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LIFESTYLE

2022.05.21

「リスナーとゆるくつながりたい」TBS井上貴博アナ×ジェーン・スーさん対談【後編】

TBSの看板アナウンサー・井上貴博さんの初・冠ラジオ番組『井上貴博 土曜日の「あ」』が4月から放送中! 井上アナは、Oggi連載でもおなじみジェーン・スーさんのラジオパートナーをつとめていたこともある… というご縁から今回のスペシャル対談が実現しました。後編も井上アナとジェーン・スーさんの本音トークをとことんご堪能ください!

4月からスタートした初の冠ラジオ番組『井上貴博 土曜日の「あ」』(毎週土曜・13:00〜15:55)が大好評のTBS井上貴博アナウンサーと、同局ラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』(毎週月曜〜木曜・11:00〜13:00)パーソナリティとしても活躍中&Oggi連載コラムも大人気のジェーン・スーさんによるスペシャルラジオ対談。

後編はラジオとの付き合い方を中心にお話しいただきました(▶︎前編はこちら!)。

では、今回も… 3・2・1・Q!

ふらっと来て、ふらっと帰る。そんな〝ゆるいつながり〟が理想

井上貴博アナウンサー(以下、井上アナ):マンネリ化って、番組が続く限りずっとついて回る問題ですよね。慣れないように、飽きないように、少しずつ変えていくんですか?

ジェーン・スーさん(以下、スーさん):変えることはないんじゃないかな。気持ちのいいマンネリズムを探すっていう、一番難しい作業になると思うんだけどね。『生活は踊る』は、私以外の誰が喋っても楽しく気持ちよくできるような番組にしてあるんですよ。「スーさんじゃなきゃ!」ってならないようにしてる。

井上アナ:番組がスタートしたときからそうでしたよね(※井上アナは同番組の初代火曜パートナー)。初めからそう思ってつくられていたんですか?

スーさん:だって、何も背負いたくないじゃん?(笑)

井上アナ:(笑)。そう言いながら、スーさんはちゃんと背負うじゃないですか(笑)。

スーさん:自分が背負える範囲だけね。私、ラジオに依存したくないんですよ。いつでもフラッと来て、フラッと帰れる場所にしておきたい。

井上アナ:それはリスナーの皆さんもきっと同じですよね。聴きたいときだけ聴きに来て、帰りたいときに帰るような番組であればいい。

スーさん:朝から晩までラジオを聴いている人って一定数いるんだけど、どんどん少なくなっていて。リスナーの中でも目立つ存在になっているんですよね。だけど、もっとフワッとした関係性で、ラジオと接してくれる人が増えるといいなと思ってます。

井上アナ:〝ゆるいつながり〟が欲しいんですよね。番組とLINEするような感覚でコメントを一言送ってくれて、それをこっちがキャッチして反応する… くらいの。だから、難しいメッセージテーマとかは無くしたいんです。

スーさん:起承転結がついていて面白い、かつ文量も適切… そんな〝読まれる前提〟のものを、いわゆるプロリスナーさんたちがいっぱい送ってくださるんですよね。

井上アナ:ありがたい反面、ちょっとしたネタを思いついても「自分なんかがおこがましい、こんなメール出せないや…」と遠慮してしまう方もいるんですよね。僕自身はそのタイプなんです(苦笑)。

スーさん:「好きなジャムの味は?」とかすっごく素朴なテーマにするといいですよ。初めての人からもたくさんメールが届いて、それが意外に面白かったりする。あ、そういえば、Podcastで始めた『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』にはラジオリスナーがほとんどいないんですよ。ラジオのお作法も何もないから、印刷するとA4用紙2枚になるようなとんでもない長文メールをみんなが送ってくる(笑)。でもそれをちゃんと読むことで転がっていく新しい世界があって、すごくいいなって思ってます。

発散方法が異なるふたつのメディアでバランスをとっていく

井上アナ:「OVER THE SUN」は本当にすごいですよね。大人気!

スーさん:あの番組を始めてから、「いつも聞いてます!」って表参道で20代の可愛い女の子に声をかけられたりするようになったんですよ。「何で!?」って混乱しながら「おぉ… あ、ありがとうございます」って答えてます(笑)。

井上アナ:ラジオとPodcast、両方やってみてどうですか?

