海外で病院にいくと高額な医療費を請求されるってホント?
海外旅行と違って、終わりが見えない駐在生活。言葉や文化が違う異国で、体調を崩したら一大事です。ヨーロッパは全体的に社会保障制度が確立されていますが、国によってその内容はさまざま。
デンマークやスウェーデンは一定の条件(納税期間一年以上等)を満たしていれば、外国人であっても日本に似た公的医療保険への加入ができたりしますが、ドイツやスイスはそれぞれの国内で販売されている保険に加入する必要があったりします。
よく「日本の保険や医療制度はすごい!」ときいたりしますが、ヨーロッパもアメリカも、(日本との医療制度や医療事情が違うので)、費用が高額になることが珍しくありません。
今回は、ドイツの歯医者さんで歯石除去をお願いしにいったときのびっくりエピソードをご紹介します。
◆事前に保険会社に見積もりが必要だった! すぐに予約はできたけど…
駐在員の家族たちは、「大事な情報を聞き逃したくない」「正確に伝えたい」という想いから、日本人のドクターがいる病院へいくか、専門の治療が必要なときは、語学が堪能な人でも医療通訳を利用するケースが多かったです。
私が住んでいた町には、幸いにも医療通訳のサービスが付いているドイツ人歯医者さんがいたので、さっそく電話で予約。すると「先に見積もりをしますので、保険会社を教えてください」と、言われてしまいました。
歯医者に行くのに、見積もり? と驚いたのですが、会社が加入していた保険会社を伝えると、すぐに折り返しの電話がかかってきて希望の日時でスムーズに予約することができました。
◆ドイツのプライベート保険は上手に利用するとすごくお得!
日本と同じように、問診票を書きながら、「歯石除去をお願いしたい」と伝えて、いよいよ診察開始です。通訳の女性は私のすぐ横で、先生の話をタイムリーに伝えてくれたので安心感がありました。そして、すぐに歯石除去をしてくれるのかと思いきや…
「あなたの保険は年間4,900ユーロまで使うことができます。奥歯の詰め物はセラミックに変えてしまいましょう。10年はもつ丈夫な素材ですから安心です。それと歯石除去のクリーニングしたあとにフッ素加工もしましょう。予防に効果的ですから」と、次々にいろんなメニューを提案されました。
なんでも、病院から直接保険会社へ請求するので、こちらで必要な作業も支払いもないのだそう。自己負担ゼロで、この日にすべての治療ができるというので、全部お願いすることにしました。
日本だと、スケジュールの都合をつけて何度も歯医者に通わなければならないですが、すべて1日でできるのは、ラクすぎる。麻酔の太い注射は怖かったけれど、奥歯の詰め物なんて、はずしたそばから、3Dでスキャンし、セラミックをコンピューターで削りだして、歯にはめ込むと、カチっとピッタリ。
歯石除去のクリーニングをしてもらって、ツルツルになった歯の表面にフッ素加工を施され、「4,900ユーロの治療はすごかったなー!」という、うれしい気持ちとともに「何か手違いがあって、あとから請求きたらどうしよう…」と、ビビりな私は帰り路に、複雑な気分に。
後日、保険会社からは無事に「4,888ユーロを歯科医に支払いました」という書類が届きました。日本円に換算するとドキっとするような金額ですが、これは使わない手はありませんね。
◆使い捨てコンタクトやカッピングのマッサージまで使えたプライベート保険
ほかにも私の加入していたプライベート保険は、ハイルプラクティカーの資格がある人から施術を受けるときなど幅広く活用できました。小顔にしたくて針治療してみたり、エステなどでおなじみのカッピングをしたり、ダイエット効果もあるという「耳針」も体験してみたり…。
コンタクトレンズの購入費用も一部保険で負担してくれて、大助かり。保険会社によっては、レーザーでシミやそばかすを消す美容診療にも適用されるケースがあるらしく、知人の駐在奥様たちもドイツの高度で多彩な医療技術をリーズナブルな価格で利用していました。これは海外旅行にはない、駐在生活ならではの魅力だと思います。
医療施設が直接保険会社に見積もりをして、請求する手続きまでやってくれるシステムも、患者の負担がなくていいですよね。確定申告のために領収書を保管しておく必要もありません。でも、逆に条件が悪い保険会社の場合は、予約を後回しにされたり、入院期間が短縮されてしまうこともあるそう。
歯の治療くらいならともかく、緊急な病気のときにはちょっと心配な側面も。なんだか“地獄の沙汰も金次第“といったシステマチックな経験でした。
<取材・文・烏丸莉也>
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