斎藤 工さん独占インタビュー#03
昨日公開し、すでに超話題となっている映画「クレイジー・リッチ!」。斎藤 工さん独占インタビュー第3回はちょっとニッチな方向へ!? 仕事を頑張る女性へ斎藤さんからのエールとは?
―斎藤さんは、観光大使になってからシンガポールの印象は変わりましたか?
これは、いつも言っていますが、シンガポールと日本には戦争の歴史があって。ゴージャスな面ばかり注目されがちですが、僕ら日本人の知らないことがたくさんあるんです。シンガポールには、その歴史のミュージアムもあって。ここを訪れる日本人はほとんどいないですが、シンガポールの方々はその歴史の教育をきちんと受けているんです。歴史を分かったうえで、今日の僕らに対してマイルドな受け入れ態勢をとってくれている。それを映画「家族のレシピ」の撮影の中で知っていったので、とても恥ずべきことだなと思います。
表面的なゴージャスなシンガポールというイメージが強いかもしれませんが、国の背景、歴史、シンガポールが東京よりも小さい半径であれだけのエネルギーを持っていること。英語と北京語を持つ国でのコンディション面も含め、シンガポールから見る未来は過去の歴史をきちんと知らないと表面的な表現になってしまうと思います。
映画の撮影で滞在中、ワールドカップのベルギー戦を観ていたのですが、その場にいらしたシンガポールの方、皆さんが日本を応援してくれていました。日本人の僕らよりも熱心に応援してくれていて「なんで応援してくれるの?」って聞いたら、「同じアジアだから、当たり前だろ」って。立場が逆だったらどうだろうって考えさせられました。シンガポールは、そういう温かい国です。戦争の歴史があるって理解した上で、応援してくれていることに感動しました。
―「クレイジー・リッチ!」の主人公・レイチェルは仕事を頑張る女性です。もし、そんな頑張りやの女性が仕事のことで落ち込んでいたら、どんな言葉をかけてくれますか?
根本を覆してしまうようですが、そもそも(そういったときに)女性は男性から言葉をかけられたいですか?(笑) というのも、女性のほうがいろんな面で優れていると僕は気づいたから。「昼顔」という作品で昆虫を研究する役を演じたとき、「昆虫は痛覚がない。人間にある痛覚は生きながらえようとする機能で、人間にある痛みや心の痛みは本能なんだ」というようなセリフがあって。虫って本当に痛覚がないのか調べたら、これが結構面白くて。俳優の高橋一生さんも虫にめちゃくちゃ詳しくて、よくふたりで話をするんです。
人間は進化途中ですが、進化しきった歴史のある虫は両性具有。中でもかなり最前線にいるのがアブラムシです。X染色体というのが女性で、僕らはもともとX染色体で生まれようとしている。それになれなかったのがY染色体で、男性になる。で、僕の見解では虫はその失敗を減らしていき、今X染色体として存在している。カマキリは子供を産むときだけオスを必要とするんです。
オスのカマキリはメスに食べられてしまう。オスは出産に合わせて自分が栄養になるのをプログラミングされて生まれてくるんです。オス、メスどっちが優秀かというのは虫を見れば一目瞭然。そう考えたら、男性が女性にエールを言うなんて…と。だからこの問いへの正解の答えはあると思うんですが、僕には答えられない。きっと別のだれかに聞いたら120点の答えを出してくれたんじゃないかと思います(笑)。
―では、斎藤さんが落ち込んだときはどんなふうに切り替えるのですか?
虫や動物よりも人間のほうが歴史が青い。人間のサイクルについての詳しいことは「サピエンス全史」という本に書かれています。人間を軸に色々考えると疲れてしまうし、なんか大変だなと思えることも他の生物がはるか先に進んでいる大先輩だとしたら。そこに答えが落ちていたりするんです。だから、僕だけでなく落ち込んでいる人は動物とか、虫に習ってください。
そう考えると「クレイジー・リッチ!」もやはり女性が肝になっている。男性の意志が重要視されている世の中ですが、これは女性の物語。おばあちゃんがいて、ふたりの母親がいて。強さとか、怖さも含めて、不思議と自分の監督した作品もどれも女性が土台になっているものばかり。男女の違いとか他の生命体の「男女の在り方の結論」を日々潜在的に感じていて、これはもう僕自身の命題です。
人間のフィルターで見ると色々と奇妙に見える自然界のルールも、向こうからすれば人間が超遅れているし、めちゃくちゃ奇妙な生態系の保ち方として写る。だから同時に興味深いんです、人間って。生態系の一部という捉え方をしながらも、人間の目線で、すべての常識をつくっている。先住民はもっとギブアンドテイク、自分たちは生態系の一部だという考え方を持っています。今は自分の都合で切り離してしまっている。
―それでは最後に「クレイジー・リッチ!」はどんな人におすすめしたい映画ですか?
実は男性ほど女性性を持っている。元々は染色体は女性なので、意外とヒロインに感情移入して見ることができます。男性は、「女性から見る男性」という目線に気付ける。色々学習できるし、女性は彼氏に見せるのもいいと思います。あと、印象に残っているのが指輪のシーン。多くを語らずに指輪を見せることで、あぁそういうことなんだな、と。
男性にはない流れなんです、受け継いだものを渡すバトンみたいなものって。習慣・風習、そしてファッションもパンツスタイルとスカートスタイル、男性にはないんです。色々と考えさせられました。ひとつだけ言うなら男性向けのルックとビジュアルポイントもつくってほしいな、と。日本人は、特に照れ屋な人が多いから。「プラダを着た悪魔」とか「セックス アンド ザ シティ」も男性が観ても面白いように、この映画もきっと楽しめるはず。
ブルゾン¥330,000 シャツ¥63,000 ベルト¥53,000 ブーツ¥153,000(エトロ ジャパン〈エトロ〉) 他スタイリスト私物
撮影/黒石あみ スタイリスト/川田力也(es-quisse) ヘア&メイク/赤塚修二 撮影協力/大槻麻衣 構成/佐々木怜菜
【注目の作品はこちら】
映画「クレイジー・リッチ!」
2018年9月28日ロードショー!
監督:ジョン・M・チュウ
原作:ケビン・クワン著「クレイジー・リッチ・アジアンズ」(竹書房)
出演:コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ヨー、オークワフィナ、ソノヤ・ミズノほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
恋人ニックに誘われて彼の故郷シンガポールを訪れたレイチェル。そこで彼がアジア屈指の不動産王の御曹司だと知る。突然セレブの世界へと足を踏み入れたレイチェルの驚きも束の間。ニックの母や親族に金目当ての交際を疑われ、さらには元カノや社交界のセレブ女子から嫉妬の嫌がらせを受けることに。そんな苦境の中、レイチェルとニックは家族を説得しようと試みるもセレブ一族の壁が大きく立ちはだかる。レイチェルは試練を乗り越え本当の幸せを見つけることができるのか…⁉︎
斎藤 工
さいとうたくみ/1981年8月22日生まれ。A型。184cm。実力派俳優として圧倒的な存在感を放つ一方で、映画監督としても活躍。