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理想の夫婦は「たくさん会話ができる」こと、それをあきらめない関係
映画『世界の中心で、愛をさけぶ』『モテキ』と、大ヒット作で共演してきた長澤まさみさんと森山未來さん。ふたりが共演する最新作は、全国4か所で公演される舞台『おどる夫婦』。長澤さん演じる舞台衣装デザイナー・吉田キヌと、夫の吉田ヒロヒコとの10年の物語。恋愛の末に結ばれたものの、いつしか世間に翻弄され、互いに主導権を握り、踊り・踊らされて…。
──さて、稽古開始を控えたふたりから、それぞれのキャラクターはどう見えているのでしょうか。
長澤まさみさん（以下、長澤）私が演じるキヌという女性は、なりゆきで生きてる人のような気がしていて。（森山さん演じる）ヒロヒコさんとの出会いは友達だったし、その流れで今があるけれど、どこか人生を自分で決めるというより、流れに乗って生きてしまっているような。でも、その奥に強い意志があるのか、ないのか…。
森山未來さん（以下、森山）「夫婦」というタイトルがついてはいるけれど、夫婦生活をそのまま描いているわけではなく、断片的に切り取ったもの。それでも、積み重ねてきた関係性をどう匂わせるか。そこがポイントになるのかなと想像しています。
長澤 「10年の記録」というところも面白いですよね。10年という年月を区切って、どう時間を経過させていくのか。まだそこまで想像がついていないですけれど。
森山 僕の印象としては、いろいろあるけれどお互いを理解することをあきらめていない関係だなと。
「仕事となれば、曖昧にするより
ひとつずつクリアにして進みたい」（森山さん）
──『おどる夫婦』から感じるものをふまえて、その先にある、おふたりにとっての「理想の夫婦像」はどのようなものでしょう？
長澤 たくさん話ができる関係、かな。
森山 それは絶対！ うちの親は、周囲からはいつもケンカしているみたいに見えるんですよ。でも本人たちは、ケンカじゃなくてコミュニケーションだって言うんです。いくつになっても、伝えること、会話することをあきらめていなくて、それをずっとやり続けているのは素敵です。
長澤 うちも、とっても仲が良さそう。特に最近はいつも一緒にいるし、それを楽しんでいる。どちらかがいないと調子が出ないみたいで。お互い好きなんだなって感じるし、特別なことがなくても、普段の生活でそれを感じられるのが、いちばんですよね。
──舞台『おどる夫婦』では、微妙なズレ、ケンカ手前のモヤモヤした感情が、避けられないものとして、ユーモラスに描かれます。もし、ふたりがそうした状況にあったら、どう対処するでしょうか。
森山 うーん、どうするだろう。劇中のやりとりを見ていると、何やってるんだろうな、なんでそんなこと気にしてるんだ、って思ってしまうけど。彼らには彼らの中に理由があるんだろうし。
長澤 そこが難しいですよね。他人にしてみたら「こうしたらいいじゃん」っていくらでも言えるけど、本人たちにしてみたらそう簡単にいくものでもなくて。私なら、譲り合えばいいのになって思います。私はどちらかというと、言いたいこともガマンして飲み込んじゃうほうなので。
夫婦として長く連れ添うことを考えると、どこまで自分が譲って、関係性を壊さないようにするかを考えちゃうと思います。
森山 それはわかるな。どんな仲でも、どんなに長く連れ添っても、理解し合えないことはどうしてもある。それを、理解してもらえなきゃ嫌だって思い込むのも、なんだか怖いこと。お互いに許容する余裕、曖昧なままにしておく余白も、大事な気がします。
ただ、仕事となれば別。僕は曖昧にしておくよりも、ひとつずつクリアにして進みたいから、モヤモヤするくらいならはっきり言っちゃいます。
「30代は有意義な時間だと胸を張って言えます」
（長澤さん）
──お仕事へのスタンスのお話が出てきたところで、おふたりにとっての30代の働き方を振り返っていただくと…。
森山 とことん身体と向き合い、突き詰めてきたのが、30代の10年でした。作品にして表現したり、プロデュースもやったり。自分の身体を使ってできることを広げてきました。それはとても充実した時間で、これからはどう発展させていこうかと。やれること・やりたいことのバランスが整ってきたのかな、と思うことがあれば、まだまだ甘いと感じるときもあるし。
長澤 私も森山さんと同じように、30代の今すごく充実していて、有意義な時間だと胸を張って言えます。惜しみなく生きている実感もあるけれど、一方で仕事ばっかりしてたなって思ったり。もう少し自分の時間をもつことを考えながら、30代の残りはやれることすべてやりたいんです。
森山 すごい！アクティブ！
長澤 そう。釣りも行きたいし、ダンスも習いたい。本を読む時間も、映画を観る時間も、足りない！ あと2年ちょっとでどこまでできるかな。
「大阪、新潟、長野。
