2大オスカー女優のリアルな演技に圧倒!
残りの人生の生き方を考えさせられる濃密なヒューマンドラマ
デンマーク映画の『サイレントハート』を、その脚本家クリスチャン・トープ自身がアメリカでの映画化に向けて脚色した本作。『ノッティングヒルの恋人』や『ウィークエンドはパリで』で知られるロジャー・ミッシェルを監督に迎え、静謐な時間のなかにユーモアを交えながら、安楽死を決めた母と家族の残された時間を描き出す。
主演に、スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレットという2大オスカー女優が抜擢され、ふたりの初共演も話題を呼んでいる今年最高の感動作の魅力に迫ります。
今回は、この映画の宣伝を担当している佐々木紀子さんに、見どころをうかがっていきます!
◆病状がすすむ母の決断に心揺れる娘たちの葛藤が描かれる
病が進行していくなかで、徐々に体の自由がきかなくなり、安楽死を決意したリリー(スーザン・サランドン)は人生最後の週末を海辺の自宅で家族と過ごそうとしていた。長女ジェニファー(ケイト・ウィンスレット)は母の決意を受け入れているものの、精神的に不安定になり、夫や息子にきつく当たってしまう。
一方、次女のアナ(ミア・ワシコウスカ)はこれまでほとんど家族に顔を見せなかったにもかかわらず、母の決意を断固として受け入れず、ジェニファーと対立。しかし、ジェニファーがある秘密を知ってしまうことによって、事態は思わぬ方向に進んでいき…。
「あるひとつの家族が過ごす3日間を通して“自分の人生における大切なこと”をあらためて考えるきっかけになるような作品です。そして『素直になりたいけれど、なれない人』が身近にいる人にはぜひ見て欲しい! きっと、この映画を観た翌日からは素直になれると思います。
また、スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレットという2大オスカー女優の演技合戦は、ぜひスクリーンで味わっていただきたいです! 元々母親のリリー役には別のキャストが配役予定でしたが、どうしてもスケジュールの調整がつかず、この世代の象徴的な役者であるスーザンのエージェントに連絡。そこから彼女に脚本を送って4時間後にはOKの返事がきて叶ったという、奇跡のような偶然によるふたりの貴重な初共演は見逃せません。
そして本作は『家』という閉じられた空間が舞台であるからこそ、観客もその場にいるような気分で彼女たちの心の動きを一緒に追い、感じることができます。きっと贅沢な時間を過ごせるはずです」(佐々木さん)
◆「大切な人が自ら望む死」という難しい問題にどう向き合うべきか、そのヒントをもらえる映画
母の安楽死という決断に、心が揺れ動く家族の姿が繊細に描き出された本作。大切な人が自ら死を選ぶという場面に直面したとき、どのように向き合ったらいいか。自分のこととして考えにくいと思う人も、考えるきっかけをもらえるはず。
「実際、自分がリリーの家族と同じような立場に置かれたら、どのような考えに至り、どのような行動に出るのかということは簡単には答えられません。どういった事情であれ、私個人としては次女のアナと同じく、大事な人が命を絶つということには全力で反対すると思います。
でも大事なのは、その人の決意を受け入れるのが正しいのか、反対するのが正しいのかといった正解を導くことではなく、当人の気持ちに寄り添って『考える』ことだということをこの映画が教えてくれました」(佐々木さん)
◆舞台となるリリー、ジェニファー夫婦が暮らす海辺のおしゃれな家や大自然の風景に癒される!
ほとんどのシーンが家のなかで撮影されたもので、その家がとても洗練されていておしゃれ。また、家族みんなで家の周辺を散歩するシーンでは、雄大な自然に心癒され、外出が制限されている今だからこそ「こんな家や自然に癒されたい!」と思わず妄想してしまう人も多いはず。そんな素敵なロケ地にまつわる秘話に迫ります!
「ロケ地を探しているときに、ケイト・ウィンスレットが映画の舞台であるコネチカットの風景と似ている自宅近くの場所を監督に直接提案したことが、このロケーションで撮影することになったきっかけです。
最初、監督は半信半疑だったそうですが(ケイトが『自分の自宅と撮影現場が近いと通いやすいからそこで撮影したいんだ』と、思っていたそう(笑))、あまりにもケイトが推薦するので実際に建築物を見に行ってみると、まさに彼が思い描いていた風景にぴったりの家だったらしく、即決したとおっしゃっていました」(佐々木さん)
これまで当たり前の存在だったからこそ、互いに言えなかった本音や秘密。それらが母の安楽死をきっかけに、あふれ出す家族たちのリアルな心情描写に胸を打たれて、「家族とは何か?」を改めて考えさせられる映画。「素直になりたいけれど、なれない相手」がいる人にぜひ見て欲しい。
【information】
『ブラックバード 家族が家族であるうちに』
監督:ロジャー・ミッシェル
脚本:クリスチャン・トープ
出演:スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレット、ミア・ワシコウスカ、サム・ニール、リンジー・ダンカン、レイン・ウィルソン、ベックス・テイラー=クラウス、アンソン・ブーン
2019年製作/97分/PG12/アメリカ・イギリス合作
原題:Blackbird
配給:プレシディオ、彩プロ
6月11日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開。
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取材・文/正木爽(HATSU)