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LIFESTYLE

2022.11.18

英国料理“サンデーロースト”? 今の私は人に与えられるものが何もない【29歳渡英日記_03】

仕事もプライベートもしだいに充実してくる、30代。そんな年代を目前にして迷うこともあります。海外に住むことを考えるなら、今何をすべき? 29歳のエディトリアルライター・小西麗が等身大の海外生活をお届けします。〈29歳渡英日記 #3〉

▶︎前回の記事はこちら

身体と心をほかほかさせるサンデーロースト

身体と心がくたくたになっているのを感じながら、ひとまずSNSに無事渡英したことを記すと、短期語学留学中だという知り合いの知り合いからInstagramでDMが届いた。

日曜日にだけ食べられるイギリスの伝統的な料理“サンデーロースト”でランチをしないか? というお誘いだ。

待ち合わせはロンドンの中心街・Piccadilly Circus駅。二階建ての赤いロンドンバスに揺られて向かう(本当によく揺れる)。二階の先頭は街をぐるりと見回せる特等席だ。

街を歩く人々の服装はダウンだったり、半袖だったり、ウールのロングコートにマフラーだったりで、ちぐはぐな感じがする。気候に対する正解の服装が他人から窺い知れない。信じられるのは自分の体感温度だけらしい。

2階建ての赤いロンドンバス

メッセージをくれた彼女は、私より一ヶ月前に渡英した少し歳上のお姉さんだった。

転がるようにロンドンに来た、会ったばかりの私に「来たばかりの私が知りたかったこと、全部教えるから!」と、おいしいパン屋さんとそうでないパン屋さん、アジア系の食品が買える場所、リーズナブルなスーパーやお菓子がおいしいスーパー、畳み掛けるように本当に全部を教えてくれた。

「またすぐ会おうね」と、クリームティー(スコーンと紅茶のセットのこと)にも誘ってもらって、なんでこの人はこんなに優しいの……? とちょっと戸惑った。与えられるばかりで、今の私には返せるものがぜんぜんない。“海外に住む同じ日本人”というだけで、自分は人をこんなに良くすることができるだろうか(いや、できない)。

サンデーロースト

お肉と野菜とシュークリームの皮みたいなふしゃふしゃのヨークシャープディングを、グレービーソースとホースラディッシュでいただくサンデーロースト。ボリューミーであったかくて食べ応えがあってとてもおいしい。

ヒースロー空港のカフェで食べたEnglish Breakfastは、まだいろんなことが不安でちゃんと味がしなかったから、ロンドンに来て初めてちゃんとした食事をしている気がする。身体と心がほかほかした。

ノーマスク生活のロンドンで…

週が明けて、BRPカード(イギリスの滞在許可証)を郵便局に取りに行ったり、暮らすための諸手続きに奔走。まだ少し歩くだけで腰が砕けそうに痛むし、喉もちょっと痛い気がする。

なんとなく身体が軋む気がして、ストレッチをしてみた。まだ食料の買い出しに行けていないから、日本から持ってきた鶏ガラスープとワカメだけのスープを飲む。

鶏ガラスープとワカメのスープ

ヨーロッパの乾燥した空気が光をきれいに見せるのか、悲しいごはんもちょっとおしゃれに写る気がする……? スープをすするうちに、熱っぽくなってきた。念のため、先手を打って薬を買いに行こう。ついでに食料も。

この日の私の選択は正しくて、そのあとだんだん熱が上がり、薬を飲んで一日寝込んだ。熱は下がったものの、“熱っぽさ”というのか、言葉にしがたい体調の悪さがなかなか治らない。

結果から言うと、コロナだった。ロンドン生活、一回休み。幸先悪すぎ。

#4につづく

小西麗

小西 麗

1993年生まれ。日本女子大学卒業。モデルを経て、編集者・ライター。雑誌媒体を中心にインタビューや特集記事を作成。「男性同士のアツい関係」の意であるブロマンス好きが高じて、コラムの寄稿も。2022年、YMSビザで渡英。現在ロンドン在住。Twitter

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