圧倒的な存在感のミュジカルスター! 俳優・望海風斗さん
宝塚歌劇団ではトップスターとして組を率いながら、高い歌唱力と繊細な演技で作品を彩り、現在も数多くのミュージカル作品で人々を魅了し続ける、俳優・望海風斗さん。
この春、舞台『マスタークラス』で初のストレートプレイに挑戦します。新たなチャレンジに挑み続けるその言葉には、多くの学びがありました。

【望海風斗(のぞみ・ふうと)】
神奈川県生まれ。2003年宝塚歌劇団に入団し、2017年に雪組トップスターに。2021年に宝塚歌劇団を退団。退団後は、ミュージカルを中心に活動。『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』など多くの人気作に出演している。
ジャケット¥180,000・ブラウス¥63,000・パンツ¥70,000(Alunc) ピアス¥1,001,000・リング[2フィンガー]¥1,936,000(K18ピンクゴールド×ダイヤモンド/MESSIKA JAPAN〈MESSIKA〉)
新たなチャレンジは楽しみでもあり、不安でもある
20世紀最高のオペラ歌手と謳われる女性がいる。マリア・カラス──愛を求め、挫折を乗り越え、そして芸術に生涯を捧げた彼女の物語に挑むのは、俳優・望海風斗。歌・演技・ダンスの三拍子そろった稀代のミュージカルスターだ。だが、ストレートプレイは未経験。この春、新たな望海風斗がベールを脱ぐ。
「いずれはお芝居だけの作品もやりたいとずっと思っていたんです。そんな舞台に挑戦できる。とてもうれしいし、楽しみです。だけど、同時に不安もあります」
新たな挑戦となる舞台『マスタークラス』に対して、望海さんは素直な気持ちを明かしてくれた。

「いつもは歌で感情を表現することで、演じる役の姿が見えてきたりするんです。でも、今回はそれがすべてセリフ。しかも、その多くがひとりでしゃべっているシーンなんです。マリア・カラスという人格がどうやって生まれてくるかな、と」
望海さんの役づくりは「台本に書かれていることをひたすら読み解く」ことだという。
「〝役になる〟というより、息をするように言葉が出てくる、自分の体から素直に言葉が出てくるのが一番だと思うんです。『どうしてこの人はこんなことを言うんだろう』と言葉の温度を想像しながら、ひとつずつ疑問を潰していく。そうすることで、その人に近づいていけるように思うんです」
今回、近づこうとしているマリア・カラスには、どんな印象を持っているのだろうか。
「有名なオペラ歌手という結果が残っていますが、本人はそのとき、その一瞬に対して一生懸命に情熱を注いでいたんだろうなと感じます。どこか威圧感や少し怖そうな印象もありますが、それは自分のすべてをひとつの物事に注いできた厳しさゆえ。彼女は、だれよりも自分にいちばん厳しい人だと思いました。だから彼女の言葉は物事の本質をついていて、説得力があるんですよね」
舞台『マスタークラス』で紡がれるマリア・カラスの言葉は、働くOggi世代の心に刺さるのではないかとも教えてくれた。
「この舞台には、何かに真剣に向き合っている人に届く言葉がたくさんあるんです。『先輩や上司が伝えたいのはこういうこと?』『これって今の私に向けた言葉?』なんて感じたりするかもしれません。今は理解しきれない部分もあるかもしれないけれど、それはもう少し上の立場になったときの気づきにつながるはず。オペラとかわからないしな…と難しく感じる方もいるかと思いますが、日々仕事に向き合って働いているみなさんにぜひ観てもらいたいです」

