朝ドラ『風、薫る』1週間の見どころと感想をレポ
半年間続いた朝ドラ『風、薫る』が、最終回を迎えました。 明治時代の日本で看護の道を切り拓いた、一ノ瀬りんと大家直美の物語。見上愛さん、上坂樹里さんのダブル主演です。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、最終週もグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
最終週「道標」を振り返り&朝ドラ『風、薫る』を総括します
激動の明治から大正へ。「看護婦」という職業の認知度は飛躍的に向上し、いよいよ国家資格として定められることとなりました。一度は挫折した夢を追う者、自分の可能性に期待する者。看護婦資格取得を目指し、それぞれの奮闘が続きます。「日本最初の看護婦」であるりんと直美が切り開いた道の先にある未来とは。

りん&直美の冒険は、看護の「その先」へ!
看護婦資格試験に向けて、恵風看護婦会で学ぶ見習生たちの研修もいよいよ大詰めです。かつてりん&直美が帝国医大病院でともに働いた今井先生やトメが、特別講師として登場するのも胸熱。今井先生といえば、ドイツ帰りのエリートでストイックな外科医、新人だったりんにとっては「大いなる壁」みたいな存在だったわけですが。そんな今井先生が柔和な笑顔でりんに語りかけるシーンがグッときます。
「(見習生は)4人ともまっすぐな目をしていたぞ」「君も大いに悩むといい」。あの頃は気づかなかったけれど、今井先生も悩みぶつかりながら医療の道を歩んできたのでしょうね。りんが成長した今だからこそ見える風景を、視聴者も追体験させられるような気持ちです。
そしてシマケンに勧められ、りんは看護の知識・技術をまとめた本を執筆。試行錯誤しながらできあがった本は、未来の看護師の背中を押し続けるのです。言葉は、何十年先も残る。あの日筆を折ったシマケンの思いも、きっと少し報われたよね。自分の書いた小説を未来に残すことはできなかったけれど、彼がりんに渡した言葉は、別のかたちでこの世界に残っていくのです。
「一緒に来るか?」寛太と直美、“あったかもしれない未来”
そして今週のハイライトのひとつ、直美の腐れ縁・寛太とのやりとりは名シーンでした! グレーな仕事からは手を引いて、海外へ出ることを決めた寛太。寛太はドラ子の推しですので、そこに至るまでの心の変化をもう少し掘り下げてほしかったー!と思いつつ(笑)、少年・寛太がひそかに憧れていた海外への道がひらけたことをうれしく思います。
そんな寛太が直美に告げた「一緒に来るか?」の破壊力はやばかったです。出会ったときは騙し・騙される関係だったふたり。一方でお互いの弱さや孤独、そして生命力はどこか似ていて…。何かが違えば、ともに生きていた未来もあったかもしれない。直美も知恵がまわるところがあるし、ふたりタッグを組んで詐欺師コンビ、とか容易に想像できます(笑)。けれど、明るい未来を信じて戦うエネルギーは直美のほうがずっと強かったのでしょうね。直美は看護師の道へ。寛太はあやしい商売を続ける道へ…。
寛太と直美は、お互いにとって「あったかもしれない、別の未来」なのかもしれない。だからこそ放って置けないし、惹かれる部分があったんだろうな。そして出会ったときの偽名「小日向」のまま去っていく寛太。遠く離れてもふたりは、それぞれの幸せをきっと願い続けるのだと思います。
小さな風は、100年先へ。『風、薫る』の半年間をドラ子が総括すると
「日本最初の看護婦」りんと直美が起こした、ちいさな風。それはいつしかたくさんの人を巻き込んで、100年先の未来まで吹き続けることとなります。いや〜初期からあまりに「風」ねじこんでくるやん、と思って見ていましたが、結局は『風、薫る』とはそういう話でしたね。ひとつひとつの行動が、思いが、やがて世界を大きく動かしていく「バタフライエフェクト」のお話。人の出会いが、選択が、交わした言葉が、何かを少しずつ変えていく物語。その風は現代の医療現場にも、きっと息づいている。
「いつかの出会いが未来のヒロインを救う」というモチーフは朝ドラでは定番であり、ゆえに『風、薫る』はある種王道をいくストーリーだったと思います。一方で、Wヒロインが「家族」になる展開や、キャッチーな決め台詞に頼らず、会話や視線、情景で感情を描こうとする演出には意欲を感じました(初期こそりんの「間違えた」が決め台詞になりかけてましたが)。朝ドラって朝の15分しかないから、ポップな演出で印象付けるのももちろんアリだと思います。けれどもこういう、まさに「小説」を読むような朝ドラがあってもいいんじゃないかな。
そして何より、今作はひとりの偉人が世界を変える話ではなく、りんと直美というまったく違うふたりが、ときに支え、ときにぶつかりながら歩いた物語です。ひとりでは起こせなかった風も、ふたりなら起こせる。その関係性こそ、『風、薫る』のいちばんの魅力だったかもしれません。やっぱりいいですよね、バディもの。
時折ベタな演出や大味な展開、突然の爆速進行やすごろく好きすぎ問題などツッコミどころも随所にありましたが、絶妙に憎めないレベルでドラ子は「ベタやな〜」と日々楽しませていただきました(笑)。それもまたある種王道朝ドラのゆえんなのかもしれませんね。
働く女性の成長を見守る半年間でもありました! そして次回作は『ブラッサム』です
最初のころは、りんはフワフワ考えが甘いし、直美はトゲトゲ嫌な子だったのに、いつの間にかこんなに立派になって…なんなら日本の医療の未来を変えて…心震えます。働く女子の成長を描くお仕事ドラマとしても、いい朝ドラだったと思います。
さて、次回作は作家・宇野千代さんをモデルにした「葉野珠(はの たま)」が活躍する『ブラッサム』。演じるのは石橋静河さんです。なかなか破天荒そうなストーリー、こちらも半年間楽しみましょう!
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後にNHK ONEでじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。『ひよっこ』再放送にも毎日ワクワク!



