一帯を包み込む幻想的な異空間を渡し船で
今回紹介する「霧幻峡(むげんきょう)」は、福島県の金山町と三島町にまたがる只見川の峡谷です。金山町側にはかつて三更(みふけ)という集落があり、対岸に渡る唯一の交通手段が櫓漕ぎ(ろこぎ)の渡し船だったそう。集落の裏山で大規模な土砂崩落が発生したことで廃村になり、渡し船も役割を終えていましたが、平成22年の春に復活。毎年4月下旬から11月下旬まで運航しています。
霧幻峡には、運気を上げ、願い事を叶えると言い伝えられるパワースポットがいくつも存在します。なぜ、このあたり一帯がパワースポットと呼ばれるようになったのでしょうか?
ここに鎮座する神社や観音堂は、三更(みふけ)集落誕生と同時に建設されたもので約300年もの時を刻んでいます。このふたつの神々が宿る神社と観音堂は、数々の厄災から逃れ、地域の人命を守ったとされていることから、この地域一帯には霊力があり、訪れる人々の運気を上げ、願いを叶えてくれると伝えられているのだそうです。
まずは、この時期ならではの絶景からどうぞ。
朝夕の寒暖差が大きい峡谷は、只見川の中でも特に霧の発生しやすい場所。あたりが川霧に包まれる絶景は、地元民でさえも息をのむほど、幻想的な空気に包まれます。
対岸に着くと、そこから先は別世界
霧幻峡の守り本尊として村を守り続けてきた一体のお地蔵様。昭和39年の土砂崩落の際も、崩れた土砂がお地蔵様の前で止まり、住民の命を救ってくれたそうで、今では地域の守り神として鎮座し、霧幻峡のシンボル的スポットとなっています。
大山祇神社の周辺をぐるりと囲む巨木にまず圧巻。こちらの神社も霧幻地蔵と同じく、土砂崩落のあとも被災しなかったことから、地域の守り神として絶大な信仰を集めています。
そのほか、子宝や安産と子どもの健やかな成長を願う人たちが訪れる霧幻子安地蔵に、滾滾(こんこん)清水は、山上湖でカルデラ湖である沼沢湖の浸透水が、深い地下に濾過されて突然に湧きでているもの。流れ清水ではないこの聖水は、天下の名水として古来より地域住民を潤してきました。雨沼集落から霧幻峡に向かう町道添えに湧き出ています。ペットボトルを持参すれば誰でも無料で汲むことができることもあり、近年ではその聖水を求める人々が急増しているそう。
霧幻峡の渡し
期間:4月下旬~11月下旬
料金:5名まで往復¥5,000、6名からは1名¥1,000(定員14名)
※5日前までに予約を
お問い合わせ・予約:霧幻峡プロジェクト(星賢孝/☎︎080-1168-3959)
日常の喧噪を離れ、ゆるやかなときが流れる福島県会津の聖地。思わずSNSにアップしたくなるフォトジェニックなパワースポットで、忘れられない夏の想い出をつくってみてはいかがですか?
撮影/奥会津郷土写真家・星賢孝 取材・文/HIROMI HOSAKA
初出:しごとなでしこ