生粋の宝塚ファンがタカラジェンヌになる夢を叶え、幼いころから憧れ続けた人と同じトップスターになり、ステージを変えた今も、その輝きを舞台の上で放ち続けている。今、夢中になっていることは「ボイストレーニング」、最近よく訪れる韓国のおすすめスポットは「ミュージカル」、元気の源は「舞台に立つこと」──望海さん自身も、芸を愛し、芸の道を極め続けている人だ。
「この舞台のためにオペラやクラシックの発声を習い始めたんです。そうしたら、今までずっとできなかったことができるようになって! 今、ボイストレーニングが面白くて仕方がないんです。マリア・カラスも言っているように、芸に終わりはない。知るほどにハマっていきます」
準備ができていないと私らしく挑めない
類まれな実力と存在感。舞台の上から放つ圧倒的なオーラとは裏腹に、〝地上に立つ望海風斗〟はとにかく謙虚で慎重、そして自分を飾らない人だ。「私、めちゃくちゃ心配性なんですよ…」とは本人談。今作が初経験となるストレートプレイについても「楽しみだけど不安」と語っていた。とはいえ、人生は挑戦の連続。初めてのことに挑むとき、望海さんはどう立ち向かっているのだろうか。
「〝初めて〟って、不安材料だらけですよね。それをひとつずつ解消していくことが大事かなと思っています。私は『初めてだからワクワクする』というより『初めてだから準備ができていないと自分らしく挑めない』タイプで。だから、とにかく不安に感じることを解消して、スタートラインに立てるようにしています」
その最良の方法は、「やっぱり練習を重ねること」だとも話す。
「舞台の袖からステージに出ていく最後の一歩は、自分で踏み出すしかないんです。周りの人に助けてもらうことも、もちろんたくさんあります。だけど最後は『出よう!』と自分を思わせなければいけない。『何回も練習したから大丈夫』『失敗したときの作戦も考えてあるから大丈夫』… いかに自分を納得させられるかなんですよね」

そのシーンをOggi読者の日常でひとつ例えるならば、大きな結果が求められるプレゼンの場面といったところだろうか。
「とにかく作戦を練る! そしてイメトレ! そのプレゼンはどんな場所で行われるのか、どんな質問が飛んでくるのか… 潰せる不安は全部潰して、何が起きても大丈夫と思うこと。だけど、いちばん大切なのは情熱だと思うんです。目には見えなくても、必ず伝わると思っているので。大変な仕事でも続けているのは、きっとそこに情熱や好きな気持ちがあるから。その想いが伝われば、きっとうまくいくはずです」
日常でうまくいかないことがあったときは「言葉として書き出すのがいい」とも教えてくれた。
「何がうまくいっていないのか、それを解決するにはどうしたらいいのか。それを書き出して明確にする。漠然としている悩みも、そうやって突き詰めていくと、自分が何に立ち向かわなければいけないかが見えてくるんです。ときには『もう謝るしかない…!』『割り切ってやるしかない』みたいなことも出てきますけれど(笑)。それも経験ですから」
強く、やわらかなマインドが、今日も新たな挑戦を後押しする。
Instagramで募ったOggi読者からの質問に答えます!
Q1:朝一番にすることはなんですか?
A:「窓を開けて空気を入れ替える!」
Q2:仕事のモチベーションを保つ方法は?
A:「ワクワクするご褒美をつくる! 今日頑張ったらあのお店のケーキを買おうとか、あの人とごはんに行こうとか。ご褒美をつくって、自分を釣っておきます(笑)」
Q3:ホームタウン・横浜のおすすめスポットは?
A:「やっぱり、みなとみらいの夜景。行くたびにキレイだなって思います。クルーズ船に乗って、海からみなとみらいの全景を見渡すのが特に好きです」
Q4:「もうダメ!」というくらい疲れたときのリカバリー術は?
A:「時間があればビタミン注射。今すぐどうにかしたい! というときは…これ、かなり現実的なんですが(笑)、活蔘(かつじん)を飲む! 楽屋にも必ず一本は置いています」
Q5:美肌の秘訣は?
A:「保湿かな。最近、韓国に行くようになって、美容にとても興味が湧いてきたので…がんばります!(笑)」
Q6:髪を短くする予定はありますか?
A:「今は飽きるまで伸ばしたいなと思っています。パリジェンヌがさりげなくしているラフなまとめ髪をしてみたくて。でも、私の毛質ではできないのでは…? と最近気づき始めました(笑)。どこかのタイミングで切るかもしれませんが、切ってもボブかな」
舞台『マスタークラス』3・4月上演!

20世紀最高の歌姫、マリア・カラスが、引退後にアメリカの名門音楽学校で公開授業(マスタークラス)を行う。そこで解き明かされていく、彼女にとっての音楽と人生とは。3月は東京・長野、4月は愛知・大阪にて公演。
2025年Oggi3月号「俳優・望海風斗 強く、やわらかく、新しく。」より
撮影/三宮幹史(TRIVAL) スタイリスト/加藤万紀子 ヘア&メイク/チエ(KIND) 構成/旧井菜月
再構成/Oggi.jp編集部