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2021.05.14

ワクチンって、コロナ禍を乗り切る救世主? 気になる安全性等を専門家に教えてもらいました!

短期間で開発された、新型コロナウイルス対策のワクチン。ずばり安全性は大丈夫? ウイルス免疫学者にお話を伺いました!

ワクチンって、コロナ禍を乗り切る救世主なの?

ごく短期間で開発されたけれど、安全性は問題ない?「ワクチンを打った人同士なら、マスクなしで会っていい」はホント? 気になるギモンについて、ウイルス免疫学者・峰 宗太郎さんに教えてもらいました!

ウイルス免疫学者 峰 宗太郎(みね・そうたろう)さん
1981年生まれ。医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。東京大学大学院、国立感染症研究所などを経て、現在は米国立研究機関博士研究員。著書『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』(日経BP)のほか、SNSやブログでも医療情報を発信。

接種開始から約4ヶ月。実証されつつある安全性

Oggi編集部(以下Oggi) 新型コロナウイルスが見つかってから約1年でワクチンの接種が始まりました。世界では12月から、日本でも2月に開始されましたが、通常ワクチンは長年かけて開発されると聞きます。ズバリ、新型コロナウイルスワクチンは安全なんでしょうか?

峰さん(以下敬称略) 現在接種されているのは、人間に対して初めて承認された、新しい種類のワクチンです。とはいえ、その技術自体は20年ほど前から研究されていて成熟しつつありました。かつてワクチンが開発されていた感染症〝SARS〟や〝MERS〟に新型コロナウイルスがそっくりだったこともあり、初動が早かったですね。

Oggi そんな経緯が…。

 接種開始前は慎重な見方もありましたが、4月上旬時点で全世界で約7億回接種されていて、感染だけではなく発症や重症化を予防する効果についても、非常に優秀なワクチンだと実証されています。ワクチン接種をした人が7〜8割を超えると、未接種の人も感染しにくくなる、〝集団免疫〟を獲得するという目的もありますが、その検証はもう少し時間がかかるかもしれません。いずれにせよ、みなさんも打てる時期が来たら、ぜひ打ってほしいです。

Oggi 自分のためだけではないんですね。峰さんもすでに接種されたそうですが、腕に垂直に刺す筋肉注射で、痛そう(苦笑)!

 僕はアメリカに住んでいて、モデルナ社のワクチンを接種しました。日本で接種されているファイザー社と同じ種類のものです。接種時の痛みはほとんど感じませんでしたよ。ただ、1回目の接種後3〜4日は注射した部分が筋肉痛のようになり、2回目の接種翌日は全身怠感があって休み休み仕事をするような感じになりました。3日目にはすっかりよくなりましたが、同じ職場の人が、みんな同じ日に接種するのは、避けたほうがいいかもしれません。

Oggi 副作用ですね?

 そう、ワクチンの場合は〝副反応〟と呼びます。どのワクチンでも多かれ少なかれあるものです。

Oggi アナフィラキシー… でしたっけ、ひどい副反応の例などもあるようですが…?

 ごくまれにありますが、接種後30分以内に発症するので、しばらくその場で待機して様子を観察していれば、基本的にきちんと対応できます。

Oggi たとえば花粉症やアトピー、喘息や食べ物のアレルギーなどがある人でも問題はないんでしょうか?

 大丈夫です。ただ、これまでに何かしらの原因でアナフィラキシーを起こしたことがあってエピペンという注射器を持ち歩いている人は接種後にしっかり観察を。また〝PEG〟(ポリエチレングリコール)と呼ばれる成分にアレルギーを起こしたことがあれば接種を控えたほうがいいですが、日本人でPEGアレルギーと診断されている人はまずいないでしょう。

長い歴史をもつワクチンの最先端の技術とは?

Oggi ワクチンって、治療に使う薬とは違うんですよね?

 ワクチンは感染前に使い、ウイルスや細菌といった特定の病原体に対する〝免疫〟を体につけさせるためのもの。体にはさまざまなパターンの〝抗体〟と呼ばれるタンパク質が用意されていて、パターンに合う病原体が体内に侵入すると、即座に反撃する仕組みがあります。ただ、病原体が初めて侵入するときは反応が鈍くて反撃が間に合わない。でも、人間には一度感染した病原体を記憶する〝免疫系〟の細胞があって、2回目以降は準備万端の状態で素早く撃退できるんです。実はギリシャ時代以前から、感染症に一度かかると二度目はかからないことが知られていましたが、それを人為的に起こせないか、と開発されたのがワクチンです。いざというときに備えて防災訓練をしておこう、と。

Oggi なるほど…。

 18世紀まで天然痘という感染症に対しては、感染した人の皮膚にできる膿を取って別の人に接種する、という方法がすでに行われていました。でもこれはなかなかリスクが高くて、重症化したり、亡くなったりしてしまう場合も。そこでイギリスのエドワード・ジェンナーという医師が、天然痘によく似た牛の病気で、人間にはあまり悪さをしない〝牛痘〟の膿を人間に接種し、天然痘の感染を防ぐことに成功しました。

