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LIFESTYLE

2018.09.27

【有機お米づくり】「手塩にかけて育てる」楽しみを味わうのは、人間ならではの特権なんじゃない?

世界各地を駆け巡りマーケティングを行う黒島美紀子さんによるコラム連載。今回のテーマは農業。

すべてが便利になってきている今だからこそ、「手をかける」という事に向き合いたい

夏の前6月の話。その日は、6月ももう半ばの週末なのに、その日はそぼ降る雨と共にまだまだ空気はひんやりしていた。

里山

私とシノちゃんは緑濃い里山をもっと奥へ奥へと進んでいた。車で細い道に気遣いながら、山を登っていく。

里山

青々とした稲がしっとりとした雨でさらに鮮やかに、みずみずしく匂い立つ。

棚田

さらに棚田の傾斜が急勾配になってくると、森の奥の手前でやっと目的地が見えて来た。

千葉県安房鴨川

今回の目的地はここ。東京のお隣の県、千葉県安房鴨川。東京からほんの2時間弱でこのような美しい里山が広がっているのだ。

ここは林 良樹さんが運営する古民家「ゆうぎづか」

林さんは、鴨川で無農薬でお米を作り続けて、はや20年。今でこそ若い人たちの間で移住が注目されるようになってきたけれど、林さんはその移住組の先駆者。東京を拠点にアメリカ、アジア・ヨーロッパの各地を旅して、その後日本の農村を巡っているうちに鴨川にたどり着いた。

村の長老たちからお米作りや村での生活をひとつひとつ学んでいった林さん。お米作りに至っては、山の合間の棚田であえて無農薬で育てるという偉業を果たされているのだった。

集合時間になり、続々と同じ志を持った方々が集まってくる!

古民家「ゆうぎづか」

家の中におじゃますると…

土間

そこは古き良き日本の懐かしい匂いがする。漆喰作りの土間と黒ずんだ古民家の木の柱とのコントラストがまるで古民家カフェのようだ。これもすべて手作りなんだとか!

ドラム缶でできたストーブ

こちらは、ドラム缶でできたストーブ。そういえば、他のローカルベンチャーの人も「とっても簡単に温まって便利」と言っていた(今は冬じゃないから使われてないけれど)。

ところで、なんで私がここに来たかというと…自然酒の会の集まりのため。

自然酒の会では、月1回のペースでここ鴨川で有機米を栽培し、その米を使って美味しい日本酒に仕立て上げている。しかも、我々の大事なお米をお酒に変えてくださるのは、「寺田本家」という有名な酒蔵。そんな夢のあるイベントなのだ。

自然酒の会

「自分の飲む日本酒のためなら、重労働も厭わない!」という気持ちで集まったみんなで、林さんの説明を聞く。

6月の「お仕事」はすがい縄づくり。…ん!? なんじゃそれ?

まずは乾いたワラの配給。稲ってすごいね。食べるだけじゃなくて、残った茎や葉もこうやって大事に使われる。日本の農業における稲はまさに循環型経済の最先端だ。

ワラ

ワラをトントンして、3つに分けて取り、足に挟んでねじり合わせる。

ワラ

ワンコもお手伝い(このワンコは都会からダイエット修行でここに居候中らしい笑)。

ワラ

みんなで練習。

が、これが結構難しい! ぜんぜんうまくできない。

みんなどんどん作っていくのに、一人乗り遅れるクロシマ。。(ひえーっ)

ワラ

難しい…!

ワラ

最後まで行って先を結んで終わる。(やっと)

ワラ

キチンと作れて、嬉しすぎて小躍りしている消費家クロシマ(お化粧してなくてすみません)。

ワラ

少しずつできていくすがい縄(しかしこれは何に使うんだ?)。

すがい縄

でけた!(やっと)

まとめるととても綺麗。自然の力を感じる瞬間。

お酒

ちなみに、これが出来上がり予定のお酒! ランチの時に少しいただいたのだが..(…馬の前につけられたニンジン?笑)おいしぃ!!! これのために頑張るのだ!

