【妊活基礎知識】排卵誘発剤の種類とちがい
不妊治療には様々な種類がありますが、その中で使用される排卵誘発剤には、いくつかの種類が展開されています。
ここでは排卵誘発剤がどのようなものなのか、種類別の特徴や違いについてお伝えしていきます。
排卵誘発剤は、排卵のある人でも妊娠率上昇にも期待できるといわれているので、ぜひ今後の不妊治療の知識に、お役立てくださいね。
排卵誘発剤とはどんなもの?
排卵誘発剤とは、主にタイミング療法や人工授精の際に投与されるもので、
・排卵障害
・遅延排卵
・卵胞発育不全
・黄体機能不全
などの症状に用いられる薬のひとつです。
種類は、内服薬と注射薬があり、症状によりどちらかを投与されます。また、排卵障害のない方でも妊娠率を上げるために用いられる場合もあります。
排卵誘発剤にはどんな種類があるの?
排卵誘発剤の種類は大きく2つに分類され、卵子を育てるための薬と排卵を促す薬があります。ここでは排卵誘発剤の種類とそれぞれの違いについて参考にしてみましょう。
◆シクロフェニル製剤
内服薬の排卵誘発剤シクロフェニル製剤(製品名セキソビット)は、脳下垂体に働きかけ、黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンの分泌を促します。
シクロフェニル製剤は穏やかな作用なので、排卵誘発剤に良くある副作用の心配が少ないと言われています。
◆アロマターゼ阻害剤
乳がんの治療にも用いられることが多いアロマターゼ阻害剤は、排卵障害の原因となるアロマターゼという酵素の発生を抑え、排卵の誘発にはたらきかけます。副作用は少ないと言われています。
また、ホルモンの投与を避けたい女性にも推奨されている排卵誘発剤のひとつです。
◆hMG/rFSH、rFSH
クリニックで受けられる注射薬のhMG/rFSHと、ペンタイプ自己注射のrFSHは、これまでにご紹介したシクロフェニルやアロマターゼ阻害剤よりも排卵を誘発させる作用が強力だと言われています。
未成熟卵が多い方や、排卵誘発剤の使用がはじめての女性にも推奨され、卵胞の状態を判断しやすい手軽さがあります。
また、hMG/rFSH・rFSHは排卵障害が重度であっても排卵が誘発する確率の改善が期待できます。使用量を調整すると、低刺激・中刺激・高刺激すべての排卵誘発剤の実施が可能になります。
◆GnRHアゴニスト製剤
GnRHアゴニスト製剤には、ロング法とショート法のふたつに分類され、
・ロング法の場合:採卵日のコントロールがしやすい
・ショート法の場合:使用期間が短く、ロング法よりも使用量が少ないためカラダへの負担も少ない
などのメリットがあります。
一方、ロング法での治療を受ける場合は、排卵誘発剤の使用量が多くなるため、その分の費用も高額になりやすく、ショート法での治療を受ける場合は、ホルモンの大量分泌で悪影響が出る可能性があるなど、それぞれにデメリットもあります。
◆GnRHアンタゴニスト製剤
不安定な排卵の状態を安定させ、排卵のリズムをコントロールする作用があります。GnRHアンタゴニスト製剤は、排卵障害をはじめ、さまざまな疾患の原因となるLHホルモンの分泌を抑制し、上質な卵子を成長させる効果が期待されています。
排卵のコントロールが可能になっていることで、採卵をする希望日の調整も手軽になります。
また、GnRHアンタゴニスト製剤は、他の排卵誘発剤で何らかの副作用があった女性でも、刺激のレベルを選べることで副作用のリスクを最小限に抑えることができると言われています。
~おわりに~
排卵誘発剤は、今妊活をしていない女性で、無排卵月経の疑いがある女性にも服用が可能となっています。排卵誘発剤を服用することでホルモンバランスが整い、卵子の成熟を高め、さらには生理周期が安定するメリットも期待できますよ。
排卵誘発剤のそれぞれの違いや作用を理解して、かかりつけの医師からのアドバイスを受けてみてくださいね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
医師 杉山力一
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
監修する女性向けアプリ「eggs LAB」では、独自ロジックにより、アプリでの問診で自身の情報を入力することで、これまでにない高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした「あなただけの/あなたのための/今欲しい情報」を発信中。