韓ドラ『愛の不時着』『梨泰院クラス』からブームの秘密を探る!
主役のヒョンビンが『週刊朝日』の表紙を飾り、その掲載号はバカ売れしている韓国ドラマ『愛の不時着』。さらに『梨泰院クラス』もNetflixのランキングで上位を守り続けています。韓流ナビゲーターの田代親世さんと韓流エンタメが大好きな3人の読者が、韓ドラブーム再燃の理由についてオンライン上で語りつくしました。
〈今回の参加者〉
A子:化粧品PR 30代/『冬のソナタ』以来、ドラマ、K-POP、ミュージカルまでおさえている韓流大好き女子
B子:音楽関係 20代/東方神起に始まり、好きがこうじて韓流エンタメの仕事に就いたプロの韓流好き
C子:ライター 30代/『美男ですね』以来、ドラマ、K-POPとともにある生活を送るベテラン韓流ファン
◆あり得ないと思いながら3日で一気観!
▲Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中(全16話)
田代「黒柳徹子さんも一気観したそうですし、ハマって寝る間を惜しんでどんどん観ちゃったという人が多いですよね。藤田ニコルさん、佐々木希さんも好きだと言っていましたよね」
A子「EXILEの岩田剛典くんもキュンキュンすると言ってました。橋下徹さん、テリー伊藤さん、笑福亭鶴瓶さんも観たそうですよね。私はひとり暮らしの在宅ワーク生活で誰にも会わないから、近所の酒屋でお酒を買って、飲みながら夜中まで不時着を観るという生活を送っていました(笑)」
B子「昔のように廃人にはならないぞと言い聞かせながらも、最後の5話ぐらいはわーっと観ちゃいました。食事もテキトーになるし、どうしても夜型になりますよね」
C子「私の周りには、久しぶりに3日で一気観やっちゃったといっている人が何人かいました。あり得ないと思いながらも、私も続いて一気観しちゃいました」
田代「住む世界が違う二人が、たくさん障害があるのに恋に落ちる、という王道の物語なんですけど、やめられないんですよね。私もこんなにハマったのは久しぶりでした」
A子「正直なところ、私も悪役のチョ・チョルガン(オ・マンソク)と主人公リ・ジョンヒョク大尉(ヒョンビン)が国境を越えて韓国に行くところとか、あり得ないだろうとは思いました。どうしても、北朝鮮と韓国との間のストーリーだと、ファンタジーになるしかないんですよね」
C子「韓国語を教えてもらっている40代の韓国人の先生に『不時着は、現実を忘れて、楽しんで観てください』と言われました。先生が幼い頃から、韓国では北朝鮮は怖いものとして描かれることが多かったみたいですけど、だいぶ変わってきたとおっしゃっていました。不時着を観て、韓国の人たちには、やはり北朝鮮の人たちと仲良くしたいという気持ちがあるのだと思いました。残念ながら北朝鮮は韓国とまた対抗姿勢になっていますけどね…」
B子「やっぱり、韓ドラは現実から離れて、夢を見せてもらえるのがいいんだと思いました。韓流コンテンツ業界のある先輩が、数年前、どの韓国ドラマを購入しようかと探しているときに、『愛の不時着』と同じ脚本家のヒット作『星から来たあなた』で、主人公ト・ミンジュン(キム・スヒョン)が崖でチョン・ソンイ(チョン・ジヒョン)の乗っている赤い車を素手でガシッと止めるシーンで「これだ!」と思い、自分の社で購入したいと心に決めたそうです。この不時着でもファンタジーっぷりが良かったです」
C子「『愛の不時着』では、ヒロインのユン・セリ(ソン・イェジン)が、赤い車でリ・ジョンヒョクを危機一髪で守るんですよね。私はあのシーンで、大コーフンしました。男性に守られているだけじゃなくて女性が守ってあげたっていうことが、なんだかうれしかったです」
◆今どきのヒロインは仕事ができる!