Oggi ワクチンの始まり、ということですね。

 はい。その後さまざまなワクチンが開発されて、病原体を弱毒化して接種することで感染を防ぐ「生ワクチン」が開発されました。そのうち、「免疫系を正しく刺激できれば、ワクチンは〝生きた〟病原体でなくていい」ということがわかり、病原体を殺した「不活化ワクチン」や免疫系を刺激する成分だけを注入する「成分ワクチン」などが広く使われてきました。

Oggi 新型コロナワクチンはそれらとは違うんですね。

 はい。従来タイプのワクチンも開発中ですが、接種が始まっているのは「mRNAワクチン」や「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれるもの。体にウイルスだと勘違いさせるタンパク質の設計図を遺伝子に書き込み、体に注入して免疫反応を引き起こします。これまで工場でつくっていた病原体に似た成分を、体内でつくるというわけです。

Oggi どうして、そんなややこしいことをするんですか?

 製造が比較的簡単で、管理しやすく低コスト、量産にも向いているんです。体内に入れると数日から10日程度で分解され、染色体に組み込まれることもないので、長期的に副反応などのリスクも起こらないと考えられています。

Oggi それほど心配することはなさそうですね。今は日本ではアメリカの輸入ワクチンを使用していますが、今後、国産ワクチンも登場するんでしょうか?

 はい。mRNAワクチンのほか各種ワクチンが開発中です。ワクチンの効果持続期間はまだわかっていませんが、再度接種が必要になったとき、また海外のワクチンを買いあさらないといけないのかと考えると、国策上も問題ですしね…。

Oggi ちなみに発症後の治療薬の開発も進んでいるんですか?

 苦痛を多少和らげる薬はあっても、ウイルスをバシッと排除したり、重症化率を下げたりする特効薬はなく、今後もあまり期待できません。味覚・嗅覚障害や息苦しさなどの後遺症に苦しむ方もいらっしゃいます。「若いから重症化しない」などと思わず、やはり感染しないのが一番だと、肝に銘じてください。

ワクチンさえ接種すれば〝ふつうの生活〟は戻る?

Oggi ワクチン接種が進むのと同時に、変異ウイルスへの感染も拡大していますよね。今のワクチンは効くんですか?

 イギリスで見つかった変異ウイルスには、ファイザー社のワクチンがよく効きます。〝南アフリカ型〟や〝ブラジル型〟には多少効きにくくなる可能性もありますが、まったく効かないわけではありません。変異ウイルスは危険だと、あおられすぎな気はしますね。

Oggi そうなんですか…?

 突拍子もない噂がネットで拡散されることもありますし、〝専門家〟と名乗る多くの人がいろんなことを言うので、不安になってしまうかもしれません。でも、命にかかわる情報ですから、簡単に鵜吞みにしてはダメ。必ず複数の情報源を当たって、それが論文やエビデンス(化学的根拠)に基づいている情報なのか、同意見の専門家が多くいるか、しっかり精査してください。SNSやネットニュースで流れてくる断片的な情報は、遮断してしまうのもひとつの手だと思いますよ。

Oggi ワクチン接種が進んだら、コロナ以前のような生活に戻れるでしょうか?

 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は「ワクチン接種をしてしっかり免疫がついた人同士は、屋内でマスクを外して会ってもよい」という指針を発表しました。ただ、公共の場所では引き続き、3密を避ける、マスク・手洗いをする、といった基本的な感染症予防策を続ける必要がありますし、僕も続けていきます。出口が見えるまで、もうひと踏ん張りですよ!

ワクチンについて知っておきたい、4つのPOINT

1|アナフィラキシー

発疹や粘膜の腫れが急速に表れ、血圧低下や意識障害を伴うこともある重いアレルギー反応。アドレナリン注射で治療する。

その他の副反応全般については「新型コロナワクチンによる接種部位の痛みや腫れは8~9割、頭痛は5~6割の人に見られるという報告が」(峰さん)

2|エドワード・ジェンナー

1796年に使用人の息子に牛痘を、6週間後に天然痘を接種。天然痘に感染しない=予防できることを証明して〝近代免疫学の父〟と呼ばれるように。ワクチンはその後も改良され、1980年にはWHOが天然痘根絶を宣言。

「人類がウイルスを排除した唯一の例になりました」(峰さん)

3|国産ワクチン

いずれもまだ承認されていないが、第一三共のmRNAワクチン、塩野義製薬の成分ワクチンなどが開発中。

「VLPセラピューティクス・ジャパンという製薬ベンチャーが手がけている、mRNAワクチンのさらに先を行くテクノロジーを使った〝レプリコンワクチン〟にも期待しています」(峰さん)

4|情報源

「内閣府や厚生労働省など公的なサイトの情報は、特定の利害関係がなく、複数の専門家の目を通っているという意味で信頼性が高いです。ただしかなり見にくい(苦笑)。僕も発起人のひとりである『こびナビ』というサイトのほか、医師が立ち上げた『コロワくんサポーターズ』といった団体など、複数の情報源をチェックしてください」(峰さん)

●掲載している情報は2021年4月8日現在のものです。

2021年Oggi6月号「Oggi大学」より
イラスト/八重樫王明 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部

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