耳恋♡ 推しの声が聞きたくて Vol.36|鳥海浩輔

とりうみ・こうすけ/5月16日、神奈川県生まれ。1996年に声優デビューし、『テニスの王子様』千石清純役や『NARUTO -ナルト-』犬塚キバ役などで注目を集める。主な出演作に『薄桜鬼』斎藤 一役、『うたの☆プリンスさまっ♪』愛島セシル役、『弱虫ペダル』今泉俊輔役など。
「ありのままに、フラットに」鳥海浩輔さんインタビュー
芝居はつくり込みすぎず、それ以外の準備は万端に
この夏、ひとつの歴史的コミックがTVアニメ化された。その作品は、少女漫画『天は赤い河のほとり』。連載がスタートしてから約30年、今なお世界中で愛される不朽の名作だ。その数字を聞いて「じゃあ、僕は作品とほぼ同期ですね」と話すのは、声優・鳥海浩輔さん。その言葉のとおり、声優としてのキャリアは30年にのぼる。
現代日本から紀元前14世紀の古代オリエントの世界へ− 『天は赤い河のほとり』が描くのは、数千年の時を超えた世界で自ら運命を切り開いていく少女・夕梨(ユーリ)と、彼女を取り巻く人々の壮大な群像劇だ。
「ひとりの女性が、未知の環境でさまざまな人と出会いながら、成長していくストーリー。Oggi読者の皆さんにとっても、どこかご自身の人生とリンクする部分があるかもしれません」

そんな今作で鳥海さんが演じているのは、近隣諸国からも恐れられる冷酷無比な敵国の王太子・マッティワザ。
「冷徹でカリスマ性のある戦争の天才、と表現するのがいいんでしょうか。読者の皆さんがアニメを観ている現状では、とにかく〝すごそうな敵〟なんですが… 原作があるとはいえ、ネタバレしないほうがいいですよね? どうしよう、お話しできることが少ないな… (笑)」
そうキャラクターを語る鳥海さんは実に穏やかで、演じている役とは真逆とも思える空気をまとっている。そのギャップを感じるほどに、どんな役づくりをしているのか気になってくる。
「基本的には〝台本のとおり〟ですね。今作のように原作がある作品でも、僕は原作を読まないようにしています。たとえばマッティワザという役も、ストーリーが進んでいく中で過去の傷や人間的な弱さといったものが見えてくる。だけど、それをストーリーで表現される前に感じさせる必要はないと思いますし、演じる役を変に〝逆算〟してしまうのがイヤなんです」

決して役はつくり込みすぎない。アフレコは、その場に応じた瞬発的な変化が求められる場所でもあるからだ。
「必ず演出が入りますし、演者同士の掛け合いではじめて見えてくるものもある。アフレコは〝収録〟ですが、録っているときは〝ライブ〟なんです。そのライブ感を大事にしなきゃいけない。そう思っているからこそ、事前に芝居を固めすぎないようにしています。それ以外の部分は100%の準備でのぞんで、あとはその場の自分のパフォーマンスしだい。力量が足りなければそれまで。〝次〟がなくなっていくだけのことですから」
競争の絶えない世界。それゆえに、意識してきたのは〝フラットでいること〟。
「たとえばオーディションに落ちたとき。昔は『自分じゃなくて、アイツになったのか…』なんて、すごく意識していました。気にならなくなったのは、30代後半くらいからかな。受けた役が自分以外のだれかになったのは、その人にいいところがあったから。人と自分を比べなくなってから、すごくラクになりました。どんなことも自分のおかげで、自分のせい− 成功したら頑張った自分を褒めてあげればいいし、失敗したら反省して失敗を繰り返さないようにすればいい。そんな考え方でいると、すごくラクですよ」

〝頑張る〟のは大事。だけど〝継続する〟のも大事
肩の力を抜いて、自分らしく仕事に向き合う。そんな鳥海さんの姿は、〝かっこいい大人の働き方〟のひとつの理想像。少しずつキャリアを築き始めたOggi世代にアドバイスを送るとしたら…?
「少しずつ仕事が増えてきて、声優業がだんだん軌道に乗ってきた。今振り返ると、20代後半から30代はそんな時期だったと思います。仕事というものがわかってきて、自分のポジションもできてきて… つい頑張りたくなるし、頑張ってしまうころですよね。『頑張るな』とは言いません。でも、自分の限界を超えて無理をする必要はないのかなって。頑張ることは大事だけど、仕事を積み重ねて継続させていくことも大事。だからこそ、どこかで一度立ち止まって休んでみたり、ちゃんと自分を褒めてあげたりしてもいいんじゃないでしょうか。キャリアを積みたいタイミングだと思いますし、結果を出したいと焦ってしまうときもあるかもしれません。だけど、人と比べずに自分のやれることを丁寧にやれば大丈夫。そうして気持ちがラクになると、心に余裕が出てきて、自然と視野も広くなっていくと思いますよ」

そんなアドバイスを語った後に、「それが難しいんだよ! と言われちゃうかもしれませんけど…」と笑いながら付け加えるのも、鳥海さんらしいところだ。
「思考もまた積み重ねですから。はじめは意識的にやっていたことも、だんだんと自分の考え方になっていくんですよね」
決して無理をせず、ありのままに、そしてフラットに。そんな鳥海さんの在り方は、未来への考え方にも表れている。
「僕、目標を立てないんです。年始によく聞かれる『今年の目標は?』なんて質問も、いつも答えは『なし』です(笑)。強いて言うとしたら、一年が終わるときに『今年もいい年だったな』と思えればそれでいいかなって。たった1ミリでも何か前に進んでいれば、なおよし… くらいの感じなんです。喋れる間は、こうして声優という好きな仕事を続けていけたらいいですね」
鳥海さんにとって〝働く〟とは?

第一は、糧を得ること。と同時に、この声優という仕事は僕にとって、すごく楽しくて、大好きなこと。声優としてのスタートを考えれば、まず声優として働ける、お仕事があるってなんてすばらしいことだろう、そう感じるばかり。一本も仕事がないところから始まって、好きなことを仕事として30年も続けてくることができたのは本当に幸せな話で… 物理的な糧を得ると同時に、精神的な糧も得てきたのだと思います。経験値をはじめとした〝心の貯金〟を自分自身の中に確かに増やしてこられたこと。それがまた、声優として30年間働けている理由になっているのかもしれません。
TVアニメ『天は赤い河のほとり』大好評放送中!

現代日本から紀元前14世紀のヒッタイト帝国へ突然召喚された少女・夕梨(ユーリ)が自らの手で運命を切り開いていく、本格大河ロマン。日本テレビにて毎週火曜25:29〜、BS日テレにて毎週水曜24:00〜放送中! ※放送時間は変更になる場合があります。
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2026年Oggi10月号「耳恋♡ 推しの声が聞きたくて Vol.36」より
撮影/谷口 巧 スタイリスト/笠井時夢 ヘア&メイク/AKi 構成/旧井菜月
再構成/Oggi.jp
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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