「間食はよくない」という決めつけが、効率を下げる
忙しすぎて食事を摂る時間もない。仕事や勉強に集中していたら、昼食を摂るのを忘れてしまった。朝は時間がなくて面倒くさいから食べない……。いろいろな理由から食事を抜くことがありますが、それが朝食でも、昼食でも、夕食でも、空腹の時間が長くなるのは脳にとっていいことではありません。
まず脳へのエネルギー供給が滞り、記憶の原料となる脳グリコーゲンも欠乏し、イライラするアドレナリンも放出されるため、長時間集中することが困難になってきます。脳のパフォーマンスを維持したいなら1日3食が基本です。
といっても、朝食、昼食、夕食を毎日同じ時間に摂れるとは限りません。打ち合わせが長引いたり区切りがいいところまでがんばったりしていると、食事の時間がずれることがあります。特に夕食は、その日の状況によって遅くなってしまうこともあるのではないでしょうか。いつもの夕食時間が昼食を摂ってから8時間後、9時間後という方もいるかもしれません。そういうときに摂りたいのが「間食」です。
「間食」を勧める理由とは?
いつも夕食の時間が21時半ごろになるという、時間栄養学の第一人者・早稲田大学の柴田重信教授がこのような実験を行いました。
1. 間食を摂らない
2. ようかんを17時半ごろに食べる
3. ようかんを夕食後に食べる
皆さんは、1〜3のどれが最も血糖値によかったと思いますか?
結果は…
1. 間食を摂らない → 夕食で一気に血糖値が上がる
2. ようかんを17時半ごろに食べる → 血糖値が抑えられる
3. ようかんを夕食後に食べる → さらに血糖値が上がり、就寝前まで続く
[1]は先ほど述べたように空腹時間が長くなっているので夕食を摂ると血糖値が上昇。[3]は夕食後にさらに糖質を摂るため血糖値が上がります。しかし食前にようかんを間食したグループ[2]は血糖値が抑えられたのです。ようかんを間食しても夕食後も血糖値が上がりにくいのは「セカンドミール効果」と呼ばれています。
セカンドミール効果とは、GIの提唱であるジェンキンス博士が発表した概念で、最初に摂る食事(ファーストミール)が次に摂る食事(セカンドミール)の後の血糖値にも影響を及ぼし、血糖値の急上昇を抑制するというものです。特に豆類など食物繊維を多く含む食品を最初に摂ると、次の食事の血糖値が、そうでない場合に比べて下がることが報告されています。
例えば、朝9時に大豆焼き菓子を食べる、米せんべいを食べる、水を飲む(何も食べない)の3つのグループに分け、それぞれ3時間後の12時に同じことをしてもらいました。すると、大豆菓子を食べたグループだけ食後の血糖値が約50%も下がったのです。
仕事や勉強の間食、夜食に、高カカオチョコレートとナッツがおすすめ
朝食と昼食の間は4〜5時間くらいになりますが、昼食と夕食との間は6〜7時間くらい、場合によってはもっと開くことがあると思います。そんなときは、空腹を我慢せずに間食を摂りましょう。おすすめは高カカオチョコレートとナッツ。どちらも低GI食品です。
高カカオチョコレートとは、一般的にカカオ分が70%以上のチョコレートのことを指します。チョコレートは血糖値が上がりそうなイメージがありますが、実は主原料のカカオには食物繊維が豊富です。そのため高カカオチョコレートは低GI食品になります。また、ナッツ類にはアーモンドやカシューナッツ、くるみなどがありますが、どれも糖質が少なく食物繊維が多いため、GI値は低くなります。
高カカオチョコレートを間食や夜食におすすめしたのは、脳が喜ぶだけでなく健康効果も高いからです。その理由はやはりカカオポリフェノール。ポリフェノールの含有量は、多いといわれる赤ワインの実に16倍以上ある高カカオチョコレートもあるほどです。カカオポリフェノールには抗酸化作用もあるので、悪玉コレステロールの酸化を抑制することも考えられます。もちろん高カカオチョコレートは低GI食品ですから、食後高血糖から始まる肥満やメタボリックシンドローム、糖尿病などのリスクを遠ざけることになります。
脳にも体にもいい高カカオチョコレートですが、残念な点が1つだけあります。それは、カカオポリフェノールは長時間体内にとどめておけないことです。高カカオチョコレートを食べてから2時間後には血中濃度がピークに達し、少しずつ体の外に排出されて、24時間後にほとんどなくなります。つまり、脳や体にいいからといって一度にたくさん食べてもその効果を得られないうちにどんどん排出されてしまうのです
私の高カカオチョコレートのおすすめの食べ方は、ちょこっと食べ。高カカオチョコレートをそのまま少しずつ食べるのもいいですし、豆乳などに溶かして食べるのもいいでしょう。砕いたりスライスしたりしてヨーグルトにかけて食べるのもいいかもしれません。1日の総摂取量の目安は25g。これを守りながら、食べたいときに食べて、脳も体も健康になりましょう。
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もっと詳しく知りたいかたは、ぜひ脳科学者・西 剛志さんの著書『低GI食 脳にいい最強の食事術』をチェックしてみてください。
『低GI食 脳にいい最強の食事術』(アスコム)
著/西 剛志
価格:1,430円(税込)