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早々にロンドン脱出!
コロナに倒れていたため家探しのスタートダッシュが出遅れた私は、Airbnbの契約期間に合わせた引越しができなそうな予感がしていた。なんとか申し込みまで進んだ家の入居日は、Airbnbの退去日から3週間も先だ。
もう一度新しいAirbnbで滞在先を探すも、直前の予約はかなり高額。この値段を払ってまでロンドンにいる必要あるのか? と元も子もないことを考え始めたときに、1人の友人の顔が浮かんだ。
女子大時代の友だちが去年からマレーシアに駐在していて、遊びに行くよと口約束をしたまま私はロンドンに来てしまったのだった。
さっそく彼女に連絡をして、しばらく家に置いてもらえないかと打診すると「寝室がもう一つあるから好きなだけいていいよ」と、太っ腹な答えをもらう。持つべきものはワールドワイドな友。
いざマレーシアだ。楽天プレミアムカードの恩恵で獲得したプライオリティ・パスがあるので、空港にさえ着いてしまえば快適に過ごせる。
しばしのお別れとなるフィッシュ&チップスを食べて、いざロンドン脱出!
突然のフライトキャンセル
と思ったら、フライトが遅延している。まあ、トランジットに5時間あるし…… としばらく悠長に構えていた。
結論からいうと、フライトがキャンセルになった。こんなことは人生で初めてだ。本当にあるのか、フライトキャンセル。しかも振替の予定は未定だという。こんなときに限って、手厚い日系ではなくサポートの薄いイギリスの代理店で航空券を手配した自分を呪う。
とにかくマレーシアで待つ友人に連絡を入れる。21時に発つ予定だったのに、明日のことは明日にならないと分からない! と、航空会社のスタッフになかば逆ギレされながら乗客まるごと連れていかれたホテルは、幸いマリオット系列の綺麗なところだった。
深夜、同じ便の乗客たちでごった返したロビーで、並んでいるのかいないのか分からないような状態からようやくカードキーを受け取る。部屋に入って時計を見ると深夜2時を過ぎていた。くたくただ。
熱いシャワーを浴びて、髪を乾かして、むくみ取りソックスを履いて、パリッとしたシーツとふかふかのダブルベッドに滑り込む。
交渉で必要なのは、、、
翌朝、私は交渉の鬼となる必要があった。提示された代替のフライトはトランジット3回、予定より27時間遅れで到着するというスケジュール。ヒースローからクアラルンプールまでは直通便があるのに、そんなバカな……。
英語はどのくらい話せるの? と聞かれたとき、“海外旅行で困らない程度”だと答えてきた。こうなると、ちょっと自信がなくなってくる。
引率のスタッフ、チェックインカウンター、チケットカウンターへとたらい回しにされ、行列に並び4時間。このスケジュールは絶対に受け入れられない、あなたたちは私を一刻も早く目的地に連れて行く義務がある、私が調べたこのフライトを取ってくれ、まだチケットが取れるはずだから! と主張し続けた。
こういうときに必要なのは、最低限の語彙とシンプルな英語、あと抑揚だ。渡英前にハマったNetflix制作のリアリティ番組『セリング・サンセット ~ハリウッド、夢の豪華物件〜』は、働く強め美女たちが登場して、たくさんケンカをするのだけれど、その会話が今回かなり参考になった。彼女たちを参考にしたイントネーションで「I never!」と何度言ったか分からない。
そして勝ち取りました、直行便。たどりつく前から本当にくたくた。だけど、この窮地をなんとか自力で乗り切れたことはちょっと誇らしい。
有給を半日無駄にさせてしまった友だちに連絡する。申し訳なさすぎる。今度こそいざ、ロンドン脱出!
#6につづく
小西 麗
1993年生まれ。日本女子大学卒業。モデルを経て、編集者・ライター。雑誌媒体を中心にインタビューや特集記事を作成。「男性同士のアツい関係」の意であるブロマンス好きが高じて、コラムの寄稿も。2022年、YMSビザで渡英。現在ロンドン在住。
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