【目次】
・【痔の症状】そもそも痔ってどんな病気?
・【痔の症状】痔のタイプは大きく分けて3つ
・【痔の症状】女性に多い痔核とは、どんなもの?
・【痔の症状】裂肛=切れ痔は、若い女性に多い痔
・【痔の症状】お尻に膿の通り道ができる痔瘻
【痔の症状】そもそも痔ってどんな病気?
男女関係なく誰もがかかる可能性がある病気
痔とは肛門と肛門周辺の病気の総称です。なんとなく、おじさんの病気というイメージを持たれることが多いですが、実際は私のクリニックの患者さんの7割が20~40代の女性であるように、男女関係なく誰もがかかる可能性がある病気です。

極端なことを言えば、「痔のない人はいない」というくらい誰しもなりうるのが痔ですが、出血や痛みなどの症状が出る出ないは人それぞれで、症状が出ないまま痔と気づかずに過ごしている人もいます。
【痔の症状】痔のタイプは大きく分けて3つ
痔には「痔核」(じかく)=いぼ痔、「裂肛」(れっこう)=切れ痔、「痔瘻」(じろう)の3つがあります。女性に多いのは痔核と裂肛で、痔瘻は男性に多いと言われています。
まずは肛門の構造を知っておこう
歯状線(しじょうせん):直腸(粘膜)と肛門(皮膚)の境目。歯状線を境に、粘膜部分は痛みを感じず、皮膚部分は痛みを感じる。
括約筋(かつやくきん):肛門を閉じる働きをする筋肉。
静脈叢(じょうみゃくそう):毛細血管が網目状に広がって弾力性に富み、クッションのような役割をしている。肛門をぴったりと閉じる働きをする。

【痔の症状】女性に多い痔核とは、どんなもの?
痔核=「いぼ痔」のこと
「痔核」(じかく)=いぼ痔、「裂肛」(れっこう)=切れ痔、「痔瘻」(じろう)の中で、もっとも多く、男女ともに起こりやすいのが痔核。痔の患者さんの半数を占めています。
痔核というのは専門用語で、一般的には「いぼ痔」と呼ばれています。いぼ痔は、肛門のクッションである静脈叢がうっ血して大きくなり、いぼのように膨らんだもの(痔核)で、その形からいぼ痔と言われています。
いぼ痔には直腸側の粘膜部分にできる「内痔核」と、肛門側の皮膚部分にできる「外痔核」があり、内痔核は痛みがなく、急性の外痔核は痛みを伴います。
内痔核の症状分類
歯状線の内側にできる内痔核は症状の程度によって、下記のように分類されます。
Ⅰ度:初期の段階。痔核の脱出(肛門から外に出ること)はない。痛みはなく、排便時に出血することが多い。
Ⅱ度:いぼが大きくなり、排便時に痔核が脱出するが、排便後に自然に戻る。
Ⅲ度:これまで排便後に自然に元に戻っていた痔核が、指で押し込まないと元に戻らなくなる。
Ⅳ度:指で押し込んでも元に戻らず、痔核がいつも脱出している「脱肛」の状態になる。粘液が染み出て、下着が汚れることも。

痛みを伴う急性の外痔核
歯状線の外側にできる外痔核は激しい痛みを伴うことが多くあります。
血栓性外痔核:肛門の出口付近に血栓(血の塊)ができたもの。肛門の急性の炎症が原因で、強い痛みがある。皮膚が破れて出血することも。
いぼ痔で大量に出血することもある
痔の中でも出血が多いのがいぼ痔です。肛門の中にできたいぼ(痔核)が大きくなると、排便時に便とこすれて出血するようになります。
いぼができた場所によっては、大量に出血することがあり、鮮血がぽたぽたと垂れたり、サーッとほとばしるように出血して便器内が真っ赤になることも。出血の量が多いと驚くかもしれませんが、排便が終われば出血は止まります。
たいていはトイレットペーパーで拭き取れば下着につくことはないと思いますが、すぐに止まらない場合は生理用ナプキンなどをしておくといいでしょう。

出血が少ないから、排便が終われば出血が止まるからと痔を放置しておくと、貧血になることも。排便のたびに出血するようなら、受診して治療することをおすすめします。
【痔の症状】裂肛=切れ痔は、若い女性に多い痔
3つの痔の中でもっとも若い女性に多いのが裂肛です。一般的に「切れ痔」と呼ばれるとおり、肛門が裂けたり切れたりすることでできる痔です。
硬い便をいきんで出そうとすることで肛門の出口が切れて、痛みを感じます。排便後にお尻を拭いたら、血がついていて気づいたという人も多いですね。

若い人ほど肛門括約筋の筋力が強く、肛門にハリがあるために裂けやすいため、切れ痔は若い人に多く見られると考えられています。出血は少なく、単に切れただけの急性裂肛であれば、ほとんどの場合は自然に治ります。
ですが、常に硬い便が出る人は、傷が治る間がないので慢性化しやすくなります。便が硬い人は便秘がちな人が多く、便秘を改善しないと切れ痔を繰り返すことになります。
切れ痔を繰り返すと手術が必要になることも
排便時に肛門が切れて痛む切れ痔。痛いのがイヤで、便意をもよおしてもトイレを我慢していると便秘が悪化してしまいます。すると、排便時に同じ場所がさらに強く裂けるという負のスパイラルに陥ってしまいます。
繰り返し裂けているうちに、傷はどんどん深くえぐれ、潰瘍化してしまいます。潰瘍化したところは便がたまりやすく炎症が起こり、潰瘍の上側には「肛門ポリープ」、下側には「見張りいぼ」と呼ばれる隆起物ができます。
ポリープといってもがん化することはありませんが、徐々に大きくなっていぼ痔のように肛門から脱出するようになり、根元が裂けると激痛が走ることも。
また、切れ痔が慢性化すると、傷が深くなって治りにくくなるだけでなく、痛みが強いので排便のたびに肛門括約筋が過度に緊張し、少しの刺激でも肛門を閉じようとします。その状態が続くと、肛門括約筋にも炎症が起きて、肛門が狭いままになる「肛門狭窄」に。この状態になると、排便に支障をきたすため、肛門を広げる手術が必要になります。

【痔の症状】お尻に膿の通り道ができる痔瘻
直腸と肛門の境目の歯状線には、肛門小窩(こうもんしょうか)という小さなくぼみがあります。このくぼみに下痢などで水のような便が入り込んで細菌に感染すると、肛門腺に炎症を起こします。
炎症が肛門の周りに広がり、膿瘍(のうよう/膿のたまり)ができるのが「肛門周囲膿瘍」で、痔瘻の前段階の病気です。膿が出口を探して通り道を延ばしていき、お尻を貫通して外に流れ出て、その通り道(ろう管)が残った状態となるのが痔瘻です。
激しい痛みや発熱があったら要注意!
お尻が腫れてズキズキとした痛みがある、座るだけで痛む、38~39度の熱が出るといった症状がある場合は、肛門周囲膿瘍の可能性が。痔瘻になる前の段階であれば、腫れている部分を切って膿を出すことで治療が可能です。ろう管が残って痔瘻になってしまった場合は、手術が必要になります。

初出:しごとなでしこ

教えてくださったのは…山口トキコ先生
東京女子医科大学卒業、同大大学院修了後、研修医、勤務医を経て、2000年にマリーゴールドクリニックを開業し、院長を務める。日本大腸肛門病学会専門医・指導医。日本臨床肛門病学会技能認定医。著書に『女医が教えるおしりの本』(TBSサービス)などがある。