スーさん:Podcastは自発的に番組を〝聴きにくる〟人が相手だから、ある程度は自由に喋っても大丈夫。だけど、ラジオはそうもいかないですよね。どこかのお店でBGMがわりに流れていたりして、聴きたいと思っていない人の耳にまで届いてしまう可能性があるから。必然的に話題や表現を選んで、抑えるところは抑えなきゃいけない。私は、ラジオで抑えた部分をPodcastで出すようにしていて、すごくいいバランスを保ててる。井上さんもPodcastやった方がいいよ?

井上アナ:それ、僕の場合はテレビとラジオなんですよ。

スーさん:あ〜、なるほどね!

井上アナ:テレビでは出せないものをラジオで出す。そのおかげか、ラジオをやることになってからすごく健康状態が良くて(笑)。

スーさん:〝ウェルビーイング〟だ! 井上さんの〝ウェルビーイング〟がきた!(▶︎〝ウェルビーイング〟が気になる人は、スペシャル対談の前編をチェック!)

井上アナ:そうかもしれません(笑)。最近、同僚やテレビのスタッフから「どうしてそんなに笑顔が増えたの?」って聞かれるんです。その理由は言えないけど… いや、もうここで言っちゃいますけど(笑)、それはきっとラジオができるようになったからなんですよね。ラジオ以上のことが喋りたくなったらPodcastへ… という展開も、実はすでに考えていたりします。

ジェーン・スーの「あ」から始まる話は…『愛こそすべて』

スーさん:井上さんの〝ウェルビーイング〟も見つかったところで、ちょっと話題を変えてもいい?

井上アナ:もちろん! 何でしょう?

スーさん:この対談で私たちが話すテーマのひとつに「ジェーン・スーさんの『あ』から始まる話」があるんだけど、それを話してもいい?

井上アナ:「『あ』から始まる話」は番組で常に募集しているテーマなんですよ。ありがとうございます!

スーさん:年始の『生活は踊る』で書き初めをしたときに、「愛こそすべて」って書いたの。だから、ジェーン・スーの「あ」から始まる話は「愛こそすべて」です。真剣でまっすぐな愛情を持っていれば、気持ちは人に伝わるんだって、40代後半になって改めて気づかされたんですよ。大変ですけどね。

井上アナ:すごくカロリーを使いますよね。その気づきはラジオで?

スーさん:ラジオを含む仕事も、プライベートも、いろいろですね。でも、特にラジオが素晴らしいなと思ったのは、たった一人の誰かに向けて強い思いを込めて喋った内容が、たくさんの人に広く伝わること。逆に、「民衆のみなさ〜ん!」って広範囲に向けて喋った内容はあまり広がっていかない。『生活は踊る』の相談コーナーを聴いて下さる方がたくさんいらっしゃる理由はここにあるんじゃないかと思います。周りがなんと言おうと一対一で真剣に相談に答えるようにしているから。強い愛を持って伝えれば、気持ちはちゃんと届く。そして、ラジオはその伝達にとても適している… 50歳を前にして、そんなことを考えています。

井上アナ:今のお話を聞いていて、スーさんと一緒に『生活は踊る』をやらせていただいていたときの成功体験を思い出しました。そのころ担当していたお昼のテレビ番組『白熱ライブ ビビット』で、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の番宣があったんです。〝逃げ恥マニア〟だった僕は、そこで作品愛をめちゃくちゃに喋り倒して…。

スーさん:主役の星野さんと新垣さんがスタジオに来ている中で、凄まじい熱量でプレゼンをしてましたね(笑)。

井上アナ:おふたりがゲストできてくださっているのに話も振らず、公共の電波を使って、自分が好きな気持ちをただ喋り続ける。いや〜、あれには賛否両論ありましたね。「井上、やりすぎだ」「ふざけんな!」という感想もたくさんいただきましたが、火曜のラジオでスーさんが褒めてくださったんです。そのとき「伝えるってこういうことなんじゃない? これでいいんじゃない?」って思えたんですよね。

