行ってよかった! 美術館「大塚国際美術館」とは?
昨年の紅白歌合戦で、米津玄師さんが歌った場所として一気に注目を浴びた「大塚国際美術館」。トリップアドバイザーでは「エクセレンス認証」を9年連続で受賞するなど、その名はすでに日本のみならず海外から訪れる方にも知られています。私もずっと行きたいと思っていて、やっと訪れることができました!
大塚国際美術館は一般的な美術館と違って、すべて原寸大に再現された「陶板名画」を展示する美術館です。本物じゃないの? と思うかもしれないのですが、ここでは陶板での再現だからこそできる展示方法をもち、再現度の高い名画が並べられていて、本当に圧倒されます。つい先日訪れた私の感動をレポートしたいと思います!
3つのユニークな展示方法
大塚国際美術館では1000点以上の作品が、すべて原寸大で展示されています。「複製」ではありますが、すべて現地の所有元に許可を得て、現地調査を行い、写真撮影をして、制作しているのだそう。特殊な技術で再現しているので、ポスターのようなのっぺりしたものではなく、筆遣い、油絵具の盛り上がりも忠実に再現されています。一見すると、原画との差がわかりません。
そしてその展示方法が、とってもユニークで素晴らしいものでした。
3つの展示方法とは…
◆環境展示
◆系統展示
◆テーマ展示
それぞれの感動ポイントを紹介したいと思います。
◆環境展示
古代遺跡や礼拝堂などの壁画がそのまま、環境空間ごと展示されています。展示というか、もはやその部屋・空間そのものを再現してしまった! という感じ。例えば、イタリアの「スクロヴェーニ礼拝堂」。壁一面の壁画まですべて忠実に再現して、大きさも原寸大。実際の礼拝堂は、保存のために15分しか見ることができないそうですが、ここは居放題! ゆっくり、じっくり細部まで鑑賞することができます。
同じくイタリアのポンペイにある「秘儀の間」。これももちろん原寸大。壁画の剥落具合も忠実に再現されています。床の模様も同様に再現してあるそう。この秘儀の間、現地は部屋の中に入る事はできません。でも大塚国際美術館なら、中に入って神秘的な雰囲気を味わうことができます。
そして、なんと… 優しくなら触れることも可能なんです! 陶板だから耐久性が強く、作品は触れても大丈夫との事。許可されているとはいえ、ドキドキします…!
米津玄師さんが歌った「システィーナ・ホール」(※webに写真掲載NGなので写真は載せられないのですが…)もとても荘厳で感動的。普段、美術館に足を運べば、企画展で原画がやってくることは少なからずありますが、礼拝堂の壁画など、移動不可能な作品を日本で味わうことができるなんて、本当に素晴らしい取り組みだと思います。
◆系統展示
大塚国際美術館では古代から現代に至るまでの作品が、時系列順に展示されています。それはまるで、美術史の教科書を最初のページからめくって、時代の流れをなぞりながらみているかのよう。
なんだかもう、数がものすごいです…! 5フロア、鑑賞ルート全長約4キロもあるそうで、その中にこれでもか! という程名画が並べられています。絵を見過ぎておなかいっぱい… となったのなんてルーヴル美術館以来!(笑) それくらいすごいボリュームがあります。
また、時代背景や絵のイメージに合わせて、照明の明るさも変えているのだそう。上の写真はダヴィット「皇帝ナポレオン一世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠」。薄暗い照明のもと、そこだけ光が当たったようなナポレオンとジョゼフィーヌがとても素敵。ちなみに、この絵が大塚国際美術館で額に入った作品としては最大。額縁が入り口から入りきらないので、建築段階で運び込んで先に中に入れてから建物を建てたとか。
これもすごくいいな、と思った展示もご紹介します。合計7点の花瓶の「ヒマワリ」に関する作品の展示を鑑賞しました。本来であれば、世界中に散り散りになっていたり、原画が失われていて、並べて観る事なんでできない作品を、一気に観ることができる。そうすることで、発見や気づきを得たり、作者の気持ちの変化などに思いをはせることも。これってすごいことじゃないでしょうか。なんだかものすごい贅沢なことをしている気持ちになりました。
