店主のひたむきな努力を感じるかき氷〈新人作家のかき氷探訪記〉
小説『氷と蜜』の著者、佐久そるんです。
かき氷が題材の『氷と蜜』には、数多くのかき氷のお店と、それを食べ歩く愛好家の人たちが登場します。主人公たちは訪れたお店で、シロップの組み合わせのヒントをつかむことになりました。
壁に描かれたハイビスカスの花。メニューボードには、見た目にも華やかなかき氷たちが咲いています。
ご紹介するのは、大阪の福島区に店を構える『かき氷専門店&スイーツえびす』さんです。
◆大阪市福島区福島|かき氷専門店&スイーツえびす
小説に登場した、オレンジとコーヒーのかき氷。書くきっかけは、昔こちらでいただいたかき氷でした。
あれから数年。新しくなったコーヒーのかき氷に、気持ちが高ぶります。
亜酸化窒素をもちい、食材をふんわりとした細かい泡状にしたエスプーマは、塩味をきかせたマスカルポーネです。上にはコーヒー粉がまぶされ、オレンジの果実が飾られています。広がりを感じる苦味と爽やかな酸味の対比が、なんだか面白い。
コーヒーシロップが満遍なくかけられた瑞々しい氷の中には、クセのある味わいの酒粕クリームが隠されていました。散らされたオレンジピールが、心地よいアクセントになります。最後に現れるフルーツ酢のシロップは全体の印象を引き締め、味の輪郭を際立たせています。なんとも、おいしい。
以前はフルーツ酢をメインシロップにしたかき氷も出されていましたが、いまは隠し味として使われています。メニューは、どんどん新しいものに入れ代わっていきますよ。
他にはどんなかき氷があるのでしょう。ちょっと食べてみましょうか。
ぷりっとしたチェリーが飾られたかき氷は、チョコシロップがかけられています。中に入ったとろけるチェリーのアイスクリームや、コクのあるキャラメルソースと混ざり合い、まるでパフェのような味わいに。
しゅわっとくる微炭酸のエスプーマの上には、みずみずしい三種の果物が。マンゴーソースにピーチミルク、中に入っているのは洋梨のアイスクリームとラスクです。
白いかき氷には、桃を贅沢に使っています。フレッシュな桃の果実に、とろっとした桃のソース。ほどよい甘みの桃のシロップが、喉をうるおします。中にはバタークッキーとバニラアイス、だめ押しの桃の果実です。
「そんなに食べれないよー」という声が聞こえてきそうですが、そういうときにはミニサイズで注文しちゃいましょう。いっぱい味見できますよ。
かつて創作のヒントをくれたかき氷は、ひと工夫も、ふた工夫も加えられ、さらにおいしく進化していました。削り手さんのひたむきな努力を感じる一杯です。負けていられない。
熱意が花咲く一杯を、どうぞめしあがれ。
【かき氷専門店&スイーツえびす】
住所:大阪市福島区福島7-5-2 ダイシン福島ビル2階
TEL:06-6451-5151
7月は火曜定休
8月は定休日無しの予定
インスタグラム:@ebisukakigoriten
佐久そるん
大阪生まれ、大阪育ち。5年ほど前から小説の執筆をはじめる。2019年『氷と蜜』が第1回日本おいしい小説大賞の最終候補に選ばれ、刊行に向け改稿をスタート。2020年6月、同作で作家デビュー。かき氷の魅力が詰まっていると『氷と蜜』は話題に!
甘いものに目がなく、まめに食べ歩く。パンケーキ、パフェと続いてここ3年はかき氷にハマっている。コロナ禍の自粛期間中は和洋菓子をお取り寄せしてお店を応援。現在は再開したかき氷店へ著書を持って行脚の日々。