はじめまして。産業医の加藤杏奈です。
しごとなでしこの皆さん、産業医をご存知ですか? 産業医とは、働く人々が健康で、いきいきと働けるように、健康管理を中心に、業務状況や職場環境についても助言する医師です。日本では法律で、50人以上の企業で産業医を雇用することが義務付けられています。私もその一人です。
よく社員さんから「先生は何科が専門ですか?」と聞かれます。「産業医が専門です」と答えるとキョトンとされてしまうのですが、臨床医のように病気を治すのが目的ではなく、病気を防ぐ「予防医学」が中心の専門家です。もちろんそのベースには臨床医学がありますが(私の場合は、内科とメンタルヘルス)、仕事によって怪我をしたり病気を悪化させることがないよう、あるいは病気で働けなくならないように、社内で心身の総合的な健康サポートをしています。
しごとなでしこの皆さんに向けた「杏奈先生のなでしこ健康相談室」を開設
さて、日本で男女雇用機会均等法が制定されて30年が経ちました。ほんの15年ほど前までは、女性は残業や深夜業が制限されていました。それが妊産婦を除いて撤廃され、女性の就ける仕事が増えました。そして、晩婚化・少子化が進んだことや、それ以上に、社会の変化から収入のためのみならず生きがいとしての就業を求める意識に変わり、結婚してからも働く女性が増えたことにより、今や働く人々のうち女性は44%を占めるまでになりました。特に25〜29歳の女性の就業率は昭和60年→平成27年で54%→80%、30〜34歳は51%→71%と著しく上昇しました
(平成27年総務省 労働力調査、厚生労働省 働く女性の実情より)
男性との給与格差は(男性を100として)59.6→72.2まで縮まりました。また、女性の役職率も年々上昇し、女性の社会進出は益々高まっています。
しかし、一方で、女性の非正規雇用者率(派遣、パート・アルバイト)は32%→56%に増えました(男性は22%)。
その背景には、働き方が多様に選べるようになったというよい面もありますが、出産を機に正社員を離職する人が増えたことも挙げられます。実際、第一子出産後の離職率が60%と高く、復帰の希望があるものの正社員として戻れなかった人は300万人にものぼります。妊娠出産を理由にした不当な扱いを受けたり、母性健康管理を十分に受けられない事例も未だ少なからずあることがわかっています。
日本には女性にとって様々なよい法令があります。上記の男女雇用機会均等法の他、男性より華奢な体格や、妊娠・授乳という男性にはできない能力を持つ女性を守るための基準などがあります。また、今年は女性活躍促進法も制定されました。会社が法令を理解して対応していくのはもちろんですが、女性自身が自らの健康に気をつかい、適切に権利を使えるようにしたいものです。
このような現状と産業医という立場から、働く女性の健康をサポートし応援していきたいというのが私の思いです。
女性の繊細な気遣づかいやアイディアは、職場を明るくするとともに、企業のさらなる業績向上にもつながります。しごとなでしこの皆さんがこれからの社会をよりよくしていくといっても過言ではないでしょう。そんなしごとなでしこを応援したい!ということで、「なでしこ健康相談室」をオープンします。女性を取り巻く社会の現状や、実際私の健康相談室に来た相談内容などをもとに、働く女性に役立つ情報を発信していきます。どうぞお気軽に相談をお寄せくださいね!
初出:しごとなでしこ
加藤杏奈 産業医・労働衛生コンサルタント
産業医科大学医学部医学科卒業。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。専門は産業医学、予防医学、メンタルヘルス。産業衛生専門医。現在、某化粧品メーカーの産業医として勤務している。
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