ちなみに、このゴッホの7つの「ヒマワリ」コーナーではよい香りが… アルルをイメージした、「ヒマワリ」にちなんだ香りを演出しているそうなんです。「ヒマワリ」の黄色が映えるブルーの壁といい、展示のセンスが素敵だな、と思いました。
大人気のフェルメールも。世界各地の美術館で展示されているため、まとめてみることは困難ですが、ここだと一気に8点の作品を鑑賞可能。本当に夢みたい。そして発光するようなやわらかい光のタッチも、陶板で忠実に再現されていました。
最も感動したモネ「睡蓮」の屋外展示
これが観たかった! ネットで観ていましたが、実際に訪れて、もっと素敵でした。もともと「自然光の下で見てほしい」とモネが描いた作品。オリジナルを展示している、オランジュリー美術館では自然光がたっぷりと入る大きな白い部屋に展示されていて、それもとっても素敵なのですが、この屋外展示に勝るものはないのでは…! と思いました。外に絵を出せるなんて、これも陶板だから。日光も雨も、怖くないそうです。
本当に、これを考えた人天才。360度ぐるっと囲むように描かれた睡蓮が見事。オランジュリー美術館も部屋の真ん中に椅子があり、そこに座って見回しぼーっとするのがこの作品の見方だと個人的には思っていたのですが、屋外展示だと日光の温かさ、空気の綺麗さ。庭の植物の自然の香り… と、作品を五感で楽しむことができます。たぶん、モネはこうやって観て欲しかったはず。もうこれは本当に、モネにみせてあげたい!
ちなみに一応ブログ用だから、とスナップも撮ってもらったのですが…(笑) よく考えるとこれもすごい事。普通絵画の写真なんて撮れないですから、絵画をバックに写真を撮る。なんて経験もこの美術館ならではだと思います!
さらに美術館を楽しくするイベントやスイーツも♪
大塚国際美術館は、常設展示。それでも折に触れて通いたくなる素晴らしさですが、年間を通して工夫されているようで、さまざまなイベントが開催されています。私が行ったときはアートコスプレ! 名画の人物と同じ格好をして、写真が撮れる、というものです。しかも絵の前で…!
▲公式アイコンの西川貴教さんの「笛を吹く少年」の再現度が高すぎてビビりました(笑)
それからスイーツも♡ なんせ鑑賞ルート約4キロもある美術館ですから、途中休憩は必須。お茶をするスペースもテラス席もあり、ゆったりしていました。絵画や作者をイメージしたスイーツが提供されています。この日いただいたのはムンクのどら焼き! ものすごく美味でした。高さのあるどら焼きは、中に粒あんだけでなく鳴門金時芋の餡が! 徳島名産の阿波晩茶のセットです。
美術館が身近でない方にぜひ行って欲しい!
美術館好きな方や、好きな画家さんがいる方、普段から美術館通いをしている方… そういった方ではない人に、ぜひ行って欲しいと思います。なんてったって教科書で見たことがあるレベルの名画がたくさん。しかも原寸大で。というのも言葉にしてしまうとさらっと言えてしまうのですが、原寸大だからこそ感じる事ができる圧倒感や臨場感を味わう事ができるって本当に素晴らしい体験だと思います。
そして途中で気づいたことがひとつ。何かずっと他の美術館とは雰囲気が違うな~と思っていて、気づいたのは監視員がいないこと。
そのせいか、緊張した雰囲気ではなく、自由に、のびのびと絵を観て回る事ができる。この美術館の魅力だな、と思いました。指さしながら、なんなら記念撮影しながら。そして絵の前でコスプレしている人もいるし(笑)。美術館ってなんだかインテリぶってる? みたいに感じる事もあるかもしれませんが、ここは全然そんな場所じゃない。肩の力を抜いてリラックスしながら、思い思いに楽しむ。絵や歴史を味わう本来のスタイルって、こんな感じなんじゃないかな、と思える本当に素敵な美術館でした(^^) みなさんもぜひ。
オッジェンヌ 大枝千鶴
2015年からOggi読者モデル「オッジェンヌ」として活動。営業職という仕事柄、通勤服は好感度が最重要事項。最先端のIT企業で働きながらも歌舞伎と着物が大好きという古風な33歳。一級きもの講師。Instagramアカウントはこちら:@chizuruoeda