行きたい店がもう見えてます」（森山）
──そしていざ公演が始まれば、4月から6月あたままで4都市、長期にわたっての上演となります。公演期間中の乗り切り方はあるのでしょうか。
長澤 舞台のときはいつも、のどと体のために朝晩ストレッチをします。そうしないと、のどが温まらないし、体の調子も出ないんです。これが、唯一のルーティンです。
森山 公演の前、稽古が1か月半続くだけで、僕にとっては超ルーティン（笑）。毎日同じ場所に通って、同じことを繰り返す。いつもはそういう習慣がないので、それだけでとても健康的な時間が過ごせそう。
長澤 そして、やっぱり地方ではおいしいものを楽しみに。
森山 東京のあと、大阪、新潟、長野。それぞれの場所で、行きたい店がもう見えてます。
長澤 え、すごい！
森山 頭の中には地方の都市ごとにお店がリストアップされてるので、しばらく行ってないあの店に行きたいな、店がなくなってないといいな、と考えるのが楽しくて。
長澤 まずは長期の東京公演を無事に終えて、地方でみなさんとおいしい食事ができるように。それを楽しみに頑張りましょう！
Bunkamura Production 2025『おどる夫婦』
数多くの演劇賞を受賞し、映画の脚本や人形劇ムービーで初監督を務めるなど、いま注目の作家・演出家・蓬莱竜太が新作書き下ろし。主演を務めるのは、14年ぶりに共演を果たす長澤まさみ（キヌ役）と、森山未來（ヒロヒコ役）。そのほかのキャストには、松島聡、皆川猿時、小野花梨、伊藤蘭など。4月10日から東京・大阪・新潟・長野にて公演。詳細は、https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/25_odorufuufu/
長澤まさみ
ながさわ・まさみ
2000年の第5回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞、同年に映画で俳優デビューを果たす。04年に映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞・話題賞など数々の賞を受賞。20年には『コンフィデンスマンJPプリンセス編』、『MOTHER マザー』で第63回ブルーリボン賞主演女優賞、21年にはNODA・MAP『THE BEE』で第29回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。近年の主な出演作に、【舞台】『正三角関係』(24)、『THE BEE』(21)、『フリムンシスターズ』(20)、『キャバレー』(17)、【映画】『スオミの話をしよう』『四月になれば彼女は』(24)、『キングダム』シリーズ(19・23・24)、『ロストケア』『シン・仮面ライダー』(23)、『コンフィデンスマンJP』シリーズ(19・20・22)、【ドラマ】『エルピスー希望、あるいは災いー』(22)、『ドラゴン桜』シリーズ(05・21)などがある。
森山未來
もりやま・みらい
5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。これまでに映画賞を多数受賞。2013年には文化庁文化交流使としてイスラエルに派遣。東京2020オリンピック開会式にてオープニングソロパフォーマンスを担当。2022年より神戸市にてArtist in Residence KOBE（AiRK）を設立し、運営に携わる。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。主な近作として【パフォーマンス】『さんぶたろう祭り』(24、構成・出演、森の芸術祭 晴れの国・岡山)、『パルコ文化祭』(24、プロデュース・出演)、『ポスト舞踏派 ダンス公演「魔笛」』(24)、【映画】『化け猫あんずちゃん』『大いなる不在』『i ai』(24)、『シン・仮面ライダー』『山女』『ほかげ』(23)、【ドラマ】『NHKスペシャル 未解決事件 File.10 下山事件』(24)、『パリピ孔明』(23)など。ポスト舞踏派。
長澤さん衣装／ニットトップス￥192,500・ワンピース￥423,500（ジルサンダージャパン〈ジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー〉） ピアス／スタイリスト私物 問い合わせ先：ジルサンダージャパン 0120-998-519
森山さん衣装／コート￥198,000・カバーオール￥154,000（BIRTHLY〈BED j.w. FORD〉） 問い合わせ先：BIRTHLY（バースリー） 03-6432-9313
撮影／三宮幹史（Trival）
スタイリスト／吉田 恵（長澤さん）、杉山まゆみ（森山さん）
ヘア＆メイク／スズキミナコ（長澤さん）、須賀元子（森山さん）
構成／南 ゆかり
