると、動画がアップされていて、歌い方も分かりやすいですよ。
最後に
名前は聞いたことがあるけれど、あまりイメージがわかない「ムクゲ」について解説しました。日本でも古くから身近な存在であることが分かりましたね。また、お隣の国、韓国では国花になるほど愛されており、子供の遊びにもなるほど親しまれていました。魅力が詰まった「ムクゲ」。道端で見かけたら、じっくり眺めてみてください。
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