「抗精子抗体」ってなに? 妊娠にどんな影響をあたえるの?
現在妊活中の方のなかには、「抗精子抗体」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
精子を外敵とみなし、精子の動きを妨げてしまう抗体を抗精子抗体といいますが、これは不妊患者のうち男女ともに3%程度に検出される不妊原因なのです。
今回は抗精子抗体について、妊娠にどのような影響があるかみていきましょう。
◆抗精子抗体って?
からだに細菌やウイルスなどの外敵が侵入した際に、それらからからだを守ろうとする物質を「抗体」といいます。
「抗精子抗体」とは、精子を外敵とみなしてしまい、精子の動きを妨げてしまう抗体のことです。
抗精子抗体は男性・女性どちらにも存在する可能性があります。男性の場合、精巣・精巣上体などの炎症や外傷などによって精子が血液中に入ってしまうことで抗体ができる場合があります。
一方、女性の場合は、もともと精子が女性の身体に存在しないため、精子を異物とみなし、精子に対する抗体ができてしまう可能性があります。
男性の場合も、女性の場合も、抗精子抗体を持っていることで不妊の原因となる場合があります。男性が抗精子抗体を持っていた場合、抗精子抗体が精子の運動を妨げることによって、男性不妊の原因となってしまいます。
女性が抗精子抗体を持っていた場合には、子宮内に入ってきた精子の動きを止めてしまうため、妊娠が困難になってしまう場合があります。この場合は人工授精にステップアップしても妊娠しづらい状態となる場合もあります。
◆抗精子抗体ってどうやって見つかるの? 検査方法は?
抗精子抗体が不妊に影響を及ぼすことについてご紹介しましたが、ここでは「抗精子抗体がどのような過程で発見されるか」についてみていきましょう。
多くの場合、原因不明不妊や、フーナー検査(性交して12時間後の子宮頚管粘液内にある精子の状態を調べる検査)の結果が「不良」となった場合などに抗精子抗体の存在が疑われます。
また、スクリーニング検査(血液検査)の項目の中に抗精子抗体が含まれている場合には、その際に抗精子抗体の有無を知ることもできます。
◆抗精子抗体があったら、妊娠できないの?
抗精子抗体を持つ方の最大の疑問として、「抗精子抗体を持っていた場合、妊娠できないのか?」ということがあります。抗精子抗体を持っていた場合、治療をしない限り自然妊娠が難しいですが、絶対に妊娠できないというわけではありません。
抗精子抗体を持っている方の中でも、検査の結果、抗精子抗体の影響が強すぎず、運動精子が一定数存在する場合には,タイミング法や人工授精などによって妊娠を目指すことも選択肢として考えられます。
抗精子抗体を持っている方の中でも、検査の結果、影響が非常に強いと判断された場合には、体外受精に進んだほうがよいこともあります。その場合には担当医師と相談しながら治療方針を決めていきましょう。
「タイミング法を試しているけれども長期間妊娠しない」、という方や「子宮内膜症などの婦人病はないのになかなか妊娠しない」という方の中には、抗精子抗体が原因の場合もあるかもしれません。
気になった場合にはかかりつけの医師に相談し、検査を受けてみてはいかがでしょうか。
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医師 杉山力一
杉山産婦人科院長。不妊治療の名医。日本における生み分け法の権威・杉山四郎医師の孫。
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
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