名刺交換にやり直しはきかない。だからこそ「失礼なことをしていないか?」「これで合っているのか?」と、名刺交換に不安、緊張があるという方は多いのではないでしょうか?
気になってビジネスマナー本をめくってみても、名刺交換のページは2ページ程度というのがほとんど。それもごく基本的なことしか載っていません。しかし実際の名刺交換の場面では、人によってやり方が違っていたり、本で見たのと全然違っていたりして困惑することも。今回は名刺交換の意味や理由を理解して、イレギュラーにも対応できる能力をつけましょう!
そもそも名刺交換は何のためにするの?
名刺交換の形式にとらわれていると、いつまで経っても不安や緊張は解消しません。まずは、何のために名刺交換をするのかを理解しましょう。ビジネスマナー本通りの正しい名刺交換ができることが目的ではありません。
名刺交換の目的は
1.自分が何者なのか相手に理解してもらい、
2.相手がどんな方なのか自分が理解し、
3.今後、良好な人間関係を築くためです。
名刺交換をしたとたんに一方的に喋り倒す人や売り込みをはじめるような人もいますが、まくしたてられると人は引きます。それどころか、不快な気持ちさえ抱く場合も。
名刺交換後に良好な人間関係を築くポイントは、まず相手の話を聞くことです。例えば、コンパを思い出してみましょう。自己紹介のあと「自分ってすごいんだ~!」と武勇伝をひたすら話してくる異性って、はっきり言って面倒くさいし、萎えますよね。それよりも「どうなの?」「もっと詳しく教えて!」「へーそれで?」というように話を引き出してくれる異性は好印象です。もっと話したい、相手の事も知りたいと感じるのではないでしょうか。
名刺交換の際も同じように、名刺にある情報から共通ポイントを探したり、相手を褒めたり、話が弾みそうなことを質問してみると同性異性問わず相手との心の距離が縮まります。ぜひ試してみてください。
これやっちゃダメ! 覚えておきたい名刺交換のタブー
万が一、名刺を忘れたとしても、正直に「名刺を忘れてしまいまして…」と言ってはいけません。なぜなら「仲良くなるつもりはない」とか「相手を軽く見ている」と捉えられてしまう可能性があるからです。名刺を忘れた場合でも「申し訳ありません。あいにく名刺を切らしておりまして…」と丁重に謝罪をして、すぐに郵送するか、次回お会いしたときに渡すのがマナーです。また普段からこまめに名刺の補充をし、名刺入れ以外の場所に予備を持っておくといいでしょう。
また汚れた名刺を出すこともNGです。名刺は自分の分身とも言えるもの。折れ曲がった名刺や、汚れや落書きがある名刺は「私は身だしなみが整っていません」と自ら言っているようなものです。
指や爪、手が清潔かどうかも気をつけておきたいポイントです。伸びすぎた爪、爪の間にゴミが挟まっている、ささくれ等も要注意。名刺交換時というは案外と手元に視線が集まるんですよ。
名刺はどこから取り出すのが正解?
名刺交換ではスピードが求められます。名刺を差し出されたときに、あたふたしていてはスマートなビジネスマンとは言えません。では、名刺はどこから取り出すのが正解なのでしょうか?
<名刺取り出し厳禁場所>
お尻ポケット、財布から名刺を取り出すのは厳禁です。もちろん、名刺を裸で持ち歩くのは言語道断です。名刺は自分の分身ですから、差し出すものも頂くものも大切に取り扱う必要があります。社会人の嗜みとして、名刺入れは持っておきましょう。
<名刺交換があるとわかっているときは>
最初から名刺入れを手に持っておくとスムーズです。名刺交換があるとわかっているのにカバンから取り出す、ポケットから取り出すという時間は非常に無駄です。自分側から名乗る場合、すぐに名刺を出せないと相手から先に出されてしまいます。名刺を渡す順番は、目下の者からです。合わせて覚えておきましょう。
<名刺入れを手に持っていない場合>
おすすめはカバンの取り出しやすい場所に名刺入れを入れておくことです。ゴソゴソ探し始めて、どこに入れたかわからず、相手を待たせるようなことはないように気をつけてください。次にスーツの胸ポケットや左右のポケット。ただし、ポケットからの取り出しはスーツの形が崩れるので、あまりおすすめできません。女性用のスーツはポケットが小さめなものが多く、ポケットがパンパンに膨らんでしまうと見た目もスマートではありませんので、避けましょう。
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以上、マナー本には載っていない名刺交換の大切な話でした。マナー本の通りにやらなければマナー違反なのかと言われれば、そうではありません。マナー本で読んだ知識とは全く違う状況というのはよく起こります。そのようなとっさの場面に出くわしても心に留めておいていただきたいのが「相手のことを考える」ということの大切さです。
相手に恥をかかせてしまったり不快な気持ちにさせてしまったりすることのないよう、柔軟な対応ができるようになりましょう。
マナーはルールではありません。思いやりの心で「良好な人間関係を築くためには今、何を優先したらいいか?」を軸に考えてみてください。
初出:しごとなでしこ
古岡めぐみ 現役ホテルマン・マナー講師
沖縄「カヌチャベイリゾート」や、大阪「大阪マルビル大阪第一ホテル」など、名だたるホテルでの勤務経験をもつ現役ホテルマン。お客様からの多くの支持を集め、また後輩育成にも力を注いできたことを認められ、過去に社内表彰されること多数。
現在は富山県内のホテルフロントスタッフとして勤務しながら、これまでの自身の経験をもとに接客マナーやホスピタリティなどのセミナー講師としても活動している。