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LIFESTYLE

2021.07.12

話題の長編小説は日本とタイの二拠点初恋物語。タイ在住作家・一木けいさんインタビュー<前編>

2018年、デビュー小説『1ミリの後悔もない、はずがない』が「ヒリヒリとする恋愛小説」と評されて注目された一木けいさん。最新作である長編小説『9月9日9時9分』が、「感情をわしづかみにされる」「みずみずしい描写」などと注目を集めています。

タイで教えられた「好きなように」のおおらかさ

小説『9月9日9時9分』は、バンコクからの帰国子女の漣(れん)という女の子と家族を中心にした物語。初恋、親子や姉妹関係、部活動… と、誰もが経験する要素が題材ではあるけれど、タイの光景やタイならではの考え方を織り交ぜているところに、一木さんらしさがあります。

「タイに住んでいると、よく言われるんです。『そんなに深く考えること、ないよー』『好きなようにしたら』と。あまり深刻にならず、がまんもせず、本音を言って好きなものを食べればいいじゃない、と。私もその考え方に影響を受けましたし、ずいぶん変わりました。そしてこの小説にもそれは反映されています。

人づきあいにおいては、こちらがオープンにすれば、どこまでも入ってくるけれど、自分の時間を大事にしたいと伝えれば、そっとしておいてくれる。執筆活動に専念できるいい環境です」(一木さん)

▲タイ生活のひとコマ・その1/道端で見つけた人形とお供えもの。仏塔はもちろん、街のあちこちに祈りの対象があるのがタイならでは。大きな仏塔がある場所を通ると、タクシーのドライバーさんも、たとえ運転中でもワイ(合掌)をする人もいるのだとか。

執筆となれば、苦しくても向かい続ける

一木さんの執筆活動は、早朝(といっても深夜1時、2時!)から始まって、昼くらいまでというリズム。これはタイだからというわけではなく、学生時代も試験前などはそのサイクルだったそう。

「『これが書きたかった!』という一文を書けたとき、思ってもみなかった言葉が出せたとき、それがいちばん幸せな時間です。小説『9月9日9時9分』でいうと、最後の50ページほどがそうでした。ただ、書いている最中は結末が見えなくて、何度も書き直し、苦しい時期もありました。そんなときは、好きな作家の本を読んで、それから再度自分の本に戻ります。すると、この文章がダサいな、とわかり、改稿がはかどることもありました。

日常生活では『深刻に考えすぎず、好きなように』ですが、執筆となると、どんなに苦しくても向かい続けます。他のことは、たいてい逃げますけどね(笑)」(一木さん)

▲タイ生活のひとコマ・その2/執筆の仕上げ段階で、数日ステイしたホテル「バンコク・パブリッシング・レジデンス」で。フルーツはホテルからの差し入れ。古い印刷工場を改装した場所で、デスクのライトの調整など、サービスもゆきとどいていた。

高校生の話なのに、大人も胸がキュっとなる

小説『9月9日9時9分』のもうひとつの魅力は、誰もが青春時代に体験するであろう繊細な感情や、初恋の苦しさ・幸せ感が、リアルに描かれていること。

「書くときは、自分自身の10代のころを思い出しながら。書く体勢になれば不思議と思い出すものですし、好きになっちゃいけない人を好きになる感情、秘密をもつことなど、10代だけでなく大人にもある感情ですよね。私自身は…、中高校生のころは秘密ばかりだったし、学校をサボったこともありました。この作品中、ある女の子が、親に反対されて恋人と会わない決断をしますが、私だったら無理! 自分の恋愛なんだから親も家族も関係ないし、なんとしても会いに行くだろうと思います。

主人公の漣はとてもいい子だけれど、かといってきれいごとだけを書かないようにと、意識しました。読む方には、汚い心や秘密をもってしまうこと、大事な人をときには裏切ってしまうこと、そういう思いを抱いてもいいんだな、と感じてもらえたら。私自身もそうでしたから。そういえば、古い友人いわく、学生時代の私は『やりたくないことはやらない』『意思を曲げない子』だったらしいです」(一木さん)

▲タイ生活のひとコマ・その3/滞在したホテルの庭。ジャングルのような木々が南国らしい。

<後編>では、小説『9月9日9時9分』が大人の心にも響く秘密を探りつつ、一木さんご自身におすすめシーンをピックアップし解説していただきます。

タイの写真撮影/一木けい
取材・文/南 ゆかり

一木けい(いちき・けい)

1979年福岡県生まれ。東京都立大学卒。2016年「西国疾走少女」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。同作を収録した『1ミリの後悔もない、はずがない』が業界内外から絶賛され、華々しいデビューを飾る。他の著書に『愛を知らない』『全部ゆるせたらいいのに』がある。現在、バンコク在住。

『9月9日9時9分』

バンコクからの帰国子女である高校1年生の漣(れん)は、日本の生活に馴染むことができないでいた。そんななか、好きになった先輩と距離を縮めるが、彼は好きになってはいけない人だった。漣の「初恋」と「青春」、そして決意には、大人も気づかされることも多い。初版印税はDVや依存症の更生・治療に携わるグループ・施設へ寄付される。


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