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LIFESTYLE

2017.07.19

不良品に対する日本と世界の価値観の違いとは? 日用品を通して“生き方”を考える

世界各地を駆け巡りマーケティングを行う黒島美紀子さんによるコラム連載。数々のお買い物の実践と失敗を繰り返してきた彼女が、ファッション、ビューティ、グルメ、ライフスタイルの動向を消費者目線で考察します。今回は『VISION GLASS NO PROBLEM』から派生したプロジェクト「NO PROBLEM展」について。

話題の展覧会「NO PROBLEM展」へ行ってきた

先日まで丸の内のグッドデザインストアで開催されていた「NO PROBLEM 展」

Brick&Mortarというお店を中目黒でやっている友人のSNSで見かけて、ちょっと気になっていた良品と不良品の「狭間」の品についての展覧会。うむ…かなり気になる。

サブタイトルは、To “B” or not to “B”…。
シェークスピアをなぞらえたスタイリッシュだけど不思議なキャプションに惹かれて、駆け込みでのぞいてみた。

とても洗練されたインテリアショップのような外観に惹かれて、中へ入ってみると…

わぁ、美しい!
一体グラスが何個あるのー?

美しいミニマルなグラスの圧倒的なディスプレイにまずは目を奪われる。

この展覧会? 一体なに?

実は、今回の展覧会はこのグラスを輸入してるVISION GLASS さんが主体となってやっている。

VISION GLASSは、インドで 30 年以上の歴史があるシンプルで素敵なガラスコップブランド。見た目はもちろん、耐熱で直火もOKと機能もすばらしい。

日本と世界の「傷物」に対する価値観の違い

数年前、日本に本格導入始めてからわかったことがある。
それは日本とインドの「傷物」についての価値観の差だった。

日本で検品を行うと、明らかな「不良品」以外にも、ちょっとした小さな汚れやゆがみや傷といった「何か」がいろいろ見つかることがある。

彼らはそれを「NO PROBLEM品」と名付けた。

機能や性能には全く関係のない(=インドでは不良品にならない)「NO PROBLEM 品」。

毎日毎日、目の前に積まれてゆく「NO PROBLEM 品」の多さに、彼らはインドの価値観と日本の価値観との狭間を見たわけだ。

VISION GLASSさんは知り合いのメーカーさんや小売店さんにもこういう悩みがないか、聞いてみた。

そうしたら、出てくる出てくる…同じ悩みが。それも、たくさん!

厳しい目を持つ百貨店や専門店に出すには規格として難しい。でも商品としては全く問題のないNP品の多さ。
マグカップ、木のトレー、和紙のバッグ、レザーウォレット…狭間の商品がここではたくさん見ることができる。

例えば、この天然木のトイレットペーパー置き。材料である木には、長年の生き方育ち方で、年輪以外の傷やシミが入っていることもある。決して、汚れではない。でも商品としては日本では「不良」として撥ねられてしまうのだ。

美しくディスプレイされたVISION GLASSの「NO PROBLEM 品」の傷には、素敵なネーミングが傷の種類によってつけられていた。

可愛い名前のある傷。シュールで面白い。

一方で、手作り品、民芸品に近いものは大きさや、形、彩色の仕方などが少し違ってもそれがかえって「味」になる。
販売の中でそれを敢えてのセールスに使ったり。そうすると一挙に「A品」になる。

この微妙な違い。

工業製品と民芸品としての認識の差、なのでしょうか?

ワイングラスを製造販売されている木村硝子店さん

見た目は綺麗に揃っている工業製品のようだけれど、結局ワイングラスは手で作る。
少しのバランスの違いや重さの差がでるのは仕方ない。なのに社内検品で「不良」として撥ねられる商品の多さを見て、社長みずから立ち上がった。

社長が全て検品し、社長がOKといったものは社内検品で撥ねられたものでも販売することにしたのだ。

その代わり、万が一クレームを受けた場合は、全て社長が対応。

自分が決めた「基準」なのだから、全てどういうプロセスでものが作られ、どういう基準で判断しているか、を社長が丁寧にお客様にお話する。「私が基準を決めているのだから私がクレームも対応する」。

なんかカッコイイ!


NO PROBLEMプロジェクトチームが、消費者の反応が見えず、おそる恐るやってみたというこの展覧会。
思いのほか、「いいね」と言ってくれる人が思ったより良くて、ちょっとほっとしながら、この東京展を終えたそうだ。

「異邦人」(異物混入)と名付けられた「NP」品を前に、「これは私のことだわ!」と流暢な日本語で思わず言った韓国の女の人。

「ゆがみ姉妹」とか「流れ星」とか傷にもひとつひとつ名が付けられた「NP品」の中から、自分の中の“ちょっとゆがんだ部分”に似た子を選んで買っていく女性たち。

スタッフはそんな人たちが印象的だったという。

自分で選んだモノにある「ちょっとした傷やゆがみ」が更なる愛着を呼ぶ世界もあるのだ。

太古の昔には、そもそもお買い物というのは売り手と買い手が対峙して、お互いの真ん中にあるモノの価値を、お互いにかけあいながら決めるのものだった。

実際に使うその当事者が「これでよし」かどうか、を決める機会を少し増やしてもいいんじゃないか、ということをこの展覧会では提案している。

だって我々のものに対する価値観それは人それぞれ、多種多様なのだ。

そんな、買い方のRE-DESIGN。
東京での開催は終了していますが、関西地区では神戸で同じ展覧会(ミュージアムギャラリーつき)、7月29日から開催です。

ちなみに、関東地区にお住まいのみなさん。展覧会は終了していますが、VISION GLASSのこのシンプルな耐熱ガラスコップやNP品も含めてここでもいつでも買えますよ。この記事で気になったあなた。自分だけの「ひとしな」を見つけにぜひ。

もうひとつ。ここで出品しているBrick&Mortarさん。NP品をお客様が値段を決める、という試みを常に店頭でしています! こっちも是非!

NO PROBLEM展

日時:7/29(土)〜8/13(日) 11:00〜19:00
会場:KIITO 2F ギャラリーC
参加費:入場無料
詳細はこちら

初出:しごとなでしこ

黒島美紀子 MKシンディケイツ代表

消費家・商業マーケティングコンサルタント
アパレル、セレクトショップ・百貨店を経て独立起業して早や10年余。数々のお買い物の実践と失敗を繰り返し、ファッション、ビューティ、グルメ、ライフスタイルの動向を消費者目線で考察。また、世界各地の商業スペースやブランドをチェック、消費活動を通じたマーケティングを行い、企業と消費者を結ぶ。


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