おしっこは美容に効果的? 尿にまつわるあれこれ
最近は、腸内細菌が流行ですので、「便」の話は、健康とか美容で欠かせないテーマになっています。医学的には「おしっこ」は健康情報の宝庫で、「おしっこ」なくして医学は語ることはできません。そして、意外にも「おしっこ」は美容にも直接、関係しているのをご存じですか?
今日は、「便」に負けないほど健康と美容に欠かせない、「おしっこ」の話をしようと思います。医学部の学生時代に、生理学の教授が「君ら、おしっこは決して汚い物じゃないんだよ!」と力説していたのを今は理解できます。
美容に欠かせない「尿」の成分は?
まず、おしっこは、医学用語では「尿」といいます。尿ってなにでできているか知っていますか?
結構色んなものが入っているんです。例えば、アミノ酸(タンパク質の分解産物)、クレアチニン(筋肉運動の残骸)、ミネラル、などなど。
そして、「アンモニア」と答える人は多いかもしれませんが、間違いです。確かにアンモニアも少量は入っているのですが、基本的にアンモニアは「毒」ですので、この毒を肝臓で「解毒した物」にして「尿」に出しています。アンモニアを解毒してできるのが「尿素」と言う物質です。
実は身近な「尿素」
この、おしっこに含まれる「尿素」。美容に興味のある方はどこかでみたことありませんか?
そう、スキンケアのクリームの主成分に「尿素」とか「ウレア」と書かれていますよね。ウレアは尿素を英語に置き換えただけです。「尿素」と言われるほどですから、尿の素。原理で言えば「味の素」と同じ命名方法です。この「尿の素」がなぜ、スキンケアのクリームの主成分なのか??
この「尿素」、化学物質の特性として、保水効果がある、窒素が多く含まれる、吸熱効果がある等の特徴から工業的にも美容的にも色々と重宝する化学物質なんです。
とりわけ、保水効果は、皮膚の乾燥防止、保湿効果に利用でき、しかも、生体内からも毎日できてくる「安全かつ清潔」物質。ということで、美容目的に利用しない手はないということです。勿論のことですが、スキンケアのクリームに入っている「尿素」は工場で化学合成するので、決しておしっこを原材料としているわけではありません。
尿素は古くから注目されていた?
でも、その昔、尿素が化学合成できなかった時代はどうしていたか、ご存じですか?
鳥の糞に「白いべちゃっ」としたところありますよね。あの白い部分は実は、尿素なんです。昔、女性が、ウグイスの糞をお化粧品として使っていたという話があるのです。昔のヒトは経験的に尿素の保水、保湿効果を知っていたのかもしれませんね。
この話も、「君ら、おしっこは決して汚い物じゃないんだよ!」という科学的学説にも合致していますね。とかく、肌が乾燥しがちなこの時期に、皆さんも、一度、「尿素」配合のスキンケア製品を試してみてください。
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国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