料理人兼格闘家のこめおさんが語る「日本の食材の魅力」
こめおさんは、東京西麻布の日本料理店『割烹こめを』のオーナーシェフであり、ごはんソムリエの資格も保有。さらに、格闘技イベント「BreakingDown」の人気選手としての活動も続けています。
「食べたもので、心身はできています。何をどう食べるかで、体のコンディションは大きく変わってくるんです。いろいろ調べるうちに、食材に興味を持つようになり、米や野菜の生産者である農家さんや、漁師さんのところに行くようになりました。これまでに全国50件以上は行ったかな」
ただ「行く」だけでなく、農作業や漁の手伝いをしており、美味しい食材は手間暇がかかっていると痛感しているそう。
「無農薬や減農薬で米を育てている福島県、愛媛県、岡山県などの農家さんのところに、数日間泊まり込みで行っています。農作業をすると、稲作は日本の伝統技術であり、日照や土の質、水捌けのなど土地の特性を生かして作っていることがわかるんです。僕が行っている農家さんは、農薬を極力使わないところがほとんど。真夏はあっという間に雑草が伸びてくる。それを毎日のように汗だくになって刈っています」
他にも、北海道でアスパラガスを作っている農家さんや、京都府で賀茂茄子を育てている農家さんなどにも行き、フルーツのようにみずみずしい野菜を厳選し、お店でも出しているとか。
「産地に行こうとしたきっかけは、作家・小川糸さん『ようこそ、ちきゅう食堂へ』(幻冬舎)を読んだこと。食べ物に真剣に向き合っている生産者を紹介しており、料理人になるからには、現地に行かねばと思ったんです」
食材をどう料理しようかと格闘しているのが楽しい
食材は全て自然と戦い。先日の極寒の福井県の海で、越前ガニの漁の手伝いをしたそう。また春には山菜を採りに行くのが楽しみだとか。
「そういう食材を、どう料理しようかと格闘しているのが楽しいんですよね。そこで一つわかったことは、その土地でとれた作物と、そこの地域で作られた調味料の相性の良さ。とてもなじみがよく、優しい味わいになるんです。特に塩はそれをよく感じます。塩一つで食材の味がガラッと変わるんですよ。他にも、日本全国各地に、味噌、醤油、酒などの蔵元が各地にあるので、食材とのマッチングを試してみてください」
地元食材×地元調味料のマリアージュを意識すると、『こめおメシ ごはんに合いすぎるおかず&どんぶり』に収録されている60のレシピもさらに美味しく作れそうです。
「でも、あまり難しく考えないでください。疲れて“ウーバー頼もうかな”ってなった時に、あるものでささっと作ることを想定していますから。自分や誰かのために、料理をしている時間って、意外と心が落ち着くというか、満たされるんですよ」 では、レシピより、Oggi読者のために厳選して紹介します。
母ちゃん特製!
もやしとひき肉の激安炒め
材料(2人分)
もやし…1袋
ちくわ…2本
鶏ひき肉…200g
A[めんつゆ( 3倍濃縮) …大さじ2、酒…大さじ1、みりん…大さじ1、顆粒だし…ひとつまみ、万能ねぎ小口切り…少々
作り方
- もやしは洗って水気をきる。ちくわは 輪切りにする。
- フライパンに鶏ひき肉を入れから炒りし、火が通ったらちくわを加える。
- もやしを上から乗せ、触らずに5分程度蒸し焼きにする。
- もやしがしんなりしてきたら、Aを回し入れ、ざっと炒める。器に盛り、万能ねぎを散らす。
「シングルマザー家庭で育った僕に、母が作ってくれた料理です。2人分の食材費は300円と安くて美味かつ超時短。包丁を使うのはちくわだけです。給料日前などにおすすめ」(こめおさん)
トマトのかんたんタッカンマリ
材料(2人分)
鶏もも骨つき肉…1本(300g前後)
塩、こしょう…各適量
じゃがいも…1個
トマト…1個
水…400mℓ
しょうが(すりおろし) …小さじ1
長ねぎの青い部分…1本分
鶏ガラスープの素(顆粒) …大さじ1・1/3
万能ねぎ小口切り…少々
作り方
- 鶏もも肉は調理の30分程度前に冷蔵庫から出し、室温に戻し、塩、こしょうをする。
- じゃがいもは半分に、トマトはくし形に切る。
- 鍋に水と生姜を入れ混ぜ、材料全てを入れ火にかける。沸騰したら弱火にして30分煮込み、スープが白濁してきたら完成。盛り付け時に万能ねぎを飾る。長ねぎの青い部分は臭み消し用なので、取り出す。
