今回のテーマは、6月27日、小惑星「リュウグウ」に無事到着した小惑星探査機「はやぶさ2」についてです。
はやぶさ2の基本
はやぶさ2は、小惑星探査機はやぶさの後継機として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で開発された小惑星探査機です。2014年に打ち上げられ、地球近傍小惑星の 「リュウグウ」へランデブーし、地球へサンプルリターンするのが計画されています。
ランデブーというと、なんだか昭和臭漂う恋愛言葉を思い浮かべてしまいますが(男女が待ち合わせすること)、れっきとした宇宙用語として使われており、「宇宙船・人工衛星が、ドッキングするために出会うこと」を指します。サンプルリターンとは、採取した物質を地球に持ち帰ってくることですね。

映画にもなった先代のはやぶさ
ちなみに、はやぶさ2の先代の探査機であるはやぶさは、今から15年前の2003年に打ち上げられ、地球の重力が及ばないエリアにある天体(イトカワ)への着陸&サンプルリターンを世界で初めて成功させた探査機です。
燃料漏れやバッテリーの機能低下によって途中で通信が途絶えたり、エンジンが故障したりと、そのプロジェクトは涙なしには語れない感動的なもので、映画にもなっています。
ええ、ええ、はやぶさは伝説の探査機と言ってもいいでしょう。映画ではプロジェクト責任者の苦悩が痛いほど伝わってきて、はやぶさが無事に地球に帰還(大気圏への突入で燃え尽きるものの)することを知っている状態で鑑賞していたにも関わらず、私は相当ドキドキハラハラしました。とてもおもしろい映画なので、ぜひ見てみてください。
はやぶさ2で生命の起源の秘密が明らかに!?
JAXAのサイトによると、このはやぶさ2のプロジェクトの目的は、
はやぶさが探査したS型小惑星イトカワよりも始原的なタイプであるC型小惑星リュウグウの探査及びサンプルリターンを行い、原始太陽系における鉱物・水・有機物の相互作用の解明をすることで、地球・海・生命の起源と進化に迫るとともに、「はやぶさ」で実証した深宇宙往復探査技術を維持・発展させて、本分野で世界をけん引する。(JAXA記者説明用資料から抜粋)
ことです。この説明ではちょっと言葉が難しいので一言にまとめると、「はやぶさが持ち帰ってくるであろうリュウグウの表面の物質に、生命の起源の秘密が隠されているかもしれない! それを探ろう!」ということです。
ええ、ええ、まさにアストロバイオロジー(宇宙生物学)!!! の世界です。
リュウグウには、太古の生命が関係する有機物や水などが眠っていると考えられており、それを分析すると生命の起源の謎の解明に一気に近づけるかもしれないのです。
宇宙誕生から生命誕生の順番も入れ替わる
もし生命の痕跡がリュウグウで発見されたら…場合によってはこれまで常識とされてきた「宇宙誕生→太陽系誕生→地球誕生→生命誕生」という順番がひっくり返って、「宇宙誕生→生命誕生→太陽系誕生→地球誕生」になる可能性も出てくるわけです。
はやぶさ2が地球に戻ってくるのは、東京オリンピックの年と同じ2020年。待ち遠しいですね。…宇宙与太話まだまだ続きます。
【参考URL】
JAXA(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/press/doc/Hayabusa2_Press20180614.pdf)
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授 松井孝典監修(地湧社)

いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信」の更新がライフワーク。