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2022.04.20

「張り子の虎」とは? 由来や主な産地、作り方やことわざも紹介

「張り子の虎」とは、「虎のかたちをした郷土玩具」のこと。頭に触れると上下に首が揺れることから、「うなずくばかりで主体性がない人」のたとえとしても使われます。そこで今回は、「張り子の虎」の意味や由来、主な産地、ことわざの「張り子の虎」について紹介します。

「張り子の虎」とは?

(c)Shutterstock.com

「張り子の虎(はりこのとら)」とは、「虎のかたちをした郷土玩具」のこと。ピンと張った尻尾や大きく開けた口、ゆらゆらと揺れる振り子式の頭がユーモラスな日本のおもちゃです。別名「首振りの虎」とも呼ばれています。

張り子とは、型に和紙を貼り重ねて、立体的に成形したもの。日本画などで用いられる胡粉(ごふん)と呼ばれる顔料で絵付けをします。形が出来上がった後に、中の型を抜き取ってしまうため、軽いことも特徴です。商売繁盛でお馴染みのだるまや招き猫、起き上がりこぼしなども多くは張り子で作られていますよ。

それでは、どうして「張り子の虎」が作られるようになったのでしょうか。虎は古来より千里の藪を走り抜くと言われてきました。勇気があり、勝負に強い虎の姿にあやかってこれを飾り、武運を祈りました。特に男児の健やかな成長を願うものとして、端午の節句に飾られる縁起物とされてきたようです。

関西地方では、鎧やかぶと飾りのそばに置く習慣があったそうですよ。その他にも、寅年の縁日で売られたり、子供の誕生日祝いの贈り物とされてきました。

ちなみに、同じような首振り式の郷土玩具で有名なのが「赤べこ」です。「赤べこ」は福島県で作られてきた張り子製の玩具で、真っ赤な体ととぼけた表情がチャームポイント。頭に触れると上下左右に動く様子からは、重い荷物を背負って運ぶ牛の姿が思い浮かびますね。「張り子の虎」と同じく、子どもの疫病除けとして古くから愛されています。

「張り子の虎」の由来

(c)Shutterstock.com

「張り子の虎」は、中国の虎王崇拝が日本に伝わったことから作られはじめたと言われています。古代中国では、人間と虎が密接に生活をともにしていたことから、山の神や魔除けとして崇拝の対象とされてきました。その後、虎は故事成語や軍事的なシンボルとして用いられるようになったのです。

今や動物園などで気軽にみられる虎ですが、もともと日本には生息しない動物でした。そのことがかえって“異国の霊獣”として人々の関心を集め、十二支の一つとして選ばれたり、日本画の画題として虎が描かれるようになったようです。初めは貴族など身分の高い人の間で知られていましたが、やがて庶民の間にも広まり、江戸時代になると民芸品として「張り子の虎」が作られるようになりました。

「張り子の虎」の主な産地とは

「張り子の虎」は、香川県と島根県が主な産地として有名です。作られた地域や職人によって一つ一つ表情が異なるのも郷土玩具の魅力。さっそく地域ごとの特色を見ていきましょう。

(c)Shutterstock.com

1:香川県

「張り子の虎」は、香川県の西讃(せいさん)地方に古くから伝わる伝統工芸品。昔ながらの原材料である和紙を使い、一つずつ手作りされています。サイズは15cmから1mほどと幅広く、大きいものは子どもがまたがってもびくともしないほど頑丈に作られているそう。置き物以外にも、ストラップやキーホルダーを販売しているお店もあるようです。

2:島根県出雲地方

出雲地方の「張り子の虎」は、大きくS字に曲がった尻尾に、お尻を突き出した姿がダイナミック。加えて口を開けたひょうきんな表情が特徴だとか。ひげはシュロなどの植物を使い、牙もしっかりと埋め込まれており細部までリアルに作られています。

出雲地方でも「張り子の虎」は、病魔退散や武運長久を願い、男児が生まれた家への贈答品や、正月飾りとして愛用されてきたそう。昭和37年に寅年の年賀切手のデザインとして採用されたことから、全国へ広まったと言われています。

「張り子の虎」の作り方とは?

「張り子の虎」は、地域や工房によって製作方法が若干異なります。ここでは、伝統的な「張り子の虎」の作り方を紹介しましょう。

まず、木型に和紙を貼り重ねて、形を作っていきます。「張り子の虎」は首振り式で、首と胴体、脚などのパーツが分かれているため、それぞれに和紙を張っていきます。和紙が乾燥したら木型を外し、胴体と脚を組み合わせます。

次に、和紙の上に胡粉(ごふん)を塗っていきます。胡粉とは、貝殻を粉砕してパウダー状にしたもの。接着剤の役目をする膠(にかわ)と混ぜて使用します。胡粉を塗った「張り子の虎」は真っ白になり、コーティングされたことで強度が増します。

最後に、黄色い顔料で顔と胴体を色付けして、虎の模様を刷毛や筆を使って描いたら完成です。全国には、「張り子の虎」の絵付け体験を行なっている工房もあるため、気になる方は調べてみてはいかがでしょうか?

「張り子の虎」ということわざも

(c)Shutterstock.com

実は、本来縁起物としていい意味の込められている「張り子の虎」ですが、ことわざとして使用する場合にはネガティブな意味になるのです。

「張り子の虎」がゆらゆらと首を振る姿から、転じて「首を振る癖がある人や、主体性がなくうなずくだけの人のたとえ」として用いられるようになりました。

また、張り子は和紙を貼った後に型を抜き取るため、中が空洞であることが特徴です。そのため、「張り子の虎」も見かけは立派な虎ですが、その中は空っぽであることから、「虚勢を張っている人」や「見掛け倒しの人」のたとえとしても使われます。基本的に、人を嘲ったり馬鹿にしたりするときに使われる表現なので、使う機会は少ないでしょう。

例文1:私の弟は張子の虎のように、うんうんと何度もうなづく癖がある。
例文2:企画会議で全く意見を言わない彼は、まるで張り子の虎のようだ。
例文3:偉そうなことを言うくせに自分からは動かないなんて、所詮張り子の虎だよ。
例文4:彼にデートプランを伝えてみても、まるで張り子の虎なので、結局全部私が決めなければならない。

最後に

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江戸時代から作られてきた郷土玩具「張り子の虎」。我が子に「虎のように強くたくましく育ってほしい」という願いを込めて、飾る風習があったようです。一時期下火だった郷土玩具ですが、レトロで素朴な風合いが、再び注目を集めはじめています。

張り子は値段も比較的安く持ち運びやすいので、インテリアとして飾るのもおすすめです。興味のある方は、その年の干支の郷土玩具を手に入れてみてはいかがでしょうか。

TOP画像/(c)Shutterstock.com

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