「骨からいい出汁が出るので、同じ分量(300g)の手羽元や手羽先でもOK。キノコなどを加えて具沢山にするのもアリ。優しいトマトの甘みがポイント。ダイエット中にもおすすめです」(こめおさん)
ズボライス
材料(1人分)
A[ツナ缶オイル漬け…小1/2缶(35g)、熱々のご飯…150g、卵…2個、バター…10g]
牛乳…大さじ1・1/3
バター. …10g
塩・こしょう…各適量
トマトケチャップ…適量
ドライタイプのイタリアンパセリ…少々
作り方
- Aのツナ缶の汁気を切り、全てを混ぜ合わせてツナご飯を作り、器の片側に盛る。
- 卵に牛乳、塩、こしょうを加え、溶き混ぜる。フライパンにバターを熱し、 溶き卵を流し入れる。菜ばしで手早く 混ぜ合わせ、ゆるめのスクラングルエッグを作る。
- ①の綱ご飯の横に、スクラングルエッグを盛り、ケチャップをかけ、イタリアンパセリをふり完成。
「ご飯は炒めず、卵は巻きません。何も作る体力がないという時に、ピッタリですよ。ボリュームもあり、タンパク質もしっかり摂れます。卵をゆるめに加熱するのがポイント」(こめおさん)
こめお流 市販のお米のおいしい炊き方
どれもご飯に合う、かんたんな料理ばかり。ご飯をこよなく愛するこめおさんに、市販の普通のお米のおいしい炊き方を聞きました。
「それは、炊く前に1時間ほど浸水(水につける)させることです。お米を水に浸けるとでんぷんが分解されて糖ができる。また、お米の中心まで熱が通りやすくなるんですね。だから、浸水させると甘くふっくらしたご飯になるんです。浸水時間の目安は、冬は1時間、春は45分、夏は30分くらいです」
浸水時間はお米の状態によっても変わるので、あくまで参考に。お米屋さんなどで聞いてみてもいいかもしれません。
こめおさんは、レシピ集『こめおメシ ごはんに合いすぎるおかず&どんぶり』の印税を全額、被災地と子ども食堂に寄付します。
「僕は母子家庭だったから、夏は福島県に住むじいちゃんの家に預けられていたんです。このじいちゃんが勉強やしつけにうるさくて、子供心にむちゃくちゃ怖かった。僕が高校1年の時に、東日本大震災が起こって、じいちゃんが被災しました。高校生だったから、何かしたくても、何の力もなれなかった。当時、80歳くらいだったじいちゃんはボランティアの人にお世話になり、“温かいご飯がありがたかった”と話しており、いつか僕も力になりたいと思っていたんです」
こめおさんのお祖父さんは、今もお元気で暮らしているとのこと。
「ボランティアのかたがいたから、じいちゃんは今も生きている。この13年間、東日本大震災には心を寄せており、復興には本当に時間がかかると感じています。まだ、それは続くと思っていて、僕は並走していきたいんです。子ども食堂への寄付は、僕が子どもの頃、お腹を空かせていた経験があることから、寄付を決めました」
食を通じて、日本の良さを知るだけでなく、困っている人に伴走したいと語るこめおさん。最後に「ご飯はエネルギー源になるので、茶碗1杯程度なら太りませんよ」と教えてくれました。おいしいご飯を食べれば元気になりまる。そして、今日も明日も楽しく生きていこうという活力も湧いてくるはずです。
『こめおメシ ごはんに合いすぎるおかず&どんぶり』(こめお著 1,760円)
料理人&格闘家のこめおさんの初レシピ集。TikTokやYouTubeでバズった動画のレシピを60収録。あり合わせの食材で短時間で作れるのに、味、見栄え、ボリューム。すべてが完ぺき。料理初心者も楽勝のレシピ集。
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こめお
1995年3月7日生まれ。東京都出身。ごはんソムリエ。創作和食「割烹こめを」(東京都麻布十番)のオーナー兼料理人。2022年3月、格闘技イベント「ブレイキングダウン」に初出場し、“闘う料理人”としてたちまち人気者に。TikTokでの料理動画も好評を博し、現在、SNS累計フォロワー100万超(2023年12月時点)を誇るインフルエンサーでもある。「割烹こめを」で腕を振るうかたわら日本各地を飛び回り、お米を中心とした良質な食材の収穫に励むとともに、“美味しいは創れる”をコンセプトにしたファンコミュニティ「RICE」も運営。さらに全国の子ども食堂の支援にも力を入れており、食をめぐる多岐な活動をこなしている。