計画は立てない。声に出すと、遠くに行ってしまう気がするから
──30代までの過ごし方を、最近になって考えるようになったという坂東さん(詳しくは前編で)。歳を重ねること、キャリアを積むことについては、どうとらえているのでしょう。
最近、昔からの知人たちから「大人になったな」と言われることが増えたんです。自分ではまったく思わないですよ。だって、僕の根本は変わってないですから。僕の根っこですか? 人と一緒にいることが好きなこと。人懐っこいこと。だから、歳を重ねても、きっと「子供みたいなおじさん」になるんだろうなって思います。
といいながらも、大人の色気みたいなものにも、憧れます。たとえば、反町隆史さんや長瀬智也さん、窪塚洋介さんのような、どこからかきているのかわからない魅力と色気――。今はもちろんだけど、僕と同じ歳のころにすでに色気をもっていたのは、いったいどうことなのか。うーん、考えてもわからないことだらけ。どうやったら近づけるのか、教えてほしいです。
でも、今日撮った屋外の写真(写真は前編で)、色気ありましたよね?(笑) 少し大人っぽくて、ちょっといいでしょ(と、周囲に聞く坂東さん)。
かっこいい大人に共通しているのは、「好きなことをやり続けている」ことなんだと思います。だから僕もたくさんの「好き」をずっともち続けたまま大人になろう。それが唯一、できることなのかもしれません。
やってみたいのは、インドや北欧へのひとり旅
──では、今「坂東さんの好きなこと」というと…。
第一にまず、お芝居が好き。だから、それができる環境に身を置くことができるのは、本当に幸せで。そしてもちろん、ずっと続けている絵を描くこと、写真を撮ることも。リフレッシュとして大事なのはもちろん、いい仕事をするために必要なことです。
そして、まだやったことのない海外ひとり旅に行ってみたいな。インドとか、北欧あたりはどうだろう。ひとりで準備して、ひとりで行動して。ふだん僕は、時間があれば友達を誘って一緒に出かけることが多いので、ひとりで自分と向き合う「時間」は、とても貴重なんです。それができたら、もっとかっこいい大人になれるのかな、なんて思ったりもして。
──「時間」は、主演映画『君の忘れ方』でも重要なひとつのテーマになっています。
傷ついたとき、大きな喪失感を味わったとき、解決してくれるのは、やっぱり「時間」なんですよね。心を癒していく一番のツールだと思う一方で、時間が経つにつれて忘れていくという「怖さ」もある。だから、大切なことはたまには意識してたまに思い出さなきゃ、ということにも気付かされました。それができて、ようやく自分の人生を生きることができる。
と同時に、つらい気持ちを解決する選択肢のひとつとして「グリーフケア」という方法があることを、この映画で知りました。自分だけで抱え込まず、気持ちの整理をする場をもつことで、前に進めることもある。僕自身も、何かあったときに会ってくれる友達や話し相手になってくれる家族の存在が、助けになるんだろうと思います。
この仕事は忍耐力です
──では仕事をするうえで「時間」の存在は……。
どちらかというと、それより大事なのは「場数」かもしれません。芝居って、何もしないで考えているだけでは上手くはならなくて、やっぱり経験の数が大切なのかなと思います。
そもそも、この仕事は忍耐の連続です。ひとりで考え込んで、現場で壁にぶつかって、悪い評価は受け入れなければいけないし、高い評価は虚像だとさえ思えてくる。それを乗り越えるのは、やっぱり場数なのかなと。
でもね、以前に手相占いをしたとき、「35歳で不動の地位を築く」と言われたことがあって。それを信じて、毎日誠実に目の前のことに向き合うしかありません。計画は…立てても変わるから立てません! それに、声に出すと、遠くに行ってしまう感じがするんです。願望は、そっと心の中に留めておくことにします。いつか絶対に高いところに行く。それだけ思い続けてさえいれば、きっとね…。
坂東龍汰(ばんどう・りょうた)
1997年5月24日生まれ、北海道出身。2017年デビュー。『フタリノセカイ』(22年)で映画初主演を務め、 第32回日本映画批評家大賞の新人男優賞(南俊子賞)を受賞。主な出演作に映画『春に散る』(23年)、『バカ塗りの娘』(23年)、『一月の声に歓びを刻め』(24年)、『若武者』(24年)、『シサム』(24年)、劇場アニメ『ふれる。』(24年)、ドラマ『RoOT/ルート』『366日』『ライオンの隠れ家』(24年)など。25年1月は、映画『君の忘れ方』『雪の花 -ともに在りて-』が公開。
映画『君の忘れ方』
坂東さんが演じる、ラジオ番組の構成作家・森下昴は、つきあって3年になる恋人・美紀との結婚を間近に控えていた。だが、そんなある日、彼女は交通事故で帰らぬ人となってしまう。茫然自失の日々を過ごすなか、昴は自分と同じような大切な人を亡くした経験をもつ人たちと触れ合い、胸の内に封じ込めた思いを少しずつ吐き出すことで、頑なだった心を溶かしていく。
出演:坂東龍汰 西野七瀬
津田寛治 岡田義徳 風間杜夫(友情出演)
南 果歩
監督・脚本:作道 雄
エンディング歌唱:坂本美雨
1月17日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
©「君の忘れ方」製作委員会2024
公式ウェブサイト:https://kiminowasurekata.com/
公式X:@kimiwasu_eiga
公式Instagram:@kimiwasu_eiga
シャツ¥33,000・ニット¥50,600(ENKEL<URU>) “ULTERIOR”のジャケット¥107,800・“THOUSANDS”のパンツ¥68,200 (ともにELIGHT Inc.) シューズ¥63,800(Paraboot)
※すべて税込価格。
※問い合わせ先 ENKEL 03-6812-9897 ELIGHT Inc. 03-6712-7034 Paraboot青山店 03-5766-6688
撮影/大月和弘 スタイリスト/李靖華 ヘアメイク/後藤泰(OLTA) 構成/南 ゆかり