『愛の不時着』以降、韓流ドラマにハマり続けている人も増えていますが、主役のライバルとなる「2番手俳優」というチェックポイントにはお気づきでしょうか。韓流のハマりメカニズムを知り尽くした韓流ナビゲーターの田代親世さんに、主役そっちのけで見入らせてしまう、“2番手沼”がふかーい3本のドラマを紹介してもらいました。
美男子ばかりの『花郎(ファラン)』の中の孤独な王
なんといっても美男子がたくさん出てくるのが、このドラマのおいしいところでしょう。舞台は6世紀新羅時代。文武両道の美男子ばかりを集めた王の親衛隊の組織「花郎(ファラン)」が作られます。そこに所属する若者たちの成長を描いて行く青春時代劇です。
◆顔を知られないままに生きてきた王
主人公は、『梨泰院クラス』で日本でも大人気となったパク・ソジュンが演じる、孤児として育った男、ムミョンです。彼は無残に殺された親友の敵討ちのために、親友の名を名乗って花郎の一員となります。
そして、注目の2番手は、権力争いの中で身を守るために、誰にも顔を知られないまま生きてこなくてはならなかった、パク・ヒョンシク演じるチヌン王です。彼も皇太后である母親への反抗心から身分を隠して花郎になりました。
この対照的な二人が、一人の女性アロを愛して敵対しながら、友情を育くんでもいく。その中で国を治めるというのはどういうことなのか、王とはどうあるべきかということに目覚めていくという物語なんです。
◆BTSのVも、華のある弟キャラで話題に
2人以外にも花郎はイケメンぞろいで、注目を集めたのは、K-POPからの2人。SHINEEのミンホは気さくでコミカルな役どころ、かっこいいんだけど笑えるキャラクターでした。
話題になったのはBTSのVですね。なにしろ華がありました。きりりとした男らしい顔。かわいい弟キャラながら、異母兄に対して罪悪感を抱く嫡男。無邪気なようでいて繊細というおいしい役でした。
◆時代劇の扮装でカッコよさ3割増し
そんな花美男(コミナム)が並んだなかでも、パク・ヒョンシクのあまりのカッコよさに「ヒョンシクーなんてかっこいいの!」と叫んじゃいました。
孤独に憂う美貌と冷めた口調。寂しげなまなざし。時代劇の扮装でカッコよさが3割増しになる。長い前髪、素晴らしい剣さばき…。
◆パク・ソジュンVSパク・ヒョンシクにキュン♡
野生派パク・ソジュンVSノーブルな孤独な影を背負ったパク・ヒョンシク。王権に対して復讐心を持った野性の男と身分を隠している王。観ている側もどっちがいいか二派にわかれます。
ムミョンは義理の妹への恋を切なく押し隠しているし、王様は孤独の中でヒロインに癒しを求めているし。どちらにも魅力があって、同じ女性に対して愛を求めて行くところに胸キュンしてしまいます。
『恋のスケッチ~応答せよ1988~』の寡黙で武骨な幼馴染
『愛の不時着』が人気を博した理由のひとつに、北朝鮮の村で繰り広げられる、なぜか懐かしいシーンの新鮮さがありました。この『恋のスケッチ~応答せよ1988~』にも同様の魅力があります。
その昔の日本にもあった、ご近所どうし助け合って、喜びも悲しみも共にして暮らしていくあたたかさです。
◆こんな人間関係があったらなあというご近所
ドラマは、同じ町内で育ってきた幼馴染の男女5人組が成長していく姿が描かれていきます。こんな人間関係があったらいいなあという、今やファンタジーの世界といえるかもしれません。
舞台となっている1988年は、ソウルでオリンピックが行われて高度成長が始まった記念すべき年で、韓国の人たちに特別な感情を持たれています。1964年の東京オリンピックの頃の世相が、当時まだ生まれていない日本人にも、なぜかノスタルジーを感じさせるのと同じことです。
◆油断していると大泣きさせられる人気シリーズ
韓国で国民的なレトロブームを巻き起こし、日本にもファンの多い『応答せよ』シリーズの3作目になります。
バラエティー番組の作家さんが書いているから、クスッとさせられるユーモアがふんだんに盛り込まれ、泣き笑いが繰り返される。油断していると意外な場面で大泣きさせられます。最初は明るく能天気に見えているんだけど、それぞれに事情を抱えていることもわかって、回を追うごとに泣ける度合いが高まっていきます。