田代「男性が守ってくれるという、すべての女子の心をつかむ要素がありながらも、熱く『オレについてこい』というのではないんですよね」
A子「リ・ジョンヒョクは北にいるときはスーパーヒーローだけど、韓国に来ると逆浦島太郎みたいになって、とまどっているんですよね」
C子「女性が自立した韓国に来ると、今度はユン・セリのほうがリ・ジョンヒョクを救うっていうのが、とってもうまくできていると思いました」
B子「ステイホーム生活で流行った2トップドラマ『愛の不時着』と『梨泰院クラス』に共通するのは、ヒロインがすごく仕事ができるっていうことですよね」
A子「ユン・セリは経営者で外にバリバリ働きに出かけていて、リ・ジョンヒョクはお留守番で戸棚に食料品を並べているっていう場面とか、新鮮でした。演じているソン・イェジンは、かわい子ぶってた時もあったけど、今回は、サバサバしててすごく素敵でした」
田代「昔の韓ドラは、貧しくて健気な女の子が、御曹司に認められてゴールインするのがハッピーエンドでした。しかし最近では、ヒロインもわが道を行く。『愛の不時着』は、その典型! ユン・セリには、お金も力もあるわけですから」
B子「4、5年前までは、健気な女の子が財閥のイケメンに気に入られて『私なんかでいいんですか?』っていうドラマを、何の疑いもなく観ていた気がします」
C子「私たちは、30歳までには結婚して、35までには子どもを産んだほうがいいんだという社会通念の中で育ってきましたよね。うちの母なんか『ありすぎて困らないものは、一つだけあるのよ』と、お金を持っている相手と結婚することが得だと、私を育てました(笑)」
B子「私は、職場で、訳のわからないおじさんの指示に黙って従って、面白くない冗談に笑ってあげるのが嫌になりながらも、そうしなきゃいけないんだと自分に言い聞かせて生きてきました。そこに、『愛の不時着』と『梨泰院クラス』が、昔ながらの社会に逆行していくという恐怖を吹き飛ばしてくれた気がします」
▲Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中(全16話)
田代「『愛の不時着』でユン・セリは、財閥一家の中、兄たちと比べ物にならない優秀さで、ビジネスで結果を出して行っていますし、『梨泰院クラス』では、チョ・イソ(キム・ダミ)が卓越したマーケティング力、プロデュース力で、パク・セロイ(バク・ソジュン)を引っ張って、外食業界を上り詰めていくわけですものね」
C子「そうそう、二人の女性とも、男性主人公よりビジネス社会での能力が高くて、自分の力で道を切りひらいていくっていうのが、観ていて気持ち良かったんです」
B子「韓国は、音楽業界でも、短いスカートで可愛く笑うTWICEが人気No.1アイドルである一方で、“男のいいなりになんかならないよ”っていう実力派姉さん4人組のMAMAMOOもすごく人気があるのを思い出します」
A子「ユン・セリが、マンションでひとりで泣くところは、今までの弱い女の子が泣くのとは違う。経済力も地位もあって仕事もうまくいっても、こういう孤独の問題は抱えているんだって、なんだか身につまされましたね」
田代「『梨泰院クラス』のチョ・イソはソシオパスで、能力は高いのに社会とうまくやっていけないという設定になっていて、ユン・セリと同様、仕事をしていきながら、辛いおもいもする。それが、働いている女性たちの共感を呼んだのが、この2作がヒットしたもうひとつの要因かもしれませんね」
◆サイドストーリーも「するめのように」何度もリピートしたい
A子「不時着では、韓国の詐欺師のク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)と北朝鮮の令嬢ソ・ダン(ソ・ジヘ)のカップルもみんな大好きだし、ジョヒョクの部下の4人組は最高だし」
B子「それぞれのお母さんたちとか、北朝鮮のおばさんたちとか、ユン・セリの部下たちとか。サイドストーリーも本当によくて、何度見返しても味のある、するめのようなドラマですよね。佐々木希さんにも、嫌なことを忘れるのにリピートしてもらいたいです」
田代「制作はスタジオドラゴンという韓国ナンバーワンの制作プロダクション。力のある作家とともに、世界市場で売れることを前提に、時間もお金もかけて作ったことが伝わってきました」
韓ドラのブームの再燃は、たまたま外出自粛で時間があったからではなく、作品が持つ魅力が大きかったことが実感されます。もう一度、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』を観直したり、他の作品も観たくなりますね。
TOP画像/Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中(全16話)
構成/新田由紀子
田代親世/たしろ ちかよ
韓流ナビゲーター。テレビ・雑誌などで、韓流ドラマを紹介している。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」、会員制韓流コミュニティ「韓流ライフナビ」を主宰。