常識はぶっ壊してこそ!?
実在の人物による常識破りな行動に勇気をもらう!
仕事や人間関係、人生で行き詰まっていることがあったらどうするべき!? それには自分だけの小さな常識をとっぱらい、視野を広げること。今より大きくなりたかったら、小さな枠にとらわれていてはダメかも!?
1『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』
視聴率王者になったテレビ局の舞台裏
仕事や人間関係に行き詰まったとき、これまでの自分にない視点を取り入れると突破できることがある。常識を壊して新しい何かを生みだした人々の実話は、きっとヒントを与えてくれるはず。まず戸部田 誠の『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』。ライバルのフジテレビに大きく差をつけられていた日本テレビが、どのようにして年間視聴率トップを獲ったか。テレビを愛するライターが、丹念な調査をもとに現場の戦いを再現。
たとえば『24時間テレビ』。40年も続いているチャリティー番組だが、’91年には史上最低の6.6%まで視聴率が落ち込んだという。ピンチを切り抜けることができたのは、それまでの生真面目なイメージを覆して、視聴者を楽しませる明るい番組にリニューアルしたから。いくら募金を集めるという崇高な目的があっても、番組として魅力がなければそっぽを向かれてしまう。今やおなじみのマラソン企画は、面白さを追求した結果出てきたのだ。
面白い番組をつくって上がった視聴率を維持するための「フォーマット改革プロジェクト」も画期的だ。プロジェクトに抜擢された社員たちは、フジテレビと日本テレビの番組を2週間分録画し、全部見比べて、チャンネルを変えたいと思った部分をチェックする。徹底した観察によって問題を浮き彫りにするところは、どんな職業の人でも参考になるだろう。
また、さまざまなアイデアを〈全部やれ。〉と後押しした氏家元社長をはじめ、登場人物のキャラクターが濃くて引き込まれる。ぜひドラマ化してほしい。
『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』
著/戸部田 誠(てれびのスキマ) 文藝春秋
お笑い、格闘技、ドラマなどを愛する、テレビっ子ライターであり、日本テレビのバラエティが苦手という著者が、あえてその成功の秘訣を解き明かすことに挑んだノンフィクション。視聴者の目を釘づけにする人気番組の制作者と彼らを支える人々の熱い戦いをまとめた一冊。
2『自伝的女流文壇史』
男社会をサバイブした非常識で強い女たち
今は女性の人気作家もたくさん活躍しているけれど、昔の出版界は圧倒的な男社会だった。『自伝的女流文壇史』は、大正・昭和に少女小説で一世を風靡した吉屋信子が、交流のあった10人の〈女流作家〉の思い出を語ったエッセイ集だ。才能があるだけでは、女が世に出ることはできない時代。登場する作家たちの人生をたどっていくと、非常識であることを恐れない強さが印象に残る。
特に負けず嫌いで男を出し抜くこともいとわなかった林 芙美子や、文豪の愛人として侮られながらも芸術を論じ書くことを諦めなかった山田順子は忘れがたい存在だ。著者の吉屋信子は、雑誌投稿という正攻法でデビューし、読者の心をつかんだゆえに男にあまり頼らなくても売れっ子になれたという、当時としては稀有なタイプだった。嫉妬もされるが、同性へ向けるまなざしは思いやりに満ちている。
『自伝的女流文壇史』
著/吉屋信子 講談社
大正・昭和の人気少女小説家・吉屋信子が、同時代の「女流」と呼ばれた作家たちとの思い出をつづったエッセイ集。童女がそのまま大きくなったように無邪気だった岡本かの子、一見控えめだが内心には激しいものを秘めていた林 芙美子など、10人の肖像を描く。
2018年Oggi10月号「『女』を読む」より
撮影/よねくらりょう 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部
TOP画像/(c)Shutterstock.com
石井千湖
いしい・ちこ/書評家。大学卒業後、約8年間の書店勤務を経て、現在は新聞や雑誌で主に小説を紹介している。著書に『文豪たちの友情』(4月13日発売予定)、共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』がある(すべて立東舎)。