「いい人がいない」が口グセになっているあなたへ
最初に言っておきますと、僕は「結婚はしたい人はすれば良いし、したくない人はしなくて良い。いろんな形や関係があるから、周りが無理に押しつけずに、自分にあった好きな形を選べば良い」と思っています。
でも、結婚が全て、結婚こそ幸せと感じているのでしたら、「できれば若いうちに相手を見つけておけばいい」という理由にひとつ気が付いたので、ここで「年長のバーテンダーのたわごと」とは思いますが、ちょっと聞いてみてください。
さて、僕は毎日のようにカウンターでいろんな方の「最近出会った異性の批評」みたいなものを聞きます。たとえばこんな感じです。
「林さん、この間、紹介で会った人がやっぱりマザコンっぽいんです。会話の途中で『僕の母が』っていうのが何度も出てくるんです。そういうのやっぱり気持ち悪いですよね」
「なんか服が変なんです。そういうの普通着るか?っていう。やっぱり周りの空気にあわせられるかとか、自分がどういう風に見られているかっていう感覚って大切だと思うんです」
「もうずっと自分の話ばっかりするんです。こっちはもうずっと相づちばかりで。でも、そういう自分話を聞いてくれる女性がモテるって言うじゃないですか。でも、もしかして他の人に興味がないんだろうなって気がついて。その人、自分にしか興味がないんです」
個人が特定されないように適当に作ってみましたが、本当にこういう感じの「あら探し」と言いますか「相手の批判」というのが延々と続くんです。
で、「どこかに良い人いないですか?」で終わるんです。実は僕もその話を聞いているときは「なるほど。なるほど。そういう男性ってちょっと違いますね」なんて話を合わせてしまうのですが、よくよく考えるとその方にぴったりの相手ってもうどこにもいないんです。
その方たちはもう確実に「目の前の相手のどこかダメな箇所」を見つけてしまうんです。
で、「まあまあ。全てが最高なんて人間いないですよ。どこかで妥協しないと」なんて僕が言い出すものなら、「林さん、だって結婚ってこのまま死ぬまでずっと一緒にいるんですよ。やっぱり妥協できないですよ。もうこの人じゃなきゃって人と結婚したいんです」って言われるんです。
ところで、あなたは高校生や大学生の時、すごくすごく誰かを好きになったことってありますか?
それってどんな人でしたか? クラスや部活で同じだったり、バイト先やサークルで一緒だったり、まあ近くにいて、なんとなく気になって、向こうから声をかけてくれたり、みんなで遊びに行ったりとか色々あって、理由もなく好きになりましたよね。
その人に対して「食べ方がイヤ」とか「支払い方が」とか思わなかったですよね。そういう諸々のことは全く考えずに「ただただ目の前のその人のことをまっすぐに好きになった」はずですよね。
そうなんです。若いころって、世の中のことをあまり知らないから、その相手の「いろんなダメな箇所」が目に入ってこないんです。20歳のころ、すごく美味しいと思っていたイタリアンに、40歳になってから行ったら、「あれ? そうでもないなあ」って気づくことってありますよね。若いころって、いろんなことを知らないから「誤解したままで幸せになれる」んです。
そして年齢を重ねるといろんなことを知ってしまって、相手のイヤなところが目に付いてしまって、ただただ理由もなく目の前の人を好きになるっていうことができなくなるんです。
恋愛ってご存知のように「勘違い」です。で、いかにうまく勘違いして、相手のことを深く好きになるかがポイントなのですが、年齢を重ねるといろんなことを知ってしまって勘違いできなくなるんです。
これ、かなり重大な問題ですよね。結婚したいのに年を重ねるごとに結婚できなくなるわけですから。だから、結婚をしたいのなら、人は若いうちに結婚相手を選んだ方が良いんです。
BAR BOSSA 林 伸次
1969年徳島県生まれ。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷にワンイバー「BAR BOSSA」をオープンする。カウンターの向こう側から、そこに集う人の人間模様を見守り続け、エッセイストとしても活躍。2018年7月には待望の初の恋愛小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)を発表。スタンダードナンバーの音楽とお酒のエピソードとともに綴られるのは、切なさの溢れるラブストーリー。学生から大人世代まで、自身の恋の記憶を呼び起こす珠玉の一冊。Amazonのページはコチラ