スーさん:すごく好きなものを、すごく好きって伝えたら、絶対にその気持ちは届くんですよ。

井上アナ:「これは言うべきじゃない」「やるべきじゃない」って、どうしても局アナとしてブレーキを踏みがちだったけど、あのときは「いいや、やっちゃおう!」ってポーンと突き抜けられたんです。『ビビット』を離れて『Nスタ』に行くことが決まっていたから… なんて理由もありますけど(苦笑)、あれは自分の中で大きな出来事でした。スーさんの「『あ』から始まる話」を聞いていて、思い出しました。嘘偽りのない気持ちを伝えたい、自分を演じることなく番組をつくっていきたいですね。思っていてもなかなかできることではないから。

スーさん:Podcast番組の「OVER THE SUN」を多くの人が面白がって聴いてくださっているのも、私と堀井さんが明け透けに喋ってるからだと思います。みんな、嘘偽りのない話が聴きたいのかもしれません。

番組を聞くかどうかは自由。だから「聞いてください」とは言いたくない

井上アナ:『井上貴博 土曜日の「あ」』も、偽りのない自分をどれだけ出せるかだと思っています。ハッキリ言って、こちらからお伝えしたい何かは特にないんです。しいて言えば、「井上貴博はこんな人間です」と分かっていただけたらいいなぁ、くらい。でもそれは皆さんが生きていく上で聞く必要もないことで、そんなラジオを聞いてもらえるとしたらこれほど嬉しいことはないですね。

スーさん:それがさっき井上アナが言っていた、リスナーとの〝ゆるいつながり〟なのかもしれませんね。お互いの関係をガチガチに固めて番組に対して何かを要求するんじゃなくて、リスナーさんが気軽にもたれかかれるような、ちょっとした〝止まり木〟みたいな… ラジオがそんな存在になれるといいよね。

井上アナ:そういう存在って大事だと思うんです。家族や友人、同僚のような強いつながりって、とても大事でありがたいものだけど、つながりが強いゆえに打ち明けられないこともある。でも、〝ゆるいつながり〟の中ならポロッと言えることがあるかもしれない。だから余計に、番組を聞くことを誰にも押し付けたくないんです。聞いてほしいと思ってはいますけど、それを口にはしたくない。これはラジオに限らず、テレビでもそうなんですけど、僕、番宣でも「ご覧ください」って言わなくて。カンペを出されてもスルーするから、スタッフによく怒られるんです(苦笑)。洋服屋さんで「これ素敵ですよ、買ってください」ってアピールされると買いたくなくなっちゃう、そんなあまのじゃくな性格だから。だって、番組を聴く・聴かないは皆さんの自由じゃないですか。

スーさん:そんなこと言うから、記事の最後をどう締めようかOggiさんが困ってるじゃない。じゃあ、私が代わりに言いますね。井上さんのラジオ番組『井上貴博 土曜日の「あ」』、ぜひ聴いてね! 井上さんがどう思ってるかは知らないけど!(笑)

■TBSラジオ『井上貴博 土曜日の「あ」』

放送時間:毎週土曜日 13:00〜15:55
出演:井上貴博(TBSアナウンサー)、田中ひとみ(TBSラジオキャスター)

平仮名の「い」の上(井上)は「あ」。わからないことをわからないと言える場所にすべく、日常にある「あ!」「あー」など色んな「あ」を探し、「これ、いいね」の気づきをリスナーと共有しながらつくっていく番組。毎回スペシャルゲストが登場するほか、車いすラグビー現役日本代表・池崎大輔選手による『池崎大輔 パラススポーツの「あ」』、リスナーと井上アナの生電話トークなど、多彩なコーナーを展開。

公式Twitter公式Instagram

撮影/目黒智子 構成/旧井菜月

井上貴博(いのうえ・たかひろ)

1984年、東京都生まれ。TBSアナウンサー。2007年TBSテレビに入社し、『朝ズバッ!』『あさチャン!』『ビビット』などの番組を担当。2017年より夕方のニュース番組『Nスタ』の平日版メインパーソナリティをつとめている。4月から初の冠ラジオ番組『井上貴博 土曜日の「あ」』がスタート。初の著作『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)も大好評発売中!

ジェーン・スー

1973年、東京都生まれ。作詞家・コラムニスト。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』、ポッドキャスト番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』のパーソナリティとしても活躍。新刊『きれいになりたい気がしてきた』(光文社)、『新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない 愛と教養のラブコメ映画講座』(高橋芳朗氏との共著・ポプラ社)が好評発売中。

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