本日のテーマは前回に引き続き、「彗星(すいせい)」についてです。
彗星・流星・隕石の違い
今回はついでですので最初に、混同しやすい「彗星・流星・隕石」の三つについて、ごくごく簡単にまとめてみます。
彗星
太陽の回りを回る天体のうち、尾を持つ「小天体」(彗星・小惑星・惑星間塵等)のこと。短周期彗星と長期周期彗星がある。
流星
彗星がまき散らしていったちり。地球の引力によって大気圏に突入する時、大気の分子と衝突してガスが発光し、光っているように見える。大気中で消滅する。
隕石
小惑星や彗星などがぶつかってできた破片が地球など惑星に落下して来たもの。10kgを超えるものだと大気圏を通過し、無傷で地表に到達する。
多くの彗星の軌道は安定しないものの細長い楕円軌道を描いていて、数年から数百年に一度、太陽の近くに戻ってきます。それが地球に近づいた時に私たちが見ることができるのです。
そして隕石ですが、なんと1年間に何千個も地球に落ちてきているそうですよ。当たらないように注意したいものですね。
彗星の正体は一体何なのか?
この連載でも何度も出てくる天才天文学者のフレッド・ホイル博士とチャンドラ・ウィクラマシンゲ博士は、彗星が「生命の培養地」として機能しており、今いる地球の生命のそもそもの「素」は彗星によってもたらされたのではないかという説を提唱し、研究を続けていました。
この説は、以前紹介したパンスペルミア説の中の一つである「彗星パンスペルミア説」と呼ばれる説なのですが、提唱当時の1960年代は他の科学者達から「ソレ絶対違うアホちゃうか」という感じのひどい塩対応を受けたそうなのです。
ところがどっこい、近年の科学の進歩によって「この説アリかも…」という科学的な証拠が多数明らかになってきたこともあり、ありえないとされていた彗星パンスペルミア説が息を吹き返してきました。
有名な科学的証拠には、毎秒ワイン500本分のアルコールを放出するラブジョイ彗星の発見などがあります。アルコールは有機物であり、有機物は生命に近いものなので、NASAも「彗星は(地球上の)生命の誕生に必要な複雑な有機分子の源だったという説を裏付けるもの」声明を出したほどでした。
彗星は生命が生きていられる環境なのか
以前、宇宙空間は無重力で真空、気温はマイナス270℃の冷え冷え状態であるのに加えて、人間の致死量を遥かに超えた宇宙線と呼ばれる放射線などが飛び交っており、生き物が生きていける環境ではないことをお伝えしました。そこで考えたいのは、そんな宇宙空間にある彗星が生命を維持できる物体なのかどうかです。
これについてはかなり支持されている仮説があります。なんとですね、ある程度の岩石の厚みや氷の厚みをもった彗星の内部は、宇宙線を避けることができ、また彗星は太陽に最接近する時、表面温度は最大400℃まで熱せられるのですが、表面を覆う分厚い外殻があるため、細菌やウイルスにとって安全地帯として機能するようなのです。彗星を掘って成分を分析したら、地球外生命体が見つかるかもしれませんね。…宇宙与太話はまだまだ続きます。
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授松井孝典監修(地湧社)
『彗星パンスペルミア 生命の源を宇宙に探す』チャンドラ・ウィクラマシンゲ著(恒星社厚生閣)
いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信(http://ikenori.com/)」の更新がライフワーク。