Netflixで観られる韓国ドラマ『梨泰院クラス』の魅力
『愛の不時着』と並んでNetflixで上位に君臨し続ける韓国ドラマ『梨泰院クラス』。連日数々のメディアで特集され、これまで韓流に無関心だった層まで取り込んで話題をさらっています。巷に主人公パク・セロイの髪型を真似る男性が現れるなど、社会現象とも言えるほどの人気ぶり。
原作は韓国のデジタルプラットフォームに掲載され話題となったWEBマンガで、真っ直ぐなサクセスストーリーが非常に痛快。パク・セロイが底辺から愚直に這い上がり、宿敵である外食業界トップ企業・長家に挑んでいく様は、きっと誰しも胸が熱くなるはずです。
物語はセロイの『信念を貫く生き方』を軸に進んでいき、プライドとはどういうものか、仲間を信じるということ、経営者としての器とは… など考えさせられる深いテーマがいくつも盛り込まれています。
セロイは決して言葉数の多いタイプではないのですが、だからこそ一つ一つのセリフに重みがあって、人柄そのものを表したような力強い言葉にハッとさせられます。
▲Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中(全16話)
「憧れの美女」と「失えない女」。男が最後に選ぶのは…
▲Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中(全16話)
そして、女目線でこのドラマを見るときにやはり気になるのは、セロイの初恋の相手であるオ・スアと、セロイに直球アプローチで攻め続けるチョ・イソの激しい女のバトルではないでしょうか。
ふたりとも強気で仕事のできる有能な女性ですが、興味深いのは、スアとイソの恋愛に対する姿勢が真逆であること。ふたりのセロイに対するアプローチは対照的です。
実は私のInstagramで『あなたはスア派? イソ派?』というアンケートを行ったところ、男性票も女性票も「美人だから」という理由でスアが圧勝してしまったのですが(笑)、後半じわじわとイソの魅力の虜になった! という女性の意見も多く寄せられました。
◆スアの恋愛:与えられて当たり前
▲Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中(全16話)
セロイが高校時代に出会い始めて恋に落ちるオ・スアは、完璧な美貌と抜群のプロポーションを誇る、いわゆるS級美女。
不幸な生い立ちゆえの屈折や影、安易に他者を寄せ付けない凛とした魅力もあって、15年ものあいだセロイの心を掴んで離しません。またスアは相手にもしませんが、韓国外食業界トップ企業・長家の長男で、セロイの宿敵であるグンウォンからも長らく想いを寄せられています。
そんなわけで生来のモテ女であるスアは「与えられて当たり前」と思っている節が… 大人になってからの言動にも、そういう高慢さがチラホラ垣間見えます。
まあ、それも仕方ない気もします。美人でスタイル抜群で色気もあって頭も良くて仕事もできる、パーフェクト美女なのだから。
しかしそんなスアにも唯一、弱点があります。
幼い頃に母親に捨てられたスアはトラウマを抱えており「自分がいちばん可哀想」という卑屈な考えを捨てられずにいるのです。
それゆえどうしても自己保身に走ってしまう… その弱さが、生き方においても恋愛においても、スアを延々と苦しめていたように思います。
◆イソの恋愛:与え続けて、必要な存在になる
▲Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中(全16話)
一方のチョ・イソは、スアとは根本的に真逆。自己保身とは無縁の人生を歩んでいます。
ソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)と診断された過去を持つイソは、勝負に勝つためや欲しいものを手に入れるためなら他者を攻撃することに一切の抵抗なし。そのため幼少期から周囲とのトラブルが絶えないのですが、しかしそんな娘を母親は決して非難しません。
「あなたは特別よ」と言い続けてくれる母親がそばにいたおかげで、イソはそんな自分に絶対の自信を持つことができた。最近よく耳にする、自己肯定感の高い女性に成長しました。
「私は優秀だから、成功も愛もすべてを手に入れられる」
揺るぎない自信を持つイソは、親にも内緒で大学進学をやめ、セロイが経営する飲食店『タンバム(*甘い夜、という意味)』を手伝い始めます。
そう、ここもスアと対照的です。彼女は最初から与えることを厭わないんですよね。
彼が喜ぶことは何か。彼が何を必要としているか。どうすれば彼の苦い人生が甘くなるか–。
イソの言動は、いつだってセロイのため。しかもイソの場合、与える=自己犠牲で終わらせないのが只者じゃないところです。
イソは『タンバム』のマネージャーに就任しているので彼の成功は自分の成功でもありますし、さらにはイソが彼のために力を発揮すればするほど、彼女はセロイの人生にとって失えない唯一無二のパートナーになっていく…。
これこそが「成功も愛も手に入れる」ための、イソなりの作戦だったというわけです。
スアにしてみたら、とんでもなく恐ろしい強敵ですよね(苦笑)
――憧れの美女・スアと、失えない女・イソ。
『信念を貫く男』であるパク・セロイが最後に選んだのは、果たしてどちらの女性だったか?
まだ結末を知らないという方は、ぜひ今すぐドラマ『梨泰院クラス』で確認してみてくださいね。
TOP画像/Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中(全16話)
安本由佳
慶應義塾大学法学部法律学科卒 化粧品メーカー広報、損害保険会社IT部門で勤務したのちフリーランスへ。2015年から軽井沢に住まいを移し、ホテルやカフェのPRに従事するほか軽井沢暮らしを紹介するコラムを連載中。2016年〜2020年1月 東京カレンダーWEBにて執筆。男女のリアルな恋模様を描いた小説が話題を呼び、秋に書籍出版を予定している。