お芋のやさしい甘味が満ちるかき氷〈新人作家のかき氷探訪記〉
小説『氷と蜜』の著者、佐久そるんです。
かき氷が題材の『氷と蜜』には、数多くのかき氷のお店と、それを食べ歩く愛好家の人たちが登場します。小説の中で主人公たちは電車にゆられて、いろいろなかき氷を食べにゆきました。少し遠出して食べにゆくのもいいものですよ。
阪急京都線の電車に乗って訪れたのは、阪急南茨木駅です。駅前は車も多いのですが、少し道を外れると緑豊かな街並みだとわかります。陽光に照らされた木々の間からのぞき見える古民家が、目的の場所。
まるで森の中の一軒家のようですね。褐色の金属プレートで微笑むのは、森の主でしょうか。
天井は高く、太い梁が渡され、落ち着いた色の土壁にはお芋の皮が塗り込まれています。店内にたちこめるのは、お芋の甘い匂い。
ご案内するのは「氷とお芋の専門店らんらん」さんです。
◆大阪茨木市|氷とお芋の専門店らんらん
お芋のスイーツで有名なお店ですが、かき氷も提供されています。なんといっても創業110余年の氷屋さんですから。
わたしがいただいたのは、旬の果物を使ったかき氷。この日は、パイナップルをふんだんに使ったかき氷でした。上にも中にも、みずみずしいパイナップルがごっろごろ。合わせたシロップは爽やかなレモンレアチーズです。
心地よい酸味が、食前酒のように食欲を刺激してくれます。本命は、なんといってもお芋のかき氷。
クリーミーなお芋の蜜は、紅はるかというお芋を一番おいしいときに焼き芋にして作られたもの。舌の上でとろけると、しっとりと心にまで染み渡るように、やさしい甘味が満ちてきます。
お芋の皮の香りを移した琥珀色のカラメルや、ふくよかな味わいの焼き塩を使って、味の変化も楽しんじゃいましょう。ときおり歯で噛んだゴマの香りが、ふわっと口に広がりますよ。
お芋って温かいイメージがありませんか?
それを冷たいかき氷でいただくのは、少し不思議な気分ですよね。けれど氷の中に秘められたお芋の餡を口にすると、胸の奥がなぜだかほっこりしちゃいます。
もうちょっと食べたいと思わせる量なのも、憎いですね。
さて、次はなにを食べましょう?
淡い黄色のアングレーズソースの上に、季節の果物をたくさん盛り付けたかき氷にしましょうか?
体が冷えたなら、蜜ぽてとやスイートポテトもいいですね。
え? 食べすぎですか?
おいしいかき氷を目の前にすると、ついつい我を忘れて食べてしまうんですよね。けれど蜜に使われているのは、旬を向かえた果物や、栄養たっぷりのお芋さんです。
じめじめとした蒸し暑さに負けないように、しっかり食べる日があってもいいですよね。暑気払いにおすすめの一杯、どうぞめしあがれ。
【氷とお芋の専門店らんらん】
住所:大阪府茨木市真砂1-7-25
電話番号:072-638-0473
定休日:水曜日
営業時間:10時~19時(なくなり次第終了)
HP
Instagram
佐久そるん
大阪生まれ、大阪育ち。5年ほど前から小説の執筆をはじめる。2019年『氷と蜜』が第1回日本おいしい小説大賞の最終候補に選ばれ、刊行に向け改稿をスタート。2020年6月、同作で作家デビュー。かき氷の魅力が詰まっていると『氷と蜜』は話題に!
甘いものに目がなく、まめに食べ歩く。パンケーキ、パフェと続いてここ3年はかき氷にハマっている。コロナ禍の自粛期間中は和洋菓子をお取り寄せしてお店を応援。現在は再開したかき氷店へ著書を持って行脚の日々。