ただでさえ情が薄れている中、ソーシャルディスタンスを置かなくてはならない今、せめてドラマの中では感じたい世界です。
◆世話を焼かれる天才棋士と世話を焼くしっかり者と
その幼馴染軍団の中で、紅一点のソン・ドクソン(ヘリ)をめぐって恋の争いがくりひろげられていきます。相手のことがわかるだけに、恋愛と友情の間でゆれる男子二人から目が離せません。
一人は天才棋士のチェ・テク(パク・ボゴム)、囲碁以外の生活ではぼーっとしていて、家電製品も使えない、ちゃんと服もきられないようなダメダメ君。母親を早くなくした彼を、ご近所のみんなが世話を焼いて守っています。ところがふとした瞬間に本気を出して、ヒロインに向かっていく。
もう一方は、しっかりしていて世話を焼くタイプのキム・ジョンファン(リュ・ジュンヨル)。クールで寡黙で武骨なんだけど、配慮もある男。
◆あなたはどっち派? 韓国でも二派に分かれた
このドラマもあなたはどっち派ですか? 論争になり、一体どちらの恋が実るか、韓国でもそれぞれのひいきの二派に分かれて盛り上がりました。
私は、ビジュアルはパク・ボゴムのほうが好みですが、リュ・ジュンヨル演じるジョンファンほうに肩入れして観ていました。男は黙って行動するっていう切ないあたりが。武骨でうまく立ち回れないところに歯がゆさを覚えながら、愛着を感じてしまいます。
決して美形ではないんですが、演技がよかったのだと思います。表情も読みにくいような細い目なんだけど伝わってくる。演技が評価されて、彼はこの『応答せよ』2番手をきっかけに、ドラマに主演したり映画でも活躍していくことになりました。
『雲が描いた月明かり』ボゴムブームの一方で、輝いた美貌
リュ・ジュンヨルも、『応答せよ1988』で人気を博しましたが、天才棋士役だったパク・ボゴムは、その次に出演した『雲が描いた月明かり』で、大ブームを巻き起こします。
◆男装のヒロインと皇太子と家臣と
男装して宮中に上がったヒロインと、パク・ボゴム演じる主人公の皇太子イ・ヨンが織りなす、ファンタジー青春ラブロマンス。朝廷で権力争いが繰り広げられる中、主人公はダメ王子を装っています。そこにヒロインが、去勢した男性として朝廷に仕える内官に扮して朝廷に入ってきます。
そのヒロインをめぐって、皇太子と“2番手”である家臣のキム・ユンソン(ジニョン)が争います。少女マンガチックで、毎回1話に1回はヒロインが危機に陥り、それを皇太子とユンソンが助けていくキラキラ系時代劇です。
◆妖しくも寂しいまなざし
この作品は、主演パク・ボゴムの魅力を見せるドラマだったんです。ところが、それに相対する2番手、貴族の御曹司に扮するジニョンが、また素晴らしかったのです。なんといっても美貌のつやっぽかったこと!
皇太子とは幼馴染みとして育ったのに、親同士の権力争いで疎遠にならざるを得ない。もどかしさもあり、ヒロインに好意を寄せながらも報われない感。あの妖しくも寂しいまなざしに、薄く引き締めたくちびるに、はかなさと切なさを漂わせていて、とてもよかった。ボゴムが太陽だとするならば月、青白く輝く月のような感じでした。
アイドルグループB1A4のリーダーだった彼は、このドラマで高評価を得て、俳優としてブレイクしました。
◆主人公より肩入れしたくなる二番手の存在で、ドラマが盛り上がる
二番手が魅力的だとドラマは盛り上がるんですよね。観てるほうが、ヒロインに向かって、こっちがいいじゃん! と言ってあげたくなるぐらいだとドラマの人気も出る。男二人というのが王道なので。ぱっと見ただけではどっちと結ばれるかわからない。
単なる当て馬でなく、ちゃんと魅力を持ったキャラクターに描かれている2番手は、主人公よりも肩入れしたくなって、ドラマの魅力をアップさせるんですよね。
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取材・文/新田由紀子
田代親世/たしろ ちかよ
韓流ナビゲーター。テレビ・雑誌などで、韓流ドラマを紹介している。会員制韓流コミュニティ「韓流ライフナビ」を主宰。