異国情緒あふれるタイのかき氷〈新人作家のかき氷探訪記〉
小説『氷と蜜』の著者、佐久そるんです。
かき氷が題材の『氷と蜜』には、数多くのかき氷のお店と、それを食べ歩く愛好家の人たちが登場します。たくさんのかき氷のなかには、異国の香りを感じるかき氷も。
艶のある赤い苺のシロップ、ぽりぽりっと心地よいローストココナッツ、クリームチーズの座布団の上には、ちょこんと苺が座っています。髪飾りのように差された揚げパンは、密かな人気を呼んでいるんですよ。
ここは、奈良にあるタイ料理のお店『RAhOTSU(ラホツ)』さんです。
◆奈良県奈良市|RAhOTSU(ラホツ)
可愛らしい象の人形や怪しげな仮面などが飾られ、異国情緒たっぷりだと思いませんか? 提供されるかき氷にも、タイ料理のエッセンスをふんだんに取り入れているんですよ。
通常、果物のシロップの下地としてよく使われているのは、ミルク・ヨーグルト・クリームチーズ(あるいはレアチーズ)のシロップでしょうか。ミルクシロップをかけた上に、苺のシロップをかけるという具合です。
けれど、こちらのお店では下地となるシロップにココナッツミルク・豆乳・杏仁のシロップが使われ、他店では味わえない魅惑のかき氷を作り出しています。
わたしがいただいたのは、マンゴーの果実がごろりと転がるかき氷。
堂々たる風貌に、ちょっとおじけづいてしまいます。ですが、まろやかなココナッツミルクの甘味でふくらんだマンゴーの旨味は、わたしたちを煌びやかな金色の世界にいざないます。
ほとばしる果汁、もっちりとした食感はトッピングのタイもち米、ココナッツミルクの甘味の奥から現れてくる塩味に、心は古都奈良を離れ、異国の王宮にトリップしていることでしょう。
使われる果物は、旬によってメロンや桃などに移り変わります。
もちろんシロップも、果物のおいしさを一番引き立てるものへ。おなかいっぱいですか? もう一品いかがでしょう。
わたしがみなさんに是非食べていただきたいと思うのは、コペチことココナッツペッパーチーズです。
ヒマラヤンピンクソルト、ペコリーノチーズ、ブラックペッパー、カイエンペッパー、フライドオニオンと、メニューの説明にはかき氷の材料とは思えない名前が並んでいますが、心配無用です。コペチに出合うことができたなら、勇気を持って注文してください。
鼻をむずむずっと刺激するペッパーの香り、ほのかにただようクセのあるチーズの香り、ぱくっとひと口食べてみれば、驚きの味わいが口の中に広がります。
チーズの塩気、フライドオニオンの香ばしさ、渾然一体となった味わいをまろやかなココナッツミルクが包み込んでくれるのです。
まるで、冷製スープをいただいているような。
酸味をともなったみずみずしい果物は、レモンからパイナップルやパッションフルーツと、こちらも旬のものに姿を変えてゆきます。古都で味わう異国の香り。刺激的な一杯を、どうぞめしあがれ。
【RAhOTSU(ラホツ)】
住所:奈良県奈良市高畑町1073-2
電話番号:0742-24-1180
定休日:月曜日(月曜祝日は火曜休)
営業時間:11:00〜18:00(時期により変動あり。SNSで事前に発信)
*かき氷はエアリザーブでの事前予約制(当日残席ある場合のみSNSにて発信)
佐久そるん
大阪生まれ、大阪育ち。5年ほど前から小説の執筆をはじめる。2019年『氷と蜜』が第1回日本おいしい小説大賞の最終候補に選ばれ、刊行に向け改稿をスタート。2020年6月、同作で作家デビュー。かき氷の魅力が詰まっていると『氷と蜜』は話題に!
甘いものに目がなく、まめに食べ歩く。パンケーキ、パフェと続いてここ3年はかき氷にハマっている。コロナ禍の自粛期間中は和洋菓子をお取り寄せしてお店を応援。現在は再開したかき氷店へ著書を持って行脚の日々。