港区女子が題材! 漫画「港区JK」|しばの結花先生独占インタビュー
デラックスベツコミ(小学館)で大人気の漫画「港区JK」。リアルOggi世代の作者、しばの結花先生にOggi.jpが独占インタビューしました!
この作品の主人公の女子高生・ミヤは容姿・コミュ力・お金のすべてを兼ね備えた学校のヒエラルキー最上位の「港区JK」。そんなミヤには中学時代、デブでブスのいじめられっ子だった過去が。「生きてたって何の価値もない」と自殺しようとした学校の屋上で、同じ境遇の男子・マッキーと出会い、ふたりは生まれ変わることを決意し高校デビュー。中身より見た目、美は手間と努力で手に入る、人生は楽しんだもの勝ちでしょ♪ そんな彼女が、本当の恋に落ちるまでを描く。
◆今回、単行本になった「港区JK」で、港区女子を題材にしたのはどうしてですか?
当時の担当の編集者さんに教えてもらったのがきっかけです。実は、それまで「港区女子」というものを全く知らなくて。「そんな、漫画の中みたいな生活をしている人たちがいるんだ!」とかなりの衝撃で、興味を持ってそこから一気に調べて、この作品が生まれました。
◆港区女子以外にも、今まで美容専門学生やファッションモデルなど、様々な業界を題材に漫画を描かれていらっしゃるしばの先生。題材選びから作品への落とし込みはどのようにしていくのでしょうか?
それがすごい難しいんです! 一番最初に苦戦したのが「ランウェイの恋人」という作品。田中 渉先生の小説があって、それをコミカライズさせてもらったこの作品では、依頼を頂いたときは知らない世界だから戸惑ってしまって。ファッションモデルの世界のことも分からないし、小説は文章だから具体的な想像がつかなくて。
色々取材をさせてもらい、参考資料も頂いたのですが、結局はそれって業界の「表側」なんです。裏側の部分ってどうしても見えない。本当の現場とは違うかもしれないけれど、割り切ってやるしかないのです。なので、割と妄想の部分もありますね。漫画って、リアルとファンタジーの中間がいいと思うんです。リアルすぎても誰かのブログを読んでいるような感じで面白くない。ある程度、フィクションみたいなものを入れた方が面白いと思うので、そこは思い切ってやってます。
「港区JK」では、担当編集者さんに教えてもらって調べたり、姪っ子が港区の学校に通っているので、ちょこっと話を聞いてみたり。趣味のアクアリウムを題材にした作品では自分の経験や知識が役立つこともありましたね。あと、作品に関わらず、ファッション誌はメンズも含めて月に5~6冊は読んでます。あんまりテレビは見ないので、今、何が流行っているかのリサーチをしています。
◆「港区JK」のヒロイン・ミヤちゃんはダークな部分もあるのが特徴的ですが、ヒロイン像のルールはありますか?
あんまりルールは気にしていないんです。私はキャラクターをつくるとき、男の子をはじめにつくるんです。ヒーローの男の子をつくって、その男の子の性格ならどういう子が好きだろうという視点でヒロインを決めていくんです。この作品もミヤが先にできたわけではなくて、メインの男の子ふたりを考えて、この子たちが好きになるのはどんなタイプだろうと考えた時に、割とくせがあった方がいいなと思って今のミヤができました。
並行して書いている漫画「100万回のスキをあげる」の主人公は、少女漫画の王道のヒロインで、素直でまっすぐな性格。でも「港区JK」に出てくる男の子ふたりはそういう子を好きにならないだろうって。並行して書いている作品とは全然違うキャラになるように気をつけますね。似ていると引きずられてしまうので。
◆仕事で行き詰まったとき、集中力が切れた時のリフレッシュ法は?
まず、寝ます(笑)。私の場合、大きな声を出すのがすごくストレス発散になるので、ひとりカラオケに行くことも。あとは音楽もやっているので、アコースティックで弾き語りをすると気分転換になります。
◆漫画家さんというと、自宅でのお仕事のイメージですが、オンオフのメリハリはどうやってつけていますか?
