「つまらないものですが…」は失礼な表現?
手土産などをお渡しする際、定番フレーズとして「つまらないものですが…」が思い浮かぶ方は多いのではないでしょうか。
しかし、最近では、そこまでへりくだる必要はないと感じたり、つまらないものという表現から、取るに足らないつまらないものを贈るのは失礼だと感じる方もいるため、万能なフレーズではなくなっているようです。
◆そもそもどういう意味?
そもそも「つまらないものですが…」はどういう意味でしょうか?
「つまらないものですが…」という表現については、以前、五千円札に肖像画が描かれていた新渡戸稲造が、日本人の道徳観や思想を著した『武士道』という本の中で、自分なりに最大限に誠意をもって選んだ品物でも、立派なあなたの前ではつまらないものに見えてしまう、という尊敬の意を込めて使われると解説しています。
つまり、「つまらないものですが…」は「立派なあなたに比べたら、つまらないものですが」という意味であり、差し出す物を取るに足らないものとして言っているのではなく、相手に敬意を払い、立てる表現として使われていました。
前半部分が省略され、当初の意味合いから離れ、つまらないものという表現が一人歩きしてしまったと言えそうですね。また、立派なあなたに比べて… という表現が現代においては、少し大げさに感じられるのかもしれません。
◆ふさわしい表現は?
「つまらないものですが…」が誤った表現ではないことはわかりましたが、広く受け入れられるふさわしい表現はどのようなものがあるのでしょうか。
例えば、この程度のものでは私の感謝の気持ちを全て伝えきれませんが、といった意味の「心ばかりですが」や「ほんの気持ちですが」に言い換えられるほか、「和菓子がお好きと伺ったので」や「おいしいと評判でしたので」など、その手土産などを選んだ理由を添えるのも、先方を想う気持ちが表れて素敵ですね。
◆時代とともに変化する表現
背景を知ると「つまらないものですが…」も間違いではなく、奥ゆかしい表現に感じられますが、時代や相手との関係性によっても受け取り方も変わり、よりふさわしい表現も変わっていきます。
定番フレーズの意味を正しく踏まえた上で使ったり、先方との関係の中でよりしっくりとくるフレーズを選んだりと使いこなせたら素敵ですね。
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鶴田初芽
都内在住のOLライター。マナーインストラクターであり、実用マナー検定準一級や敬語力検定準一級など、ビジネスにおけるマナーや、マネーに関する資格(2級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融コンプライアンスオフィサー、マイナンバー保護オフィサー)などを保有。丁寧な暮らしに憧れ、断捨離修行中!