「貴様/きさま」って尊敬語?
自分で使うことも使われることもほぼない「貴様」。ドラマや漫画で目にするくらいですよね。「貴様」って漢字だけ見ると、尊敬語と言われても違和感ない組み合わせですが、使われる場面を思い浮かべると、尊敬どころか粗暴な印象… 字面と用法がちぐはぐな理由を解説します!
◆その昔、「貴様」は尊敬語だった!
室町時代末期ごろから、「貴様」は「あなた様」という意味の尊敬語として、武家の書簡で用いられてきました。主に文書で用いられる言葉だったんですね。
江戸時代になり、武家だけでなく、庶民にも広まり、口頭語として使われるようになっていきました。それに伴い、尊敬の意味が少し薄まり、自分と同輩に対して敬意を表する言葉として用いられるようになったようです。
◆軍用語として定着
その後、「貴様」は軍用語として定着。当初は、自分と同輩や目下の者に対して親しみを込めた呼び方として使われていたようです。
一方で、軍の目上の人に対しては、「鶴田中佐」など、名字+階級で呼んでいました。そのため、「貴様」と呼ばれるのは部下のみ、つまり目下のものに使われ、転じて相手を見下げて呼ぶ時に使われるようになっていったのです。
戦時中は殺伐とした状況だったでしょうから、部下が叱責される場面も多かったことと思います。そのニュアンスが残り、現代の「貴様」の使われ方として定着したのではないでしょうか。
◆「貴様」を辞書で調べると…
「貴様」を辞書で調べてみるとこのようなことが書かれています。
1:男性が、親しい対等の者または目下の者に対して用いる。また、相手をののしる場合にも用いる。おまえ。
2:目上の相手に対して、尊敬の気持ちを含めて用いた語。貴殿。あなたさま。
と2つの意味が載っています(デジタル大辞泉より)。
意味としては、今でも尊敬を含む場合があることがわかりますが、やはりののしる場合に使うイメージが強い印象。特に目上の方を不快な気持ちにさせることになりかねませんので、これまで通り使わないのがベストですね。
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鶴田初芽
都内在住のOLライター。マナーインストラクターであり、実用マナー検定準一級や敬語力検定準一級など、ビジネスにおけるマナーや、マネーに関する資格(2級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融コンプライアンスオフィサー、マイナンバー保護オフィサー)などを保有。丁寧な暮らしに憧れ、断捨離修行中!