基本的にオフがないです! 何をやっていても漫画のことを考えているんです。今、こうしてインタビューを受けている間もカメラマンさんの動きとか、ヘア&メイクさんの手つきを観察して、これ何かに使えるかもって自分の中にストックしています(笑)。オフで映画を観ていても、この構図いいなとか、いつも漫画のことが頭の中をよぎるんです。
漫画家さんはみんなそうかなと思うのですが、常にそういうアンテナを張ってしまいます。これだけ漫画のことを考えてしまうので、自分の中でオフの日のルールがあって。できるだけ同業者の方とは会わないようにしています。どうしても漫画の話になってしまうので、自分の世界が狭くなってしまうような気がして。なるべく、学生時代の友人や異業種の方と会って話すように心がけています。
別の業界で頑張っている方とお話しすると、自分の悩んでいることがすごく小さいことだなと気づかされることもあるんです。例えば、漫画を描いていてしっくりこないなと思っていることがあったとき、友人と話していたら一般の読者はそういうところを気にしていないってことが分かったり。読者の方は読むときにどこに注目をしているのかを客観的に知るチャンスでもあるんです。
◆12年間の漫画家生活で、挫折や悔しい思いをしたことは?
悔しい思いは常にありますけれど、一番つらかったのは約6年前に父が他界したとき。当時、連載をさせてもらっていたのですが、連載をこのまま続けようか、それとも休載して家族と過ごそうかと悩んで。結局は続ける方を選んだんです。何が正解かなんてないですけれど、それでよかったのか、もっと身内との時間を過ごしたほうがよかったのかは、いまだに考えることがあります。
親が私の仕事をどう思っているのか、もしかしたらもっと安定した仕事に就いてほしいと思っているかもしれないとプレッシャーを感じていた時期もありました。でも、年齢を重ねるとともに最近はあまり気にしなくなりましたね。
特殊な仕事だからこそ、うれしいこともたくさんあります。実は、大学卒業してから1年間は小学校の教員として1年生を受け持っていたんです。漫画家デビューして6年くらい経ったころ、教え子だった子からTwitterに連絡がきたんです。「先生、覚えていますか?」って。あれは、うれしかったですね。
◆この年齢になってから、仕事の取り組み方や考えなどに変化はありましたか?
体力的なところで言うと徹夜はきつくなりましたね…(笑)。やる気はあるけれど体がつらい。転職をした20代前半のころは、ひたすら勢いでやっていたところがあって。いろんな人から「公務員をやめて、食べていけるかも分からない漫画家になるのか」とも言われましたし。でもあのころは怖いもの知らずでしたね。今もスタンスはそう変わっていないのですが、昔よりはちょっとおとなしくなったかな(笑)。
◆アラサーの働く女子を漫画にするならどんなテーマにしますか?
ひたすらダメな男を斬っていく漫画とか(笑)。
◆目標や憧れの人はいますか?
身近なところだと、編集者の方。もちろん家ではきちんとお母さんだと思うのですが仕事ではバリッとされている方が多いので刺激になります。漫画家としての憧れはずっと鳥山 明さん。漫画を描き始めたきっかけが鳥山さんなので、会えるまでは頑張りたいです!
◆最後に「港区JK」をアラサー女子におすすめするなら?
主人公のミヤは「港区女子」になりたい子。私の中で「港区女子」は、人生を楽しんでいる人というイメージが強いんです。今のアラサーの方って10代20代のころガンガン突き進んで、人生を楽しんでいたタイプの人が多いと思うんです。だから、ちょっと懐かしい感じもするのではないかなと思うし、今、自信がなかったり、消極的な人が読んだら、「そういうのもありだよね」って元気になってくれたらという気持ちで描いています。あと、男の子のキャラは年齢関係なくキュンとしてもらえるかな。
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撮影/フカヤマノリユキ 構成/佐々木怜菜
しばの結花
しばのゆか/10月28日生まれのさそり座。血液型がA型。デビュー作「名前のないファンレター」(デラックスBetsucomi 2006年初秋の超! 特大号に掲載)好きな食べ物は、寿司と辛いもの。現在、ベツコミ、デラックスベツコミにて大活躍中。