男性デスクもイチオシ! 2017年最優秀ドラマのすごい演技
韓国の映画やドラマには、骨太の構成と演技で、圧倒されるほどの見ごたえがあるものが少なくありません。2018年百想芸術大賞を受賞した『秘密の森』もそういった作品のひとつです。韓流ナビゲーターの田代親世さんが「韓国では、ひとつのブランドといえるほど評価されている、名優チョ・スンウさんの演技をぜひ体験してみてください」と紹介してくれました。
感情を持たない検察官が、ハメられて誤認逮捕を
『秘密の森』は、感情を持たない検察官が熱血刑事と組んで権力に向かっていくという、異色の犯罪ミステリーです。
主人公の検察官ファン・シモク(チョ・スンウ)は感情を持たない男。脳が発達しすぎて、ちょっとした音も苦痛を感じてしまうため、治療のために少年時代に手術を受けました。その後遺症で、感情が希薄になってしまったという設定です。
無感動なので不愛想。理性だけで行動する検察官が、ある殺人事件に居合わせて犯人を逮捕をします。しかし、逮捕したのは、真犯人ではない人物でした。自分がはめられたことに気付いたシモクの前に現れたのが、ぺ・ドゥナ演じる正義感にあふれる熱血漢の女性刑事ハン・ヨジン。検察と警察という立場が違う二人が、タッグを組んで、事件の真相に迫っていきます。
タイトルに“秘密の森“とあるように、森のような組織の奥に足を踏み入れていくと、驚かされ、やるせなさを覚えることばかりが現れます。そしてラストには、今まで見えていたものが、がらりと違って見える、というドラマです。
薄皮をはぐような微妙な演技
検察官役チョ・スンウさんの演技が素晴らしい。感情がない淡々とした主人公が、熱血漢の女性刑事に触発されて、薄皮をはぐように人間らしい感情が表へ出てきます。息詰まるような切迫感の中での一瞬の笑顔など、視聴者が少しほっとさせられる人間臭い一面も見れたりする。そのさじ加減が、なんとも絶妙なんですよね。
繊細な演技で、観る者を共感させていきます。さすが、演技巧者として名高いチョ・スンウさんだと思います。こんな難しい役を演じられる人は、なかなかいないでしょう。
2017年の百想芸術大賞で、『秘密の森』は最も素晴らしい作品だったとして大賞に選ばれ、チョ・スンウさんが最優秀演技賞を受賞しています。
舞台を観に行くと双眼鏡が手放せない
チョ・スンウさんは名優揃いの韓国ミュージカルのトップスターでもあります。
ステージを観に行くと、細かい仕草で感情を表すのがすごいんです。そのひとつひとつを読んでいくのが面白くて、チョ・スンウさんを目で追っていたくなります。だから、双眼鏡がずっと手放せません。
人気作『ジキル&ハイド』で幕があいて、チョ・スンウさんが父の病床に立っているだけで、無念な気持ち、父への愛情、決意などがじわじわと伝わってくるんです。舞台を何度か観ると、ストーリーがわかるだけに、チョ・スンウさんがどう解釈してどう作っていっているかに、いつもなるほどーと感心させられて、またリピートしてしまいます。
舞台でも映画でもドラマでも、どこのジャンルに行っても「あのチョ・スンウ」と評価されているブランドです。
表情豊かな『馬医』や『炎のように蝶のように』も
チョ・スンウさんが、『秘密の森』の次に出た『ライフ』も表情を動かさない中で、人間味を感じさせるほのか具合がいいというドラマでした。
『馬医』は、動物のお医者さん役だけに、動物や愛する女性に対したときの笑顔がすごくよかったですね。相好をくずした笑顔にきゅんときちゃう。表情のない『秘密の森』を観たあとは、表情豊かな役どころを演じているのを見ていただきたいですね。
映画は、自閉症の主人公を演じた『マラソン』(2005)が、彼の評価を高めたものではありますが。私は、チョ・スンウさんの「俺を見ろ」光線がさく裂している『炎のように蝶のように』(2009)が大好きです。舞台は19世紀朝鮮。皇后をひそかに慕う、護衛武士の役を演じています。切ないシーンの数々から殺陣のアクションまで、魅力が詰まっているので、萌え萌えしていただきたいです。
自然体でさらっと演じているように見えて、実は超計算している。韓国では熱演が評価されがちですが、彼はそうでないタイプです。そんなところも日本人好みかもしれませんね。
絶望と希望がないまぜになった人間の複雑さ
とにかく『秘密の森』は、巧みで緻密に作られていて、すごく面白い作品です。
人間が誘惑に弱い生き物であることを、しっかり見せていく。でも、それを許せない良心も併せ持っているんだなあと感じさせます。絶望と希望がないまぜになったところも、すごくうまいんですよ。人間の複雑さをよく出している。いろんなことを考えさせられてしまいます。
Oggi編集部の男性デスクもハマった、この作品は男性が観てもかなりハマる作品なので、年末年始にパートナーと一緒に観るのにも最適な作品かもしれませんね! この秀作を体験して、韓流ドラマという“秘密の森”に分け入っていただきたいと思います。
TOP画像/(c)STUDIO DRAGON CORPORATION
『秘密の森』U-NEXTにて配信中
取材・文/新田由紀子
田代親世/たしろ ちかよ
韓流ナビゲーター。テレビ・雑誌などで、韓流ドラマを紹介している。会員制韓流コミュニティ「韓流ライフナビ」を主宰。