浅草は「手土産」の町
何かと理由をつけては手土産を持っていくのが好きです。おいしいものは空気を和ませてくれるし、「これどこで買ったの?」「あの店知ってる?」など、会話の糸口になることも。
浅草に住んでわかったのは、手土産にできるおいしいものが豊富な町だということ。今回は、その中でも老若男女問わずよろこばれる餡の手土産をご紹介したいと思います。
浅草の和菓子がおいしい理由を考えてみた
「餡」といえば和菓子。和菓子を差し入れすると、「さすが下町!」「下町っぽい」と言われます。「下町」ってよく使われる言葉ですが、どんな意味があるんでしょう? 改めて辞書を引いてみると…
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した-まち【下町】
都会で、土地の低い所にある町。多く商工業地になっている。東京では浅草・下谷・神田・日本橋・京橋・本所・深川などの地域をいう。⇄山の手。
(『デジタル大辞泉』より)
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ふむ。
「土地の低い所にある町」は、言いかえれば川の流れに近い町=資材やできたものなどを運ぶのに適している場所=ものづくりをする職人が周囲に住みやすい、ってことかなと勝手に解釈。確かに、名前のあがっているエリアは職人の多い町でもあります。つまり「職人気質なひとが多い」から、和菓子もおいしいっていうこと? そういう面もあるかもしれないけれど、なかでも浅草は花柳界の影響も大きいんじゃないかなと、私は思うのです。
花柳界とは、江戸から続く芸妓の世界。いまも浅草では、芸者さんたちが料亭などでお客をもてなす文化があります。浅草・花柳界の中心である『東京浅草組合・浅草見番』のホームページを覗くと…
『浅草寺の北に広がる浅草花街は、伝統と格式を誇る東京屈指の花柳界のひとつです。……古来より浅草観音様は諸人の参詣を集め、掛け茶屋が出て賑っていました。武江年表によると明暦年間(1655~1657)「金竜山の門前に初めて茶飯 豆腐汁 煮染 大豆等をととのえて奈良茶となづけて出だせし」とあり、これが江戸の料飲店の始まりといいます。』
とありました。
大正末期には料理店49軒、待合茶屋250軒、芸妓1060名もいたそうです。関東大震災や戦争で数は減ったけれど、いまも通りを歩くと三味線が聞こえたり、夕暮れどきにいそいそ歩く芸者さんを見かけることも。
浅草の和菓子は、今も昔もこうした場での手みやげの定番。味に厳しいひとたちのお眼鏡にかなう存在なのだから、そりゃおいしいに決まってる!
味の理由が(勝手に)わかったところで、わたしが愛してやまない3つの手土産を紹介します。(MAPは記事の最後にあります)
浅草手土産1
徳太樓(とくたろう)の『きんつば』と『豆大福』(MAP①)
浅草寺の裏手にある明治から続く和菓子屋で、名物は『きんつば』(1個135円)。浅草花柳界のお土産にも好まれてきたそうです。
ここの『きんつば』は、たとえるなら“色白な娘さん”。しっとりした小麦粉の皮が薄く、きめも細かくて、どこから眺めても美人なんです。甘さ控えめな粒餡が皮と一体になり、餡がうっすら透けて見える姿もうつくしい〜。手みやげにするなら、やっぱり箱入り。6個(920円)からあり、白地に色紙のちった上品な紙箱に包まれています。
で!
今の季節に私がおすすめしたいのは『豆大福』(1個160円)。北海道あずきのみを使用した粒餡を、くるっとお餅でロールしてあります。お餅に巻き込まれた豆の断面がスパッときれい。お餅の存在感が強いので、お餅好きの豆大福好きに喜ばれそうです。ちなみに10月〜5月までの季節限定。お早めに!
浅草手土産2
梅むらの『豆かんてん+餡』(MAP②)
ここも浅草寺の裏手にある甘味処です。浅草案内するとき、「甘いもの、好き?」と聞いてにっこりするひとたちは、必ず連れて行きます。
名物は『豆かんてん』(470円)。4〜5時間かけて煮たふくふくの赤えんどう豆に、角切りした寒天と黒みつというシンプルなおやつ。私は『梅むら』の、こてっと濃厚なこし餡も大好き。あっさりとした『豆かんてん』に追加でのせてもらいます。お土産にする場合も、餡追加に対応してもらえます。
ここは年中かき氷をやっているのもうれしい。真冬に熱いお茶といただくと、“こたつでアイスクリーム”みたいな贅沢が味わえます。『梅むら』で食べるなら、やっぱり『氷豆かんてん』(620円)。豆かんてんの上にふわふわの氷をこんもりのせたもので、氷と豆かんてんのおいしいとこどり。餡党のみなさまは、餡の追加オーダーも忘れずに(写真:氷の下に餡と豆かんてんが埋もれています)。
それから、甘さ控えめの『にあずき』(670円)もおすすめ。ひどい二日酔いのときに初めて食べたのですが、弱った体にしみました。ちなみに後から偶然知ったのですが、餡の原材料=あずきですよね。あずきにはむくみや疲労回復、二日酔いの改善などによい成分が含まれているのだとか。
浅草手土産3
御菓子司 亀十の『どら焼き』(MAP③)
浅草で「餡」といえば、エライひともグルメも、誰に持っていってもよろこばれる『御菓子司 亀十』の『どら焼き』(325円)。テッパン中のテッパン。この味を知らない浅草住民はモグリです。
1日3000個限定の理由は、職人が生地を一枚一枚焼いているから。1個300円超えと比較的高いのに、いつ店の前を通っても大行列です。電話予約は要相談とのことで、私が電話をしたときは「1ヶ月待ち」でした。
でも……ひと口頬張れば、その苦労は納得。あえて焼きムラのある皮が、うっとりするおいしさなのです。ちなみに、沖縄産の黒糖を使って蒸した生地で餡を包んだ『松風』(260円)も、ぜひ。ふかふかの生地とつぶし餡のコンビはコーヒーとも合います。
浅草へ遊びに来たついでに、誰かへの差し入れを探しに。ぜひ立ち寄ってみてください。
浅草MAP
<前回までの記事>
▶【浅草】地元女子がご案内! 雷門や東京スカイツリーをバックに撮影するスポットはココ
▶恋愛、仕事のご利益も! 浅草で個性豊かな神さま巡り散歩
▶【もぐもぐ浅草花見ガイド】つまみ食いしながら、浅草の桜スポットをぐるり一周
初出:しごとなでしこ
ニイミユカ
兵庫県出身、浅草在住。編集者・ライター。アウトドアやスポーツなど、アクティブなジャンルをメインに活動中。この連載コラムではイラストも手掛ける。instagram:yuka_nim