10月1日はピンクリボンの日。「病院嫌い」の女性が乳がんなったら?
乳がん月間(10月1日~31日)が始まりました。今年も10月1日には、各地でピンクリボンフェスティバルが行われ、多くの人が乳がんの知識を得たり、乳がんになる可能性を考えているのではないでしょうか。
そこで参考になるのは、乳がんサバイバーの体験談。どのようにして乳がんに気が付き、治療していったのでしょうか。美容家・當野 都由美(とうの つゆみ)さんのお話を伺いました。
▲CAP・當野 都由美(とうの つゆみ)/1962年広島市生まれ、美容家として数々の美容サロンをプロデュースするなど、多角的に活動。
彼女は、2016年、仕事が最も多忙かつ、ノリにノッている時期に、乳がんを発症。手術、乳房再建を経験しています。
◆30代で胸のしこりに気が付くも、20年近く放置していた
當野さんは病院が嫌いだったと言います。
「そのきっかけは、30代の頃。胸のしこりを発見して、病院に行ったら“これは乳腺ですよ”と言われてしまったのです。心配性な自分が恥ずかしかったこともあり、それから病院が嫌いになりました。以来、検診などは全然受けていなかったのです」
乳がんを発症したのは、54歳のとき。
「1、2年前から右胸にしこりのようなものがあると気づいていたのですが、“これも乳腺だろう”と思っていたのです。ずっと健康だったし、病院がホントに苦手だったのです。そのまま放置していたら、ある朝、右腕がうまく動かせなくなっていたのです」
「これって、脳梗塞かも」と思って慌てて近くの病院に駆け込んだとか。
「その病院には脳外科がなかったのですが、滅多に来ない病院に来たのだから、気になることは聞いておこうと思ったのです。先生に“胸にしこりもあるんです”と伝えたところ、たまたま専門の先生がいて、診てもらうことができました。念のために検査をしてもらい、後日結果を聞きに行ったら、“悪いやつみたいだ”と言われてしまったのです」
ずっと健康だった。だから、がんになるなんて思ってもいなかった… これは多くの女性に共通する考え方ではないでしょうか。
「かなりのショックでした。病気の可能性なんて全く考えていなかったので、衝撃的な出来事だったのですが、自分を切り替えて病と闘わなければ、生きることはできない。すぐに紹介を受けて、総合病院で再検査したところ、乳房切除が避けられないほど進行していたことがわかったのです」
すぐに、手術が決まる。乳房切除は、女性にとって、とてもショックな出来事です。
「ただ、今は、乳房再建という選択肢があります。今はこれが健康保険の適用になっています」
それまであった、自分の乳房がなくなる… それはいったいどういう感覚なのでしょうか。
「手術は全身麻酔で行われるので、全く意識はありません。でも、目が覚めて傷が落ち着いてきた頃に自分の右胸を見ると、大きな傷があり乳首もなくなっている。これは不思議な感覚でした。私の場合、リンパなどへの転移がないことがわかり、経過を観察しながら乳房を再建していくことになりました」
乳房の再建というのは、どのように行われるのでしょうか。
「私は、インプラントによる乳房再建術を受けました。これは、胸の中に風船のようなものを入れ、ここに少しずつ生理食塩水を注入し、周囲の皮膚が伸びるのを待ちます。その後、インプラントというシリコン製人工乳房を入れ、最後に乳首を再建するという手順でした」
再建が終わるまで、2年程度の時間を要しました。違和感などはなかったのでしょうか」
「現在の違和感はありません。私は、右胸を切除したのですが、その後、左の乳頭を切除して右に移植し、乳輪を刺青で着色する術式を選びました。見た目にも、感覚も、元の胸と変わりません」
當野さんは、自分自身の経験を誰かのために役立てたいと、講演などの活動を積極的に行っている。
「私は、乳房切除後と再建後の上半身裸の写真を撮りました。そのときは、感覚的に“これを撮影するのは、きっと私にしかできない”と思ったからです。今、たくさんの乳がんの方の相談を受けています。また乳房を失うことが嫌で、手術をためらっている人が多数います。私は、乳房再建に保険が適用されることや、その技術がかなり高いことをお伝えしたいです」
不安を感じている人の要望を受けると、術前・術後の写真も紹介しているといいます。
「大切な人のために、生き抜くための行動を選んで、自分らしい人生を楽しんでほしい。そのために役に立てることはなんでもしたいと思っています」
當野さんからの、読者の方へメッセージをいただきました。
「まず“検査にはきちんと行ってください”ということにつきます。職場の定期検診の機会がないフリーランス、経営者、パート勤務、専業主婦の方などの多くは、私のように定期検診に行っていない人が多いと聞きます。
しかし、日本では乳がんの罹患率が増えているのです。早期発見できれば死亡率も低いので、定期的に検診やセルフチェックを行ってください」
ピンクリボンが街を席巻する10月、これを機に、「もしかしたら、私もなるかも」という気持ちで、検査を受けたり、セルフチェックを。それが豊かな人生につながっていくのです。
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