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2019.01.03

【私が決断したとき】壁にぶつかるのは前に進んでいる証|キャスター・小西美穂さん

各界の第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。キャスターとして親しみやすい解説で幅広い層から支持を集める小西美穂さんにお話をうかがいました。

選択の多い女性の人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。今回は、日本テレビ『news every.』のキャスターとして親しみやすい解説で幅広い層から支持を集める小西美穂さんにお話をうかがいました。

【小西美穂】さんインタビュー

壁にぶつかるのは前に進んでいる証。転ぶたびに、自分を新しくして起き上がる

小西美穂

大阪の読売テレビに就職して、報道記者をしていた20代。社会部に配属され、情報を得るため警察関係者に「夜討ち朝駆け」の日々。疲れ果てて、裁判所のトイレで便器のフタの上に座ってこっそり寝る…なんてこともありました(笑)。ハードでしたが、事件や事故を追っていく中で、自分が報道したことが社会を変えるきっかけになるんだという手応えも徐々に感じられるように。

中でも29歳のときに制作した、弁護士の大平光代さんの密着ドキュメンタリーは、大きな転機です。大平さんは中学でのいじめを苦に自殺を図り、一時は暴力団組長の妻だった時期も。そこから独学で弁護士になり、非行少年少女の更生に努めていらっしゃって。彼女の生き様を伝え、視聴者の方から「自殺しようと思っていたけれど、あなたがつくった番組を見て思いとどまった」というお手紙をいただいたときは胸が震えました。

報道の仕事は、だれかの人生を変えてしまう可能性があります。それに対して臆病であることを忘れたくない。弱い立場の人を全力で支援するという信条をもちつつ、わかったふりをせず、「これでいいのかな」「ほかにも視点はあるんじゃないか」と自問しながら取材することを心がけるようになりました。

ロンドンへの赴任話が舞い込んだのが32歳のときです。海外特派員は憧れでしたが、任期は3年。今後のライフイベントを考えると、今ほど高齢出産の例も聞かなかったので、もし出産するなら35歳での帰国はギリギリかな…という女性としての迷いもありました。

背中を押してくれたのは、旅行業界でバリバリ働く4歳年上の友人です。「美穂ちゃんが行かなければ、後輩男性が代わりに行くでしょう? 画面でそれを見ていられる? 3年なんて、なんともないよ」と。日本に残って夢をあきらめたらずっと悔しい思いをする…そんな私の本音を悟った彼女のおかげで、決心することができました。

小西美穂

派員時代は、着任早々「9・11」のテロが起き、ブレア首相やイスラエル、パレスチナの取材に奔走。まだ日本で一般的には知られていなかったサッカーのベッカム選手に着目し、遠征先に同行してはリポートをお届けしたのもこのころです。

念願のイラク取材は、帰国間近になって実現しました。武装集団に攻撃されたときのために防弾チョッキを着て、すぐに逃げられるように夜も普段着で寝る生活。それでも、現地で生の声を聞き、自分の目で自衛隊の活動を見て考えたことは得難い経験となり、のちに防衛省担当記者となった際には自分の強みに。人生の宝物みたいな3年間でしたね。

ロンドンから戻って受けた辞令は、系列局である日本テレビ政治部への出向でした。30代半ばにして縁もゆかりもない東京でまた未知の世界に突入です。政治部は社会部と取材のイロハも違うので毎日が勉強漬けで失敗の連続。さらにプライベートでは父の急逝と本当に苦しい1年でした。しかし、その一方で湧いてきたのは、報道の中枢でもっと挑戦してみたいという気持ち。

東京に残れるよう、14年勤めた会社の正社員という立場を捨て、有期の契約社員として日本テレビへ入社しました。読売テレビでは、僭越ながら社長賞などもいただいていたのですが、それも過去の栄光で社歴はリセットされます。ある芸人さんが「大阪では売れてたのに、東京来たらノリも扱いも違う。なんや、2度売れなあかんのか!」とおっしゃっていて、すごく共感(笑)。

ただ、こんな私を面白がってくれる上司もいて、夕方の報道番組でキャスターに選んでいただき、現場で取材したニュースを自分の言葉で伝えられるように。その後日テレで正社員となり、同僚にも恵まれ、40歳までは坂道を駆け上るような、まさにキャリアのキラキラ期でした。