ランチの後は本日のメインイベント、それは水田の雑草取り。

ゴムぞうりとソックスの間のような便利グッズ

こんなゴムぞうりとソックスの間のような便利グッズをお借りする。これがあれば水田だってへっちゃら。

水田

とはいえこの広い水田を見るとちょっとドキドキする。。。

水田

言われてよくよく見ると稲の間にたくさんの雑草が。

水田

林さんをお手本に、皆で水田に入る。十分に水を含んだ、粘土質。みるみるうちに足を取られ、ズブズブ。。。。

両手のひらを大きく開き、水田でひら泳ぎをしながら手で雑草の根を切っていく。

プチプチ。感触が伝わる。気持ちいいけど、し、姿勢が。。。(つらすぎる)

(思わず写真を撮るのすら忘れる消費家であった)

水田

黙々とかき分けて皆で平泳ぎ。手分けしても何時間もかかる作業。有機でお米を栽培するのって本当に大変なんだ。

休み時間に林さんが言った一言。「作物は手をかければかけるほど、応えてくれる。それが本当に嬉しい」そうだよね。植物相手だと手をかけたことには裏切りはないのだ。

時々でてくる、バッタやあめんぼうやカミキリムシ、そして蜘蛛。気持ち悪いから嫌だったのもつかの間、顔が水田に近い姿勢でプチプチ、至近距離で彼らを見ていると、だんだん仲間意識が芽生えてくるからもう不思議だよ笑(蜘蛛は害虫をたべる益虫だそうです!)。

水田

やっと作業終了。(やれやれ)

ほらほら、ちいさな雑草が水田に浮かんでいるのが、わかりますか?

これが我々の今日の成果(いや大変なんだってもう!)

いやー疲れた疲れた。おまけにズブズブのグズグズで上から下まで泥まみれ。

ドロドロ

お気に入りのスノーピークの半パンもドロドロ(泥染めというのがあるくらいだ。この泥は結局後でも落ちなかった。。泣)。

水田

強く、美味しく育ってくれよー。。。。(ここまで頑張ったんだからさー)。

たった1日のお手伝い。でも林さんはこれをほぼ毎日続けるわけだ。

農作の大変さを理解すればするほど、作ってくださる方々に頭が上がらない。感謝のみ、だ。

山間地が多い日本では棚田なんてそこら中にある。そして大規模な農業ができず、こうやって農家の人たちが苦労して皆お米を育てている。

こういうひとつひとつの手間が今、やっぱりとても大事に思えるのは、私が少し大人になっただけではないと思う。すべてが便利になってきている今だからこそ、こういう“手をかける”という事に、皆あえて向き合いたいのだ

20年以内には労働人口の49%がAIへの代替が可能だという。もちろん機械化が進んで、こういう重労働が少しでも軽減されるのは嬉しいけれど、“手塩にかけて(いや、苦労して、ともいうな)育てる”楽しみを味わうのは、人間ならではの特権なんじゃないかな?

そんなことを感じた(365日のうちのたった) 1日のお手伝いでした。

いや、でもこういうお手伝いは本当に気持ちも洗われる。

最後は無事稲刈り。ここに行き着くまでの顛末その二を乞うご期待!

稲刈り

そしてこの体験は無印良品のサイトから申し込めます!

#すがい繩の使い道は、結局わからずじまい
#ということでシノちゃんとの農業修行はまだまだ続く
#後半戦乞うご期待すぐにアップするから待っててね

初出:しごとなでしこ

黒島美紀子 MKシンディケイツ代表

消費家・商業マーケティングコンサルタント
アパレル、セレクトショップ・百貨店を経て独立起業して早や10年余。数々のお買い物の実践と失敗を繰り返し、ファッション、ビューティ、グルメ、ライフスタイルの動向を消費者目線で考察。また、世界各地の商業スペースやブランドをチェック、消費活動を通じたマーケティングを行い、企業と消費者を結ぶ。

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