この記事のサマリー
・「張り子の虎」とは、実力が伴わない見かけ倒しや、首を振る癖のある人を指す比喩表現です。
・「張り子の虎」は郷土玩具が由来の言葉です。
・人物評価に使うと侮辱と受け取られやすく、ビジネスや日常会話では慎重な言葉選びが求められます。
「張り子の虎」は、郷土玩具の名称である一方、比喩表現やことわざとしても用いる言葉です。ただし、玩具としての意味と言葉として使う際の意味は、同一ではありません。そのため、「使って大丈夫だろうか」と迷った経験がある人も多いかもしれません。
本記事では、辞書に基づいた定義を軸に、「張り子の虎」の意味と使い方、注意点を整理します。
「張り子の虎」とは?
辞書に基づき、「張り子の虎」が持つ中心的な意味と、比喩としての使い方を整理します。
「張り子の虎」の意味
『デジタル大辞泉』では、「張り子の虎」を次のように説明しています。
はりこ‐の‐とら【張(り)子の虎】
虎の形をした首の動く張り子のおもちゃ。転じて、首を振る癖のある人、また、虚勢を張る人、見かけだおしの人などをあざけっていう語。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
この定義から分かるように、「張り子の虎」は、もともとは虎の形をした、首が動く「張り子玩具」を指す言葉です。そこから転じて、見かけは強そうでも実質が伴わない人や、主体性がなくただうなずくだけの人をあざけって表す比喩表現として使うようになりました。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
郷土玩具としての「張り子の虎」
郷土玩具としての「張り子の虎」は、木型の上に紙を重ね張りし、乾燥後に型を抜く「張り子」の技法で作られています。首を別に作り、糸で胴内にぶら下げていることから、わずかな振動で首が動く構造が特徴です。
『日本大百科全書』(小学館)によると、「張り子の虎」は江戸時代にはすでに子ども向け玩具として流通していました。首が左右に動くことから「首振り虎」とも呼び、戦後は郷土玩具として全国各地で作られています。
ここで押さえておきたいのは、玩具としての「張り子の虎」自体には、否定的な意味は含まれていないという点です。比喩としての意味とは切り分けて理解する必要があります。
参考:『日本国語大辞典』、『日本大百科全書』(ともに小学館)

比喩としての「張り子の虎」|使い方と注意点
「張り子の虎」を比喩として用いる場合、批判や揶揄(あざけり)の意味が含まれていることに留意しましょう。意図せず強い否定として受け取られることがあるため注意が必要です。
「張り子の虎」が表す比喩的な意味
比喩としての「張り子の虎」には、主に次の2つの意味があります。
ひとつは、「見かけ倒し」や「虚勢を張る存在」を指す用法です。
虎という強そうな外見を持ちながら、実体は中空の紙細工であることから、実力が伴わないのに威勢だけはいい状態を表します。
例文:「計画は立派だが実行力がなく、張り子の虎と言わざるを得ない」
もうひとつは、「主体性がなく、ただうなずくだけの態度」を指す用法です。
「張り子の虎」が、少しの刺激で首を振る仕掛けであることから、自分の意見を示さず、相手に合わせてうなずくだけの態度にたとえる際に使います。
例文:「彼は上司の前では張り子の虎で、何でも首を縦に振るばかりだ」
ビジネスや日常会話で使う際のリスク
「張り子の虎」は、相手の「実質のなさ」を鋭く指摘する言葉です。たとえ事実に基づいた客観的な指摘のつもりであっても、言われた側には「能力がない」「中身が空っぽだ」と受け取られやすく、関係悪化を招く恐れがあります。
特にビジネスの場では、人格否定と受け止められる可能性が高いため、使用は慎重に判断する必要があります。
改善や期待を伝えたい場合は、「自分の意見を持ってほしい」「より能動的に関わってほしい」など、行動に焦点を当てた前向きな言葉を選ぶことで、建設的なコミュニケーションが可能になります。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

「張り子の虎」の英語表現
「張り子の虎」は日本語のことわざですが、英語にも似た意味を持つ表現があります。特に、中国の毛沢東が使った表現を背景に、「強そうに見えるが実質が伴わない対象」を指す政治的な比喩として知られていますよ。
毛沢東の “paper tiger” との関係
英語の “paper tiger” は、毛沢東が用いた「紙虎」に由来する表現です。『ビジネス技術実用英語大辞典V6』(プロジェクトポトス)では、見かけは強大で脅威を与えるように見えるものの、実際にはたいしたことのない国や人を指す語として説明されています。
例文:“The company looks powerful, but it is a paper tiger in the global market.”
(その会社は強そうに見えるが、国際市場では見かけ倒しにすぎない)
参考:『ビジネス技術実用英語大辞典V6』(Project Pothos)

「張り子の虎」に関するFAQ
ここでは、「張り子の虎」に関するよくある疑問と回答をまとめました。
Q1. 「張り子の虎」は褒め言葉として使えますか?
A. いいえ、使えません。相手の「見かけ倒し」や「実力のなさ」を指摘する言葉です。
Q2. 郷土玩具としての「張り子の虎」を贈るのは失礼ですか?
A. 縁起物として喜ばれるでしょう。玩具そのものは「勇猛な虎」にあやかり、子供の健やかな成長や魔除けを願う大変めでたい品です。比喩としての悪い意味とは切り離して考えましょう。
Q3. 英語で “paper tiger” と言われたら、どんな意味ですか?
A. 「張り子の虎」と同様に「こけおどし」や「見かけ倒しの人」を指します。
最後に
「張り子の虎」は、可愛らしい郷土玩具の一面と、辛辣な比喩表現の一面を併せ持つ言葉です。本来は子どもの成長を願う縁起物ですが、ビジネスや日常会話で使うと相手を深く傷つけるリスクがあります。
言葉のルーツを知ることで、豊かな文化を尊重しつつ、誤解を招かないスマートな表現力を身につけていきましょう。
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