ええかっこ〟しようとする見栄はいらない。行き詰まったら人に会う、聞く耳をもつ、行動する

「私、このまま必要とされないのかな」という危機感を抱いたのは41歳のころ。平日に毎日出演していた担当番組が終わり、定期の仕事がなくなってしまったんです。与えられたのは「企画取材キャスター」という役割。今思えば自分が取り上げたいテーマの取材に集中できるありがたい立場だったのですが、「いい企画があればいつでも放送するよ」という言葉が、私には「いてもいなくてもいいよ」と聞こえて。

仕事もなければ、恋人もいない。夜はあてもなく街をさまよい、本屋さんで自己啓発本を買っては心を落ち着かせる。40歳の誕生日は番組の仲間がお祝いしてくれた華やかな一日だったのに、41歳は定食屋さんでひとり寂しく迎えるというこの落差。人生どうなっちゃうんだろう…とすっかり自信をなくしていました。

小西さんBOX

なんとか自分を変えたくて、始めたのが婚活です。といっても相手を探すのではなく、まずは今まで仕事だけに向けていたエネルギーを、サボっていた自分磨きにシフト。ファッションやメイクに詳しい友達にとことん話を聞いて、改善点を教えてもらったんです。関西人の愛のムチで「また不幸メイクしてる!」「ジーンズにパンストはいたらあかん!」と容赦ないダメ出しの連発(笑)。仕事では成果を出していると思っていたけれど、女性としては「私ってこんなにできてなかったんや」と。

そこからは、いかに素直に聞いて実行に移すか。見た目だけでなく、洗顔方法や家具の選び方までアドバイスをもらいました。そのうち周りにも変化を褒められだしてうれしくなるし、また新しい自分を見つけたくなる。1年ほど続けた42歳のときには、11歳年下の今の夫と出会うことができました。もちろん、いい相手と巡りあうことだけが人生の価値ではないのですが、自分にできることってまだまだあるんだなと。

結婚後は新たな番組や政治部に呼んでもらい、今に至ります。キャリアが上がれば負荷は増えるし、厳しいことを言われる機会も増えます。でも、私が画面に出ているのは、決して自分ひとりのパフォーマンスじゃない。大勢のスタッフが番組を支えているんですよね。常に「感謝の気持ち」と「謙虚な姿勢」を忘れず、人に対してモヤモヤを感じたときは、「私もそんなたいしたことないやん?」と思えるかどうかが、亀裂を深めないコツだと学びました。

これまではがむしゃらにやってきて、ニュースを伝えることで社会に貢献しているつもりになってしまっていたけれど、振り返れば自分のことばかりだったんです。「ええかっこ」せずに自分をさらけだす、規格外のキャスターがいてもいい。もし、読者のみなさんの中に私と似たような経験をしている方がいて、少しでも生きるヒントになったなら幸せだなと思います。

小西美穂さんの本

何度転んだって大丈夫! 新刊『小西美穂の七転び八起き』

小西美穂の七転び八起き

小西さんが自らのデコボコ人生を通して導き出した新著には、笑って前を向くための知恵が満載! キャリアで迷ったときの扉の開き方から、チームの力を引き出す方法、成長をうながすノート術、そして女の友情、婚活術まで。つまずいても学び続ける姿に、元気をもらえる! ¥1,400/日経BP社

Oggi12月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき」より
撮影/撮影/石田祥平 デザイン/Permanent Yellow Orange 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

小西美穂(こにし みほ)

1969年、兵庫県生まれ。日本テレビ解説委員・キャスター。読売テレビに入社し、大阪で社会部記者を経験後、2001年からロンドン特派員に。帰国後、政治部記者を経て日本テレビ入社。BS日テレ『深層NEWS』ではメインキャスターを約3年半務め、現在は報道番組『news every.』でニュースをわかりやすく解説。関西出身の明るく気さくな人柄で、のべ1,700人以上と対談した経験をもつ。著書に『3秒で心をつかみ 10分で信頼させる聞き方・話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、日経ウーマンオンラインで『七転び八起きのキャリア美学』連載中。インスタグラムアカウントは@mihokonishi69。


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